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MRL  作者: 化琉壮一


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6/9

オルタビア:高層回廊

「上層は完全に晴れているようです。光量も十分に確保できます」

「なら、移動には都合がいいな」

 短く答え、昨日とは違う、高層の回廊へと足を踏み出す。朝の都市は、奇妙なほど静かだった。ただ、その静けさが回廊が高層に位置しているからなのか単純に静かなだけなのか。それは分からなかった。

 夜と何も変わらないはずなのに、光があるだけで印象が大きく違う。晴れやかに澄み渡った、外はどこまでも見通せそうなほどだった。それと同時に足元の回廊は、よりはっきりとその劣化具合を見せていた。露出した金属、ひび割れたガラス。それでもなお、この高さと年月に耐えていること自体が異常とも言えるほどだった。

 歩きながら、視線を前方へ向ける。

 ――情報棟。

 あの時遠くに見えていたはずのそれは、確実に距離を縮めている。だが同時に、その存在感は比例して増していた。そしてついには、高層であるにもかかわらず情報棟の先は見えなかった。

「Alpha、現在位置からの最短ルートは?」

「このままこの回廊を直進し、三つ先の分岐で下層へ降ります。その後、再び別の回廊を歩き上層へ戻るルートが最も効率的です」

「一直線には行かせてくれないか」

「この回廊自体は、情報棟に直結してますが一部崩落してしまっていて、今は通行ができませんね」

「そうか…相当なロスになりそうだな…」

 この都市は、ただ広いだけじゃない。複数の回廊が一番効率よい配置で置かれている。人の流れ、物資の流れ、すべてが最適化されていたはずだ。だから一つの通路が崩壊したとしても、その導線が途切れることは無い。しばらく進むと、回廊の途中で足を止めた。

 床に、はっきりとした痕跡が残っている。それは明らかに靴底の跡だった。それも最近ついた新しい、跡だった。

 常に風に晒され続けている、この場所でまだ跡が残っていた――

「Alpha、この痕跡の経過時間は推定できるか?」

「正確な算出は困難ですが、数日以内の可能性が大きいですね」

「……最近だな」

「それがこの武器を置いた持ち主である可能性は?」

「この通路を使ったという事は、高層からアクセスしているという事です。なのでその可能性も大いにあります」

立ち上がる。この都市に俺より先に訪れていた人が居る。それは、この残された軌跡が証明していた。視線を上げる。

 情報棟は、もうはっきりと構造が見える距離にあった。外殻の継ぎ目、パネルの配置、回廊の接続部。細部まで視認できる距離まで来ていた。そして、情報棟の近辺は、崩壊の進行が遅いのか、未だに当時の形を保っていた。その崩壊の少なさは、そこだけ他が崩壊してからも止まることなく動作し続けていたことによるのだろうか。中枢というだけあって多少崩れても修復できたのか…今ではその真相を語れるものでさえこの場にはいなかった。

「Alpha、あのエリア……」

「はい。構造の劣化率が他と比較して著しく低いです。何らかの修復機構や維持機構が稼働している可能性があります」

「まだ動いてるってことか」

「はい。中枢は都市の中でも最重要な施設として設定されているので、それ単体でも長い間稼働できるように設計されているはずです。などで今も完全停止には至っていないと推測されます」

 情報棟を探索するときに崩落は心配しなくてよさそうだということが分かっただけでも心の重荷が一つ外れたような気がした。ただ、それでも心の奥では警戒を怠るなと警鐘が鳴り響いていた。

 そして、歩くのを再開した。回廊は緩やかに下降し、次の分岐へと繋がっている。

その先に、さらに別の層へとつながる通路、別の方からやってくる回廊。すべてが、あの一点へと収束する。

 情報棟。あの場所に辿り着けば――この都市の『答え』に触れられる。

 俺はナビに導かれるようにして、情報棟へと向かった…

 それから数十分と経たないうちに情報棟へとたどり着いた。俺は中央セクターの情報棟を見上げた。低層の外壁はコケやツタに覆われていて、文明の灯が失われてしまったことをただ静かに伝えているような気がした。それでも高層部にはまだ届いていなかった。

「このドア、開閉できそうか?」

「残念ながらドアに通電はしていません。電力を供給して開閉させる必要がありそうです。想定電力は15Ⅴ100Wです」

 俺は扉の縁にある制御パネルのほこりを払い電源接続部を探した。制御パネルを分解し、電源部にバッテリーをセットする。そして、制御パネルを元に戻し、手を近づける。扉に蒼いラインが走り、ドアは低い音を立ててスライドし、ゆっくりと開いた。内部は暗闇に包まれていた。だが、確かに

 ――まだ『何か』が残っている気配があった。

 俺は、情報棟へと足を踏み入れた…

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