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選抜区域  作者: 谷花皐
第二章 託されたもの

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第十九話 周期

【15:00】

迷路の奥から足音が響いてくる。


出口が閉じかけたところで朝比奈と桐谷が滑り込むように飛び込んできた。その背後では通路がずれて帰還ルートが塞がれる。


「……っぶねぇ!ギリギリセーフ。」

桐谷が膝に手をつく。


朝比奈は息を整えながら笑った。

「出口の位置が若干変わってたのは予想外だった。俺がルート読めてなかったら絶対終わってたな。」


久我が駆け寄る。

「お前ら無事か!」


「ちゃんと生きてるよ。」

朝比奈が鍵を掲げる。


蒼天側の空気が一気に緩む。


玲央が短く言う。

「これで同点。」


鍵が差し込まれる。

【蒼天:3】


白嶺側もほぼ同時に更新。

【白嶺:3】


点数は並んだ。


白嶺の生徒たちが安堵する。その中心では天城が穏やかに微笑んでいる。彼は何もしていない。だが場の空気が自然に彼へと寄っている。


凛が視線を向ける。

「なぜ彼は出ないのかしら。能力を温存するための作戦?」


湊はその問いに対して首を横に振る。


「違う。奴の狙いは回数を重ねて迷路のルートを読むことだ。そうすれば経験値が溜まる。」


凛の目が細くなる。

「あなた、このゲームの事妙に詳しそうね。」


湊は迷路の入口を見る。

「こういう構造は、内側よりも外側から見てる方が分かるってだけだ。」


アナウンスが鳴る。

「第四ラウンド開始。」

機械音声が響いた。


【蒼天:白石凛&湊】


【白嶺:二名選出】


白嶺から出てきたのは天城ではない男女ペア。


その後ろで天城が優しく喋る。

「落ち着いて。焦らなければ大丈夫。」


その言葉を聞いた白嶺の二人は不自然だった。先程は緊張で動きがぎこちなかったが今はそのような傾向が見られない。


そして凛は白嶺のその変化を見逃さなかった。

入口から、四人が同時に迷路へと入る。


【15:18】

迷路の内部は暗い。


入ってみて分かった事がある。五分で一周期そしてそれにより低い振動が伝わり迷路のルートが変わるということだ。そして凛はその動きをすぐに暗記した。


凛が即座に湊に言う。

「あと二十秒で一回目のズレがくる。」


湊もルートが動いて変わっていることに気づき、ルートの変化を音で判断する。


湊が耳を澄ます。

「外周が動く。中央はまだ。」


その他が振動が走り壁が滑るように移動する。


通路が閉じ、別の道が開く。


凛が判断する。

「外周から中央へ斜めに入る。」


湊が続く。

「帰りのルートは二周期後。」


分かれ道に凛が迷う。


湊が止まる。

「今は行くな。次のズレでそこは塞がれる。」

凛が頷く。


次の周期を待つ。そして壁が動き通路が開いた、


急いで駆ける。そしてその通路で鍵を発見した。


同時に奥から足音がする。どうやら白嶺側も鍵を見つけているらしい。


「時間がない。戻るわよ!」


次の周期まで残り一分。出口側エリアには三十秒遅れ。


湊が言う。

「今だ。」

二人が滑り込む。


【16:02】

凛と湊が出口へと飛び出す直後、通路が閉じた。


白嶺ペアも無事帰還。

お互いそれぞれの端末に鍵が差し込まれる。


【蒼天:4】


【白嶺:4】

また並んだ。


凛が壁にもたれる。

「周期は一定。でもズレ幅が微妙に変わっている。」


湊が小さく言う。

「……ルートの周期が変えられてる。」


凛が見る。

「何か知っているの?」

その問いに湊は

「いや、なんとなくそう思っただけだ。」

その回答に対して凛は湊に少し違和感を覚えた。


天城がこちらに向かって歩いてくる。穏やかに自分たちを称賛するように拍手をしてきた。


「君たちすごいね。ここまで誰も犠牲になってないなんて。」


そしてその隣には一人の少女が立っていた。

黒髪を束ねた、小柄な生徒。


天城が自然に紹介する。

「次は僕たちが出る。迷路のデータは集まったからね。」


「彼女の自己紹介がまだだったね。彼女の名前は鷹宮真白。人と話すのが苦手なんだ。許してくれ。」

少女が小さく頭を下げる。


九条の視線が止まる。どこか自分に似ている少女。


私と琴音との関係に少し似ている。


でも天城には琴音とは違う決定的な何かがあった。


少し時間が過ぎて表示が切り替わる。


【最終ラウンド】


【蒼天:九条玲那&藤堂颯真】


【白嶺:天城優&鷹宮真白】


最後のラウンド。空気が張り詰める。


九条が拳を強く握る。颯真が隣に立つ。


天城は、穏やかに微笑んでいるのを対照的に鷹宮は天城の事を心配そうな目で見ている。


この五時間の戦いは、この勝負で決まる。


そして入り口が開くと同時に四人が迷路へと足を踏み込んだ。

【16:15】

止まっていた時間が再び動き始める。

第十九話を読んでくださってありがとうございます。

迷路が動くなんて読めましたか?

今回のラウンドは大きな衝突こそありませんでしたが、それぞれの“立ち位置”が少しずつはっきりしてきた回でした。

周期を読む凛、外側から見ている湊

何もせず場を整える天城そしてその隣に立つ真白


誰も倒れていないのに、どこか不安が残る。そんな空気を意識して書きました。そして次はいよいよ最終ラウンドです。


ここまで犠牲者ゼロ。

でも、このゲームはそんなに優しくありません。

今回のラウンドは大きな衝突こそありませんでしたが、それぞれの“立ち位置”が少しずつはっきりしてきました。

次はいよいよ最終ラウンド。

天城の能力。九条と颯真の決着。そして迷路の本当の意味。黒崎の言葉も、ここで回収が入るかも?


ここまで読んでくださっている方、本当にありがとうございます。

もしよければ、

・湊の違和感に気づいたか

・天城をどう感じたか

・最終ラウンドの予想

ぜひコメントで教えてもらえると嬉しいです。

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