XX45年5月21日『カステル都市群総合原子研究所』:第二実験:HDI絶縁体
同時刻、HDI絶縁体付近。
光ファイバーを束ねたケーブル群を連想させるかのような太さの電源ケーブルを二分するかのようにして、隔壁はそびえ立っていた。その中央には研究所への送電を遮断するための最後の防壁であるHDI絶縁体が据えられ、その隔壁を挟むように二基の送電電極が静かに向かい合っている。つい先ほどまで莫大な電力が駆け抜けていた空間は、今は不気味なほど静寂に包まれていた。
そう思えた直後、電極の先端で一粒の青白い光が灯った。本来の設計値を遥かに超えていた電力は空気を強引に引き裂き、一筋のアークを生み出した。その光は消えるどころか瞬く間に幾筋もの放電へと分岐し、轟音を響かせながら空間を埋め尽くしていく。枝分かれした一部は壁や天井へ飛び移り、金属を変形させ、コンクリートを砕きながら周囲を焼き払った。しかし、その大半は一切進路を変えることなく、真正面に立ちはだかるHDI絶縁体へと殺到する。
そして激突した閃光は、絶縁体の表面を白熱させた。
HDIはそれでも、崩れなかった。超高耐圧セラミックは表層から徐々に融解し続けていた。だが白く輝く人工ダイヤモンド格子だけが、その莫大な熱量を受け止め続けていた。一本、また一本とアークが電極から放たれる。無数のアークは木の枝のように複雑な分岐や枝分かれを繰り返しながら、電気が流れる道を詮索し続けていた。
アークのもたらす超高温に耐え続けていたがついにはその熱に耐え切れずHDIにひびが入る。
アークはその隙を見逃さなかった。流れができてしまったそのひびを広げるようにアークはそこに集まりだした。その様相は個々が意思を持っているように映った。そして辺りには破片が散らばり始める。その瞬間、無数のアークは絶縁体を突き破った。
そして、アークは吸い込まれるようにしてその隙間を駆け抜けた…




