00.黒の竜と金の少年
昔々、あるところに真っ黒の鱗と青い瞳をもつ幼いドラゴンと、金色の髪と赤い瞳をもつ少年がいた。
彼らは仲が良かった。少年が朝目を覚ますと、窓の外にドラゴンの姿があって。少年が朝ごはんを食べ終えると、家の外に出て彼に挨拶する。そして、二人で一緒に街を回ったり、暖かい風が吹く丘で遊んだり。森を探索することもあった。昼になると一緒に昼食をとって、少年が家に帰らなくてはいけない時間まで、二人はずっと一緒にいた。周りの大人たちが彼らを相棒と呼ぶようになるまでに時間は掛からなかった。
突然、彼らの関係は大きく崩れた。
少年は、高貴な身であった。決して村息子や市井の子ではなかった。
ドラゴンが違法の狩猟団に襲われた時、少年はまだ幼いドラゴンを身を挺して守った。ドラゴン用に毒を塗られた槍を刺され、何度も腹を蹴られ、腕を叩かれても、抱きかかえたその小さなドラゴンを手放すことはなかった。
幼いドラゴンは、少年がいいようにされ、自分を守る姿に耐えきれなかった。決して人が乗ることのできない大きさの背中に、家を壊すことのできそうな大きさの羽が広げられた。少年を守るために、幼いドラゴンは成長させたのだ。
少年を一番に発見した人間は、後にこう語った。
『ドラゴンが連れてきたんだ。真っ黒で大きな羽が空を覆って、突然、何が起きたのかと目を疑ったよ。ドラゴンの口に挟まれた少年が、まさかまだ生きているなんて。それにしてもひどい状態だった。いつも街を歩き回る姿を遠目に見ていたからね。あの時は本当に、心臓がとまるかと思った。きっと、彼が少年を助けたんだよ。あの子たちは本当に、お互いを大切にしていたからね。これはきっと、この国の大きな伝説になる。』
少年は、死こそ免れたが、家の中で数週間寝たきりになるほどには容体が悪かった。
少年の両親は、決して少年の部屋にその幼いドラゴンを入れることはなかった。
それからドラゴンは彼の前に現れることはなかった。
少年は酷く悲しんだ。
いつも二人で歩く街を、一人で歩いた。二人で座る丘に、一人で座った。いつか行った森に、彼がいないか探した。何年も何年も。少年が大きな学校に通うことになり、この街を離れるようになるまで。懲りずに探した。
それでも、少年が愛した黒のドラゴンを見つけることはできなかった。
ただ、あの日以降、少年が外に遊びに出る日は決まって晴れだったという。




