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選抜区域  作者: 谷花皐
第二章 託されたもの

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第十六話 閉鎖迷宮(クローズド・ラビリンス)

通路は長かった。白い壁。人工照明。そして窓はない。


時計は見当たらず端末の時刻だけが現実を示している。


【13:02】


黒崎の死から、まだ数時間しか経っていない。それでも、世界は止まらなかった。


九条は、蒼天の列の最後尾を歩いている。誰も彼女を拒絶していない。だが、誰も近づきもしない。その一歩分の距離が重い。


やがて通路が開けた。巨大な円形空間。天井は低く、圧迫感がある。中央に黒い端末台座。


その奥に巨大な迷路の入口。天井のスピーカーが起動する。


『第二層:閉鎖迷宮(クローズド・ラビリンス)


迷路内部が淡く点灯する。


『競技時間:五時間、五ラウンド制』


『一ラウンド六十分』


空気が張り詰める。


『各校、鍵五本の登録で勝利。ラウンド終了時、迷路は完全閉鎖。閉鎖時に内部へ残留している参加者は処理対象となるので注意してください。』


その説明を受け静まり返る。処理、その言葉に全員が黒崎を思い出したからだ。


だがルールは明確“出なければ死ぬ”。


九条の喉がわずかに鳴る。


そこで黒崎の声がよぎる。次は高さじゃない。閉じる。


「迷路ごと閉じるってことか。」


凛が端末を確認する。

「出口は一箇所のみ。」


湊が呟く。

「重要なのは距離だな……」

ここで黒崎のヒントが、繋がる。

『迷路は両校共通』


『二人一組でのみ入場可能。鍵は迷路内部に出現します。』


端末が振動する。


【現在あなたは鍵を0本所持しています】


そして一通りの説明が終わり対面の通路が開いた。


紺と白の制服。整然とした列。

アナウンスが鳴る。

「今回のゲームの対戦高校は白嶺高校です。」


先頭の少年が、柔らかく笑う。

「はじめまして。白嶺の旗手をしています天城優です。」


その声はどこか優しく不気味だった。

「みんな怖いよね?こんなことにいきなり巻き込まれて、でも大丈夫。僕が、みんなを守るから。」


この言葉を自分達に言っているのか、それとも白嶺の生徒達に言っているのか、それともどちらにも言っているのか定かではない。


背後の生徒たちが、自然と彼の後ろに寄る。どうやら彼に依存しているらしい。旗手の能力か、はたまた彼のカリスマか。


命令はしていない。それでも揃う。少し面倒なタイプだなこれは。


「苦手なタイプだ。」


九条が白嶺の違和感に気づく。

「……中心が固定されてるみたい。」


そして天城の隣に、静かに立つ少女がいた。赤い髪を後ろでまとめた、凛とした表情。彼女だけが、他の生徒と違い天城の一歩横にいる。


旗手を支える位置。しかし他の生徒とは違いその関係は依存関係ではないように見える。


九条はその光景を見て彼女は自分に似ていると感じていた。


スピーカーが再び鳴る。

『第一ラウンド開始』

【13:10 – 14:10】


・第一班:玲央&澪

・第二班:久我&立花

・第三班:朝比奈&桐谷

・第四班:湊&凛

・第五班:九条&颯真


このメンツがいま蒼天が出せるベストメンバーだと凛が分析した。

「このメンバーが一番勝つ確率が高いはずよ。」


凛のその作戦に従うことにした。

「わかった。これでいこう。」

「澪最初は俺たちだ準備はできたか?」

澪が頷く。


久我、立花。朝比奈、桐谷。湊と凛。

そして最後尾に九条と颯真。


颯真は九条を見ない。九条も視線を合わせない。


二人の間にはまだ距離があるように見える。その理由はまだ分からない。


「行くぞ。」

第一班の玲央と澪が迷路へと足を踏み込む。


白嶺側も同時に入る。


迷路内部。似たような白い通路が続く。


「右、次は左な。」

選択に迷いがあればそれだけで時間は減っていく。これはどのようにして効率よくカギを見つけることができるかが大事となってくる。


澪が俺のその姿を見てくすっと笑っていた。

「やっぱり昔と同じだ。」


「何が?」


「昔やった宝探し。公園の裏の空き地でやってたの覚えてない?」


小さかった頃の思い出を少しだけ思い出す。

「ああ。勝手に地図描いてやってたやつか。」


「そうそう。玲央、毎回一人で突っ走るの。私がいなかったら絶対迷子だったよ。」


少し恥ずかしい思いでなので、できれば忘れたい記憶トップ5位には入っている。

「でも最後は見つけてただろ。」


澪が横を歩きながら肩をぶつけてくる。

「それは私が後ろから修正してたからね。」

いままで張り詰めていた空気が柔らぐ。


澪が続ける。

「ねぇ。覚えてる?宝の場所、玲央だけ知ってたこと。」


「……そんなこともあったな。」


「教えてほしかったら“お願い”しろって言ってたでしょ?」


澪はにやっと笑う。

「その時の私はなんで教えてくれないのって顔真っ赤だったよ。」


俺はとっさに顔を逸らす。自分が今どんな表情をしているか見られたくねぇー。

「子供だったからな。意地はりたかったんだろ。」


「今は?」

澪がぴたりと止まった。

「今もお願いすれば、聞いてくれる?」


遠くで足音が鳴る。この沈黙の中でも時間は確かに進んでいることを示していた。


「……試しに言ってみろよ。できる範囲で聞いてやる。」


その言葉に澪が少しだけ真面目な顔になる。

「全部終わったらさ。どこか行こうよ。」


「こんな時に言うことじゃないのは分かってる。でもそれでも今言うね。宝探しじゃなくていい。普通のデートでいいから、」

その時澪が足を滑らせる。

「わっ――」


俺は反射的に澪の腕を掴んだ。

そして壁に押し付ける形になってしまった。距離が近いせいか澪の呼吸がすぐ近くで聞こえてしまう。


呼吸がわずかに乱れているのがわかる。

「……今のも助けてくれるって、わかってた。」


「だったら転ぶな。」


澪が顔を近づけ小さく笑う。

「ねぇ玲央。私ずっとあなたの隣にいるよ。」


「迷路でも、宝探しでも。」


一瞬だけ、俺のの視線が澪に落ちる。いつからこんなこと言うやつになったんだと思いつつまたすぐに歩き出す。

「……もう迷うなよ。」


澪は真っ直ぐに返す。

「迷ったら、捕まえて!」


少し進むと銀色の鍵が壁のくぼみに光る。


玲央がそれを掴むと


【鍵1本出現】


澪が言う。

「ほら今回も見つけた。だからさ今度は私の番ね。ちゃんと約束して。」

それに対して玲央は何も言わない。

だが二人の歩幅は、完全に揃っていた。

第二章、始まりました。

第一章が“頭脳戦”だったなら、

第二章は“選択の戦い”です。


黒崎の助言通り高さではなく、距離。奪うのではなく、戻れるかどうか。


そして玲央と澪の宝探し。

あの二人、くっつくと思いますか?

それともこのまま幼馴染のまま?

正直、自分でもまだ決めていません。

でも一つだけ言えるのは、この迷路は人の距離を強制的に縮める場所です。

みんなは誰とペアを組みたいですか?

感想もらえたらめちゃくちゃ嬉しいです。

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