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選抜区域  作者: 谷花皐
第四章 チェックメイト

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第三十話 休息

逆さの都市がゆっくりと動きを止めていく。

回転していた建物。歪んでいた道路。浮いていた橋。


すべてが静かに停止する。


久我がその場に座り込んだ。

「……はぁ。」


朝比奈が息を吐く。

「マジで死ぬかと思った。」


澪が言う。

「ほんとだよ……。」


凛はモニターを見ていた。


【第三層】


【終了】


その表示を確認すると、ゆっくり息を吐く。

「終わった。」


真白は少し離れた場所を見ていた。


そこにはもう誰もいない。白嶺の男子生徒が倒れた場所。


真白が小さく呟く。

「……ごめん。」


九条が言う。

「行きましょう。」


その時、床が光る。


蒼天と白嶺の生徒たちの足元に光の円が広がる。


次の瞬間視界が白く染まった。そして気がつくとそこは休息区域だった。


広い空間壁一面に映し出された海。最初にここへ来た時と同じ場所。


澪が周りを見る。

「……戻ってきた。」


久我が腕を回す。

「助かった〜」


朝比奈が笑う。

「まだ助かってねぇだろ。」


その時、ロビーの奥から足音が聞こえる。

「皆様」

全員が振り向くとそこにいたのはホテルの支配人高梨水木。


いつもと同じ穏やかな笑顔。

「第三層お疲れ様でした。」


軽く頭を下げる。

「残念ながら脱落者は出てしまいましたが。」

少しだけ間を置く。

「それでも皆様は生き残りました。」


久我が小さく言う。

「なんか軽いな。」


水木は続ける。

「本日はもうゲームは行いません。」


蒼天の生徒たちが顔を上げる。

「次のゲームは明日の朝。本日はゆっくりお休みください。」


澪が言う。

「……やっと寝れる。」


水木が頷く。

「そしてもう一つ。」


白嶺の生徒たちを見る。

「白嶺高校の皆様、あなた方は今回のゲームで目立った結果を残せませんでしたね。そのため、あなた方の処遇を再検討することとなりました。」


白嶺の生徒たちがざわつく。


水木が微笑む。

「なので今夜も蒼天高校の皆様と同じホテルをご利用ください。」


ホテルの廊下、蒼天と白嶺の生徒たちはそれぞれ部屋へ向かっていた。


ホテルの女子部屋。

部屋には澪、凛、玲那

そして真白の四人がいた。


澪がベッドに飛び込む。

「はぁーーー!」


ベッドの上で大の字になる。

「やっと休める……。」


凛が椅子に座りながら言う。

「騒がしいわね。」


玲那が少し笑う。

「でも正直同じ気持ち。」


三人の空気は少し軽い。その中で真白だけはあまり喜んでいない。

「……。」


澪が気づく。

「真白!」

「立ってないで座りなよ!」


真白が少し戸惑う。

「でも……。」


澪が不思議そうな顔をする。

「ん?」


真白が小さく言う。

「私……」


少し言葉が詰まる。

「蒼天じゃないのに。本当にここにいていいのかな?」


部屋が少し静かになる。


昼間の水木の言葉。

『あなた方の処遇を再検討することとなりました。』


白嶺の生徒たちは何も言わなかった。


誰も反論しなかった。


それは自分たちが結果を残せなかったと分かっていたから。


だからこそ真白は余計に気まずかった。


真白が俯く。

「本当は…白嶺のみんなと一緒にいた方がいいんじゃないかって。」

小さく言う。

「思ってて……」


澪がベッドから起き上がると真白の前まで歩いてくる。

「真白」

真白が顔を上げる。


澪が笑う。

「それ、私たちに言うこと?」


真白

「え?」


凛が言う。

「あなたが第三層で端末を見つけた。」


玲那も頷く。

「それに真白がいなかったら、久我くんも助からなかったかもしれないし。」


真白が驚く。

「でも……」


澪が言う。

「でもじゃない!」

真白の肩を軽く叩く。

「もう仲間だよ。」


真白の目が少し揺れる。

「……仲間」


凛が静かに言う。

「今日一緒に戦った。それだけで十分よ。」

真白が少しだけ笑う。

「……うん。」


澪が伸びをする。

「よし!今日はもう寝よ!」


凛が呆れたように呟く。

「あなたは単純なのね。」


澪が元気に答える。

「いいじゃん!ポジティブって言ってほしいな。」

少し笑いが起こる。


だがその夜真白はなかなか眠れなかった。


白嶺はどうなるのか。自分はどうなるのか。

答えは明日の朝へと


男子部屋

久我がベッドに倒れ込む。

「もう無理だ。」


朝比奈が笑う。

「さっきまであんなに元気だったのに。」


玲央は窓の外を見ていた。ホログラムの海。


波が静かに揺れている。


久我が言う。

「なあ玲央」

玲央が振り向く。


久我は天井を見たまま言う。

「俺さ、勝ちてぇ。」


玲央

「知ってる。」


久我

「颯真が言ってたろ。」


拳を握る。

「信じてるって。だったら負けるわけにはいかねぇよな。」

玲央は静かに頷き机に紙を置く。


第三層の動きを簡単に書き出していく。


朝比奈が聞く。

「何してんだ?」


玲央

「今回のゲームの整理だよ。」


久我

「ゲームって、なんの整理をすんだ?」


玲央はペンを止める。

「御影について。」


久我

「……あ?そんな事してなんになるんだ?」


玲央

「第三層のゲームは多分御影が作ったものだ。」


朝比奈は冷静に聞く。

「それがどうした。」


玲央が紙を見る。

「ゲームには作った人間の癖が出ると思うんだ。」

「それで今回の事から御影は人の行動を見るゲームを作るって事がわかるだろ?」


久我

「……つまり?」


玲央

「もし次も御影が担当の場合次も似た傾向になる可能性が高い。」


朝比奈が笑う。

「なるほどな。また面倒なゲームか。」


玲央

「多分な。」


久我が天井を見る。

「はぁ」

そして小さく言う。

「だったら、余計に負けられねぇな。」 


別の男子部屋では

立花がベッドに腰を下ろす。

「……疲れた。」

靴を脱ぎながら大きく息を吐く。


桐谷が呟く。

「第三層やばかったな。」

少し肩を回す。

「体バキバキなんだけど。」


その時ドアが開く。扉から湊が入ってきた。


立花が顔を上げる。

「……湊」


桐谷も見る。

「そういえばさお前どこいたんだよ。」


「どこって?」


立花

「第三層だよ。途中から全然見なかったぞ。」


桐谷も頷く。

「確かに最後も見てない。どこにいたんだ?」


湊はベッドに座り少し考える。

「……みんなと合流できなかったら歩いてただけ。」


立花が呆れる。

「歩いてただけで生き残れるか普通。」


湊が肩をすくめる。

「運が良かったんだだろ。」


桐谷はその回答に少し疑問をもつ。

「運ねぇ。」


立花が天井を見ながら喋る。

「まぁ、生きてるならそれでいい。」


桐谷も言う。

「それもそうだな。」

小さく言う。

「……颯真もさこの場にいたら多分そう言う。」


部屋が少し静かになる。


湊が窓の外を見る。ホログラムの海。


波がゆっくり揺れている。


湊が小さく呟く。

「……くだらない」


立花が聞く。

「くだらないって何が?」


湊は少しだけ視線を動かす。

「このゲームの事だよ。」


桐谷

「まあな。でも命かかってるしな。」


「そういう意味じゃない。」


二人は少し不思議そうに湊を見る。


だが湊はそれ以上何も言わずただ海を見ていた。


まるでこのゲームを外側から見ているような目で。


その頃ホテルの別の階。


一人の男子が同じように窓の外を見ていた。


黒髪。落ち着いた表情。


その後ろに二人の生徒が立っている。

「神崎。」


一人が言う。

「明日、蒼天ってとこと当たるらしい。」


男子が小さく頷く。

「そうですか。」

静かな声。

「面白そうですね。」


翌朝ロビーに全員が集められていた。


水木が中央に立つ。

「おはようございます。」


穏やかな声。

「それでは本日のゲームの案内をいたします。」


その前に、水木が白嶺の生徒たちを見る。

「その前に昨夜お伝えした白嶺高校の処遇について発表いたします。」


白嶺の生徒たちが少し緊張した表情になる。


水木が続ける。

「今回の第二層、第三層の結果を総合的に判断した結果。」


少し間を置く。

「白嶺高校は残念ながらチームとして十分な成果を残すことができませんでした。」


白嶺の生徒たちはそれに対し何も言わない。


それは自分たちでも理解していたから。


水木が続ける。

「そのため。白嶺高校は本日以降、チームとしての参加資格を停止します。」


小さくざわめきが起こるも誰も反論しない。


水木が続ける。

「ただし、個人として結果を残した参加者については例外とします。」


そして視線が向けられる。

「白嶺高校、真白さん。」


真白が少し驚く。

「あなたは第三層で探索成功および協力行動による貢献を確認しました。」


「そのため。あなたは本日より蒼天高校へ合流していただきます。」


蒼天側が少し驚く。


澪が小さく言う。

「え。」


久我も言う。

「マジか。」


真白は言葉が出ない。


水木が続ける。

「残りの白嶺高校の生徒は。本ゲームの観察対象として待機していただきます。」


つまりゲームには参加しない。


白嶺の生徒たちは顔を見合わせる。


だが誰も反論しない。


なぜなら自分たちが結果を出せなかったと理解しているから。


真白がゆっくり頭を下げる。

「……よろしくお願いします。」


澪が笑う。

「今さらそんなあいさついらないよ。」


久我が言う。

「昨日から仲間みたいなもんだったろ。」


玲央は静かに言う。

「それじゃあ行こう。」


水木が言う。

「それでは」


床がゆっくりと開く。地下へ続く巨大な通路。


「第四層へご案内いたします。」


蒼天の生徒たちが歩き出す。白嶺の生徒たちも続く。


通路を進みそして辿り着いた場所。


そこには巨大な盤面が広がっていた。


白と黒。巨大なマス。


一つ一つが人の体ほどある。


久我が呟く。

「……なんだこれ。」


その時モニターが点灯する。


御影の声。

『第四層へようこそ。本ゲームは対戦形式です。』


モニターが切り替わる。


【蒼天高校】


【東雲高校】


久我が言う。

「東雲?どこだ?」


その時盤面の反対側の扉が開く。


数人の生徒が入ってくる。


その中心にいる男子が言う。

「初めまして。」


落ち着いた声。

「東雲高校。」


少しだけ微笑む。

「神崎慧斗です。」


御影の声。

『第四層』


『LIVE CHESS』

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