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選抜区域  作者: 谷花皐
第三章 人の価値

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第二十九話 終了

【審査まで 8分】


都市のあちこちでは探索が続いていた。



西エリア。久我が崩れた建物の中を進んでいた。


「……また行き止まりか。」


壁を叩く。コン。


反応なしかと思われたその瞬間。


建物全体がゆっくり回転する。


「……は?」


床が傾く。重力が反転する。


「うおっ!?」


壁だった場所が床になる。そして通路が新しい方向へ伸びる。


久我が舌打ちする。

「またこのギミックかよ。」


建物そのものが動き、通路が変わる。


つまり探索ルートも変化する。久我が新しくできた通路を進んでいるその時だった。


遠くから声が聞こえる。

「……これは」


真白の声。

久我が顔を上げる。


中央南エリア。真白が一歩踏み出す。


ガコン。床が沈む。


「……え?」

床が崩れた。


真白の体が前に傾く。


落ちれば死ぬ。


「っ——!」

落ちる。


「危ねぇ!!」

久我がそこに飛び込んだ。


真白の腕を掴む。真白の体が宙にぶら下がる。


真白が震える。

「ご、ごめん……!」


久我が歯を食いしばる。

「今は謝ってる場合じゃねぇ!」


引き上げようとした瞬間久我の足元のパネルが光る。


凛が叫ぶ。

「久我そこトラップ!」


パネルが作動すると腕輪が激しく光る。


久我のポイントが減る。

【久我 54 → 15】


久我が顔をしかめる。

「……は?」


真白が引き上げられる。


真白の目が久我の腕輪に向く。

【久我 15】


真白の声が震える。

「……私のせいで。」


久我が立ち上がる。

「違ぇよ。」

真白が顔を上げる。


久我が笑う。

「仲間を助けただけだろ。」


少し肩を回す。

「それに颯真なら同じことしてた。」



その瞬間モニターが更新される。


【現在最下位】


【久我 15】


白嶺側。


男子生徒がモニターを見る。

【現在最下位】


【久我 15】


男子生徒が安堵の息を吐く。


腕輪を見る。

【18】


「……助かった。」


中央エリア。九条が腕輪を操作する。


「私がポイントを」


液晶に表示。

【ERROR】


凛が画面を読む。

【最下位の参加者にはポイント譲渡できません】


久我が笑う。

「やっぱり無理か。」


その時都市全体にアナウンスが流れる。


御影の声。

『補足説明をしましょう。』


モニターに文字が浮かぶ。

【行動評価システム】


【探索】


【危険行動】


【共有行動】


『第三層ではこれらがポイントに影響します』


『そしてもう一つ』


モニターが変わる。


【価値減衰】

『ここから一定時間ごとにポイントは減少します。』


『しかし探索行動を行っている参加者は減衰を受けません』


都市がざわつく。


凛が言う。

「動かないとポイントが減ってしまう。」


玲央が続ける。

「つまり今から探索しないと死ぬゲームになるって事だ。」


遠くの建物が回転する。通路が動く。都市そのものが再構築されていく。


澪が呟く。

「街が動いてる……」


凛が言う。

「迷路じゃない。」


玲央が静かに言う。

「動く迷路だ。」


【湊 124 → 127】


湊が小さく呟く。

「……また増えた。」


端末にも触れていない。誰とも接触していない。

それでもポイントは増える。


湊が監視カメラを見る。

「くだらない。」


都市中央。

玲央が言う。

「時間はあと六分。」


久我を見る。

「久我。」


久我が笑う。

「分かってる。」


拳を握る。

「俺のポイントを上げるしかねぇって言いてぇんだろ。」

今の最下位は久我。

【審査まで 3分】


都市の空気は完全に変わっていた。

探索はもう“協力”ではない。これは競争だ。


白嶺側では男子生徒が必死に走っていた。


腕輪を見る。

【16】


呼吸が荒い。

「くそ……!」


建物の壁を叩く。

コン。


反応なし。


「どこだ、どこに……!」


焦りが強くなる。


中央エリア。蒼天側。


凛が腕輪を見る。

「減衰は一定周期。」


朝比奈が聞く。

「つまり?」


凛が答える。

「もう一回来る。」


久我が舌打ちする。

「それは最悪だな。」


腕輪を見る。

【20】


玲央が都市を見る。

「探索を続行。」

短い言葉。


その時遠くで建物が回転する。


新しい通路が現れる。


澪が指を指す。

「玲央、あそこ!」


通路の奥で壁が光っている。


久我が走る。


「行くぞ!」


白嶺の男子生徒もそれを見つける。

「待て!」


二人が同時に走る。距離はほぼ同じ。


その瞬間腕輪が光る。


【久我 20 → 18】


【白嶺男子 16 → 14】


凛が言う。

「また減った。」


九条が呟く。

「時間がない。」


端末は目の前。


白嶺男子が飛び込む。

「これで——!」


手を伸ばす。


その瞬間久我が体当たりする。


「すまない、、」


端末を押す。腕輪が光る。

【久我 18 → 23】


久我が息を吐く。

「……あぶねぇ。」


白嶺男子が膝をつく。

「くそ……。」


腕輪を見る。

【14】


モニターが更新される。

【現在最下位】


【白嶺高校 男子生徒】


【14】


白嶺側がざわつく。


男子生徒が呟く。

「もう終わる……。」


蒼天側。


澪が笑う。

「久我が助かった!」


朝比奈が腕を組む。

「まだだ。」


凛がモニターを見る。

【審査まで 2分】


その時再び減衰。


腕輪が光る。

【久我 23 → 21】


【白嶺男子 14 → 12】


しかしその瞬間。


白嶺の生徒がスイッチを踏む。


床が光る。


【白嶺男子 12 → 21】


蒼天が息を呑む。


久我の腕輪を見る。

【21】


凛が呟く。

「……同点。」


モニターが更新される。

【現在最下位】


【久我 21】


【白嶺高校 男子生徒 21】


久我が笑う。

「マジかよ。」


凛が冷静に言う。

「二人とも最下位。」


審査まで

【1分】


白嶺の男子生徒が走り出す。

「くそおおお!!」

必死に建物を叩く。

「端末……端末……!」


呼吸が乱れる。焦りで視界が狭くなる。


一方で久我は走らない。


立ったまま都市を見ていた。


朝比奈が叫ぶ。

「久我!何してる!」


澪も言う。

「時間ない!」


真白が震える。

「久我くん……!」


久我は腕輪を見る。

【21】


小さく息を吐く。そして呟く。


「……俺は。」

ゆっくり拳を握る。

「負けるわけにはいかねぇんだ。」


久我の頭に浮かぶのは


颯真の顔。迷路の中での最後の言葉。

「信じてる。お前らなら勝てる。」


久我が歯を食いしばる。

「……ふざけんなよ。」

視線が強くなる。


「颯真が信じた俺らの価値。」

拳を握る。


「落とせるわけねぇだろ。」


玲央が久我を見る。


久我が言う。

「玲央あとは頼む。」


玲央が答える。

「まだだ。」


その瞬間玲央が叫ぶ。


「全員久我に接触!」


蒼天が一斉に動く。


澪。


朝比奈。


立花。


九条。


真白。


全員が久我に触れる。


腕輪が反応する。


【共有行動評価】


【久我 21 → 22】


【久我 22 → 23】


【久我 23 → 24】


【久我 24 → 25】


【久我 25 → 26】


久我が目を見開く。


「……!」


凛が言う。

「接触は微増。でも人数がいれば重なる。」



モニター更新。


【現在最下位】


【白嶺高校男子 21】


白嶺男子が顔を上げる。


「……え?」


【審査開始】

モニターが光る。御影の声が響く。


『第三層』


『審査終了』



白嶺の男子生徒の腕輪が赤く光る。


男子生徒が呟く。

「……嘘だろ。」


体が震える。

「まだ死にたく……。」


光が強くなる。

男子生徒の体が崩れそのまま床へ倒れる。

モニターが更新される。


【脱落者】

【白嶺高校 男子生徒】


御影が言う。

『価値とは他者が決めるものそして行動で証明されるものです。』


蒼天側。


久我が座り込む。

「……はぁ。」


朝比奈が笑う。

「ギリギリだったな。」


澪が言う。

「ほんとだよ!」


九条が久我を見る。

「助かったわね。」


久我が言う。

「まあな。でも白嶺のあいつを犠牲にしちまった。真白ごめんな。」


真白が小さく言う。

「……分かってる。でも助けてくれてありがとう。」


久我が頭をかく。

「礼言われるようなことじゃねぇよ。」


少し間を置く。

「俺らは。」


視線が前を向く。

「颯真に勝つって言われたんだ。」


拳を握る。

「だったら勝つしかねえ。」


都市全体にアナウンスが流れる。

それは御影の声だった。

『皆様、お疲れ様でした』


蒼天の生徒たちが顔を上げる。

『ここで第三層の補足説明を行います』


モニターが点灯し表示された文字。

【価値判定】


玲央が目を細める。


御影が続ける。


『第三層は最下位を決めるゲームではありません。』


蒼天がざわつく。


御影が笑う。

『第三層の本当の目的』


モニターが切り替わる。

【価値の証明】


『誰が価値のある人間なのかそれを見るためのゲームでした。』


凛が呟く。

「……つまり。」


玲央が答える。

「行動評価を確認するため。」


御影が言う。


『誰かを助ける者、誰かを見捨てる者、仲間を守る者、自分だけ生きようとする者、それを観察していました。』

モニターに映像が流れる。


蒼天の行動。

•真白を助けた久我

•接触で久我を救った蒼天

•協力して探索する姿


御影が言う。

『蒼天高校あなた方は非常に興味深い』


久我が舌打ちする。

「褒められても嬉しくねぇよ。」


その時都市の建物がゆっくり動き始める。


回転していた街が止まる。浮いていた建物が降りる。


迷路のような構造が消えていく。


澪が言う。

「……街が戻っていく。」


凛が頷く。

「ゲームが終わった。」


都市の外縁では湊がまだ一人で立っていた。


腕輪を見る。数字は変わらない。


湊が小さく呟く。

「……終わったか。」


モニターを見上げると御影が画面の向こうで微笑む。

湊は目を逸らす。


中央エリア。玲央が周囲を見る。

「全員無事か。」


朝比奈が手を上げる。

「問題なし。」


立花も頷く。


澪が言う。

「蒼天は全員いるね。」


九条が静かに言う。

「でも一人脱落した。」


真白が俯く。


久我が言う。

「それがこのゲームだ。」


拳を握る。

「だから勝たなきゃいけねぇ。」


少し空を見る。

「颯真が信じた俺らを証明するために。」


モニターが更新される。

【第三層】


【終了】


御影の声。

『それでは参加者の皆様は休息区域へ戻ってください。第四層の準備を行います』


澪が言う。

「……まだあるんだ。」


久我が笑う。

「当たり前だろ。」


玲央が前を見る。

「次も勝つ。」


九条が頷く。

「ええ。」


第三層逆位階層。こうして幕を閉じた。

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