カステル都市群:アルテア:カステル都市群総合原子研究所:データセンター:内部
「……なんだ、ここは……」
そこには無数の資料棚が並んでいた。棚は天井近くまで積み上げられ、その枠という枠にファイルケースが詰められている。
整然と並べられた紙の資料。そして壁一面を埋め尽くす保管ラック。それらが視界を埋め尽くす。そしてその中には研究データ、実験記録、解析結果、運転ログと言ったありとあらゆる情報が保管されていた。
その様子は、まるで巨大な図書館そのものだった。
「ここ……紙でデータを保管していたのか……?」
今の時代では到底考えられない光景だった。いや、ずっと昔でさえ、ここまで膨大な量の情報を紙だけで保存することは珍しかったはずだ。
俺は近くの棚から一冊のファイルを取り出した。表紙には埃が厚く積もり、指でなぞると白い筋が残る。
ページをめくって内容を読もうとした。しかし内容より先にその違和感がやってくる。指先に伝わる感触は普通の紙と全く違った。しなやかさを持ちながらも、薄い樹脂板のような強度を持っていた。
「……何だこれ。本当に紙なのか?」
「長期保存に特化した高強度の紙ですね」
Alphaはさらに説明を続ける。
「セルロース繊維に高分子樹脂を混合した複合記録媒体だと思われます。耐水性、耐熱性を有し、適切な環境下では数百年以上の保存が可能です」
「数百年か……ここの責任者はこうなる可能性を想定していたのか?」
「その可能性もありますね。一度このようなことが起きてしまえばデータの復旧は時間が経つほど難しくなります。だからこそこうやって紙でデータを保管したのかもしれませんね」
俺は手にしていたファイルを元の棚へ戻した。ここにある資料すべてを読み切ることなど不可能だ。今の俺に必要なのは、この研究所で何が起きたのか、そのことが記されている記録だ。
俺は、複数の棚を見ながら一番新しい記録が残っている棚へと向かった。だがいくら探しても見つかることは無かった。
「紙の資料として残してるならわざわざ残せる時間は残っていないか…」
ここで最後に起きたことは、推察することしかできない。そう考え、俺が資料棚から離れようとした時だった。
「記録を自動で印刷する装置を発見しました」
突然、Alphaがそう告げた。俺は足を止める。
「自動印刷?リアルタイムで記録するためか?…」
「はい。この施設では、実験データなどを一定間隔で紙媒体へ出力していた可能性があります。発見した装置の位置を表示します」
そして、視界の端には場所を示す青いマーカーが浮かび上がった。
俺はその案内に従い、資料室のさらに奥へと進んでいく。棚の間を抜け、奥へ進み続けると部屋の隅に半ば壁へ埋もれるようにして設置された大型の装置が姿を現した。
辺りには、あの時に見た質感の違う紙が大量に並べられていた。そしてそのどれもに実験の記録が記されている。
俺はその中で一番新しい実験記録の束を手に取り、読み始めた。そこには当時の時刻と共に、機械的な文字が延々と印字されていた。




