表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新大陸建国記 〜未開のアパラチア山脈から始まる世界蹂躙〜  作者: tky
第4章:天然のハイウェイと近代住居の誕生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/83

第50話:夜の宴と、惹かれ合う男女

建国2年、秋の夜。


帝都の中央広場には、幾つもの巨大な焚き火が焚かれていた。


パチパチと爆ぜる炎の周りで、800人を超える先住民たちが、これまでにない異様な熱気と興奮に包まれていた。


「Uri! Mujiwi, Mene!」(ウリ! ムジウィ、メネ!:凄い! 皆、飲め!)


「Koko, Sukote! Uri!」(ココ、スコテ! ウリ!:ここ、火! 良い!)


若者たちが陶器のカップを掲げ、顔を真っ赤にして叫んでいる。


鬼頭と冴島が造り上げた、アルコール度数60パーセント超の密造酒ムーンシャイン


初めて「純度の高いアルコール」を摂取した彼らの脳髄は、過酷な肉体労働の疲労から完全に解放され、強烈な多幸感と弛緩状態にあった。


打楽器のリズムが鳴り響き、男も女も入り乱れて踊り狂う。

部族間の言葉の違いや、これまでのわだかまりなど、暴力的な『酔い』の前では完全に溶けて消え去っていた。


「アカンな、こりゃ。完全にラリっとるわ」


広場の端で、真野巧が自ら削り出した木のジョッキを傾けながら、呆れたように笑った。


「まあええか。俺らも、ずっと張り詰めっぱなしやったからな」


真野はそう呟き、強烈な酒を喉の奥へ流し込んだ。


***


一方、広場の中心近くにある一番大きな焚き火のそば。


インフラ開発の要である郷田剛は、かつてない『包囲網』の中にいた。


「Goda! Mitusi, Uri!」(ゴウダ! ミツシ、ウリ!:郷田! ご飯、美味しい!)


宴の仕切り役であり、誰よりも社交的な女性・ルルが、こんがりと焼けた鹿肉の塊を郷田の口元へと運んでくる。


「お、おう……サンキューな、ルル。もぐもぐ……美味え!」


郷田が鹿肉を頬張ると、今度は背中を『バシィッ!』と力強く叩かれた。


「Goda, Mene!」(ゴウダ、メネ!:郷田、飲め!)


振り返ると、豪快な笑い声を上げる大柄な女性・ティオが、なみなみと酒が注がれたカップを差し出していた。

彼女の明るさと度胸は、他の女性たちからも慕われる「肝っ玉母さん」のような存在だ。


「っはは! 痛えなティオ! よし、飲もうぜ!」


郷田が酒をあおると、今度はそっと袖を引かれた。


「Goda... Mubi...」(ゴウダ… ムビ…:郷田… 水…)


見れば、控えめで心優しいヘマが、強すぎる酒を和らげるための「水」を入れた水筒を差し出している。

彼女はいつも、無理をして前線で指揮を執る郷田の体調を気遣ってくれていた。


「Niya, Goda, Aroka, Uri.」(ニヤ、ゴウダ、アロカ、ウリ。:私、郷田の、仕事、好き。)


さらに、いつも笑顔の絶えない働き者のソラが、郷田の腕にギュッと抱き着いてきた。


『……おいおいおい。なんだこれ。俺の人生で、こんなモテ期が来るなんて聞いてねえぞ……!』


郷田は顔を真っ赤にしながら、頭を抱えた。


彼が成し遂げた、水路の開通、コンクリートの要塞、暖かく頑丈な家屋。

地形すら書き換えるその圧倒的な「土木の力」は、自然環境の脅威に晒され続けてきた先住民の女性たちにとって、最も分かりやすい『絶対的な豊かさと安全の象徴』だったのだ。


郷田はボロボロになった単語帳を取り出し、必死に言葉を探した。


「ええと……お前ら、ありがとう、は……」


「Niya, Kira, Mujiwi Uri!」(ニヤ、キラ、ムジウィ ウリ!:私、あなた、全部 好き!)


ルルが単語帳をパタンと閉じさせ、満面の笑みで郷田の頬にキスをした。

それを合図にしたように、ティオ、ヘマ、ソラ、そして断熱材を提案したミナや、クレーン操作の天才カシャまでもが、郷田の周りに集まり、楽しそうに笑い合った。


***


その光景を少し離れた場所から見ていた東航平が、深くため息をついた。


「郷田の野郎、完全にハーレムじゃねえか。まあ、あいつが一番体張ってインフラ作ってるからな」


そうぼやく東の背中を、ふわりと柔らかい手が揉みほぐしていた。


「Azuma, Uri?」(アズマ、ウリ?:東、良い?)


マッサージが得意な癒やし系の女性・セラが、東の肩の凝りを丁寧に解している。


「あー……そこそこ。最高だわ……」


東がだらしなく目を細めていると、料理の天才であるリナが、綺麗に盛り付けられた果実と燻製肉を持ってきた。


さらに、生活全般を完璧にマネジメントする包容力のある女性・マヤが、東の乱れた服の襟を優しく直す。


『……最高だ。俺がキーボード以外触らないで済む世界が、ついに完成しつつある』


東は、彼女たちに完全に養われているような心地よさに、静かに目を閉じた。


***


医療テントの近くでは、冴島陸が神経質そうに白衣のポケットに手を入れていた。


「Saejima, Mene.」(サエジマ、メネ。:冴島、飲め。)


ベテラン看護師長のシラが、落ち着いた微笑みとともに、薄めた果実酒を差し出す。


その背後では、薬草知識に長けたルミと、若く明るいミファが、冴島の指示した衛生管理のメモを熱心に復唱していた。


『……まったく。少し薬学を教えただけで、神様のように崇められるのは困るな』


冴島は内心で毒づきながらも、シラから受け取った酒を口に運んだ。

彼ら医療チームは、血の滲むような死闘を共に乗り越えた『戦友』としての強い絆で結ばれていた。


一方の鬼頭陣は、広場のど真ん中で、部族一の女戦士であるカーラや、弓の達人ナミたちと、車座になって豪快な飲み比べを行っていた。


「ガハハ! お前ら、女にしておくには惜しいくらい良いガッツしてやがる!」


「Kito! Mujiwi, Mene!」(キトウ! ムジウィ、メネ!:鬼頭! 全部、飲め!)


鬼頭の危険な匂いと圧倒的な強さに惹かれた『強い女たち』が、彼を囲んで大笑いしている。

火薬の管理を担う真面目なゼナが、火の粉が飛ばないようにハラハラしながら彼らを見守っていた。


***


高台の本部棟から、その狂熱の宴を見下ろしていた九条蓮が、冷徹な瞳を細めた。


「完璧な『化学反応』だな。アルコールという潤滑油が、我々と彼らの間にある見えない壁を完全に破壊した」


九条の背後に立つアナヒータが、静かに同意する。


「はい、蓮様。今夜を境に、各部族の女性たちから、郷田様たちへの正式な『婚姻の申し出』が相次ぐことになるでしょう。これは単なる男女の情ではありません。絶対的な庇護者との『血の同盟』を求める、彼女たちの生存戦略でもあります」


アナヒータの流暢な日本語による分析に、九条は小さく頷いた。


「それでいい。むしろ、望むところだ。俺たち6人の遺伝子と知識を受け継ぐ『第二世代』が生まれれば、それはこの帝国にとって最強のシステム(強固な基盤)となる」


九条は、眼下で笑い合う郷田たちと女性たちを見つめた。


「恐らく、俺たちは遠い未来から来た、異邦人のバグだった。だが今夜から……俺たちは本当の意味で、この大地に根を張る」


冷徹なプロデューサーの目から、わずかに『一人の男』としての温かな光が漏れた。


こうして、狂熱の宴をきっかけに建国メンバーと先住民の女性たちが結ばれ、巨大な家族の歴史が幕を開けたのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ