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MRL  作者: 化琉壮一
間章『オルタビア→サステル』

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16/25

高速道路-A12:オルテルトンネル

 サステル方面を示す標識から先、地下に落ち込んでいる道路はゆるやかに傾斜をつけながら山岳地帯を超えるために延びていっていた。かつては効率化のために車の速度を落とさせないよう計算され尽くされた勾配も、今はただ長く、坂をあまり感じない緩やかな上り坂でしかなかった。

 一歩踏み出すたびに、乾ききったアスファルトが靴底で乾いた音を立てながら砕けた。その音は壁に反射し、わずかに遅れて返ってくる。広いはずの高速道路が、妙に閉じた空間のように感じられた。

 周囲に並ぶ車列は、オルタビアの郊外へと進むにつれて増えていった。最初は数台だったものが、やがて渋滞が起きたかのように列を成していっていた。どれほど焦っていたのだろうか、前の車に気付かず派手に追突したまま止まっている車。ドアが閉じられず開いたままのもの。中には、荷物が散乱しているものもあった。だが――人の姿はどこにもない。

「……ここで何かあったのか」

 思わず呟く。

「渋滞の発生は確認できますが、詳細な原因は不明です。一度にキャパシティーを超える車が高速道路に流入したことによる渋滞と捉えていいと思います」

 Alphaが淡々と答える。俺は車の隙間を縫うようにして進んだ。車のせいで視界は一部遮られていた。それもあってか自然と足取りは慎重になっていた。

 しばらく歩くと、辺りの風景も徐々に山がちのものに変わっていって道路も変化していっていた。左右の壁が徐々に高くなり、白いコンクリートの壁が視界を圧迫してくる。コンクリートでできた切り通しに圧迫感を感じた。吹く風の流れも変わっていく。これまで複数の方向から吹き抜けていた風が、前方からだけに変わっていた。

「……もう山岳地帯か…トンネルももう近いんだろ?」

「はい。前方約300メートルにトンネル入口を確認しています」

 視線を上げる。遠くに、これから通るであろうトンネルの入り口が見えた。この巨大な山岳地帯を貫くために造られたトンネル。照明がなくなった今ではその先は闇しかなく、その異様さがはっきりと伝わってくる。

「完全に照明は落ち切ってるな…これ本当に行けるのか?」

「視界ゼロな状況になりますが通行することは出来そうです」

 足を止め、トンネルの先を見据えるかのように、トンネルの奥をまじまじと見たが、何かが見えることは無かった。入口の上部は経年劣化で一部崩れかけているが、完全な崩落には至っていない。強固なその構造自体は辛うじて保たれているようだった。だが、内部に関しては、何一つ保証はない。

 光は、数メートル先で完全に途切れている。その先は、ただの暗闇だ。風が、トンネルの奥からゆっくりと流れ出てくる。冷たく、湿った空気。外とは明らかに質の違う空気だった。

「……ここを抜ければ、一気に距離は稼げるんだよな」

「はい。このトンネル群を…少なくともこのトンネルだけでも通過すれば、サステルまでの距離は大幅に短縮されます」

 短く息を吐く。最初から引き返す理由は無かった。ここまで来て、別ルートに切り替える選択肢はとても現実的じゃなかった。

 トンネルの先は完全な暗闇に包まれていて、そこには何も見えない。だが――そこに何もないとは限らない。

「ナイトビジョンを、最大感度に設定してくれ」

「分かりました。視覚補助を開始します」

 そう言われると同時に視界は、ナイトビジョンを通して映る世界は、トンネルの中の闇を正確にとらえ最大限明るくしていたが、それでもトンネルの終点まで見えることは無かった。

 俺は、手を後ろに回し銃をとりだした。そして不具合がないか確認し武装する。大都市の郊外でましてやこんな山中に人が居ることはまずないだろうが、銃を持っておくに越したことは無かった。

「……行くぞ」

 一歩、一歩闇の中へ足を踏み入れる。奥へ行く度に外の光が背後で細くなり、やがて完全に断ち切られていく。そして、音の反響する閉鎖空間へと変わっていく。それは、ここが外とは別の空間であることを否応なく突きつけてきた。

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