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MRL  作者: 化琉壮一


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荒廃都市:オルタビア

 都市の中心部に近づくにつれ、段々と瓦礫の質が変わっていく。無秩序に崩れ落ち、朽ち果てた外縁部とは違い、ここでは建物が比較的きれいな形を保ったまま、植物に覆われ静かに朽ち果てていた。その風景は破壊された都市というより、時間に置き去りにされた都市だった。

「この街、オルタビアは元々、この国でも有数の都市として機能していたようです。当時の人口は約六千万人。今では、この都市唯一の核融合炉が停止し都市は完全に廃れました」

 Alpha312-Aが、淡々と記録を読み上げるように言う。

「現在は電力が失われてしまったため都市機能を維持できずこの通りですが……当時は人口、インフラともに世界有数の高水準な都市だったはずです。ここなら、まだ遺物が発見できる可能性があります」

「なるほどな」

「そして、この街の中心部には先ほど説明した核融合炉がある発電塔が存在していました。そこから何らかの情報、あるいは都市の稼働ログが得られる可能性もあります」

「発電塔か……」

 壮士は周囲の静まり返った街並みを見渡す。その先にはひときわ大きい棟のようなものがあり太陽光を受け光り輝いていた。

「……核融合炉があったのに都市の機能は停止したのか」

 発電塔のある中央セクターへ向かう途中、俺はひび割れた幹線道路であろう道路の端で足を止め、しゃがみこんだ。

 地面に横たわっていた標識を手に取り内容を確認した。標識は既に大量の錆に覆われながらも文字は辛うじてまだ読むことができた。

 ――第七居住区・中央管理ブロック方面。

「中央管理ブロック……」

 壮士は小さく呟く。

「この街の情報がすべて残されている唯一の場所だ。発電も生産も…すべてのログが記録されている場所…」

 強い風が吹き抜け、どこかで金属同士が触れ合う音が鳴った。警告音にも、ただの残響にも聞こえる、不確かな音。

「この付近から生命反応は検出されません。ただし……微弱な電磁残留を確認しました」

「まだ、完全にシステムは死に切ってないのか」

 壮士は立ち上がり、管理ブロックの内部へ足を踏み入れる。既に天井は崩れ、断線した配線が垂れ下がり、壁面のホログラム広告はブラックアウトしており文明の崩壊を感じさせられる。

 そして、管理ブロックにはこのブロック内の地図。そして、新しい都市計画や政策の書類が散乱していた。そして俺はそばに置かれていた端末に積もった埃を払う。画面は割れていたが、内部電源は奇跡的に生きていた。ただし、この灯りもいつまで保つかは分からない。

「Alpha、外部接続はできそうか?」

「試みます……端末のシステムは旧式ですが、規格は一致しています」

 一瞬の沈黙。次いで、端末の画面に途切れ途切れの文字列が浮かび上がった。

『最終ログ:電力の断線、およびブロック内損傷を検知。修繕を……ここ……ろみます……』

 壮士は、そっと端末の電源を落とした。

「ブロック内の修繕作業の途中で、発電施設からの電源供給が完全に断たれたようですね」

「……システムは人が居なくなったことも知らずに電源の落ちる最後まで、ここを維持しようとしてたんだな」

 俺は端末を元の場所へ静かに戻した。端末をそのまま持ち去る気にはなれなかった。これはこの街の最後の一瞬までを記録した、ほぼ唯一の端末であり――そして墓標でもあった。

「近くに、他に探索できそうな地点は?」

「付近の構造物を再検索中……中央セクターへのアクセスが可能です」

「分かった。中央セクターまでの経路を表示してくれないか?」

「目的地をセストレアからオルタビア中央セクターへと変更しました。再度案内を開始します…」

 そう言うと同時に、付近の情報が表示される高性能なコンタクトレンズ越しの視界にルートが表示された。視界の奥、現実の風景に重なるように、淡く発光するラインが宙に出現し空間をなぞり始めた。やがてそれは明確な形を取り、街路の上に半透明の矢印となって現れた。その案内はまるでこの都市のシステムそのものが、俺をどこかへ誘導しているかのようだった。俺は一瞬だけ周囲を見回した、それから矢印の示す方向へと足を踏み出した。



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