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MRL  作者: 化琉壮一
第三章:荒野地帯

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荒野地帯:元C-1:加速

 俺は工具箱を閉じるとバックパックを背負い直し、峡谷沿いに続く荒野へ視線を向けた。

「Alpha。アシストシューズのモジュールの状態は?」

「正常稼働中です。追加モジュールどちらもオンライン。出力も問題ありません」

「そうか」

 俺は軽く準備運動を始めた。体をある程度ほぐした後、靴側面にあるメイン電源を入れた。靴の内部で小さな駆動音が鳴ったと同時に、視界にインターフェースが表示された。そこには短く一つのログが記述されている。

『全システム:オンライン』

「Alpha、アシストを頼んだ」

 そう言い、強く地面を蹴った。踏み込んだ足が、身体が一気に前へ射出される。景色が高速で流れ始めた。砂岩の壁、そして赤茶け乾いた大地が視界の両端へ流れていく。

 アシストシューズが生み出す絶大な補助推力は健在だった。次の一歩を踏み出すたびに、強い加速感が体を抜ける。

 脚へかかる負荷もすべて機械が吸収し、人間の限界をとうに超えた速度へと加速していく。EMPで視覚補助は半壊し、複数の機能を同時に使うことができなくなった。

 だがあの時と同じような推力で走ることだけはまだできた。足だけは、祐が改良してくれた足だけは、今まで通り動き続けた。

 峡谷の縁に沿って進み続ける。眼下には底の見えない巨大な裂け目、そして対岸にも赤茶けた大地と砂岩が広がっていた。これから目指す方を遠く見ても、荒野は続いていた。

 今では、こうなる前の様相は全くと言っていいほど想像できなくなってしまった。変わり果てた景色を横にしながら、俺は走り続けた。

 数十分ほど走っただろうか。俺は、走りながらAlphaに聞いた。

「Alpha。電力残量はどれくらいか分かるか?」

「現在のバッテリー残量は九十八パーセントです」

 思わず足を止めてしまいそうになりながら表示を確認する。バッテリーの残量は確実に減っている。だがその減少量は異常なほど少なかった。

 俺はこれまで何度もアシストシューズを使ってきた。この速度で走れば数十分でもそれなりの電力を消費しているはずだ。

 それなのにこの目を疑うような電力の消費量。

「こんな減らないものなのか?」

「周辺環境の影響によるものだと思われます」

 Alphaが淡々と説明をし始めた

「この地域の気温や日光照射量は強く太陽光発電パネルの効率は過去最高に達しています」

「消費した瞬間から発電されていたのか…ここまで発電効率がいいとは想定していなかったな…」

 俺は空を見上げた。空には雲一つなく、照り付けるような太陽の光だけがあった。恨みたくなるような天候だ。だが、この天候こそがこの高効率な駆動を許してくれているのだった。

 俺は足に力を強く込めた。するとアシストシューズはそれに呼応するように、出力をあげた。左右に流れる、景色の速度が上がる。そして俺はそのまま、峡谷の先へと進み続けた。

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