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MRL  作者: 化琉壮一
間章『オルタビア→サステル』

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高速道路-A12

 物資を求め、倉庫の探索を続けていた途中で、Alphaが淡々と声を上げる。

「先ほど現在地から次都市までの複数ルートを再計算しました。ここで情報を再更新した結果、次の補給可能地点であるサステルまで3つのルートがあります」

 そう言われると共に、視界にホログラムが展開される。そこにはこの近辺の地形図と共に三つの線が描かれている。俺は、それぞれのルートの詳細を確認する。

『地上街道ルート:84km (国道124-A経由)』

『山岳ルート:72km (登山道経由)』

『高速道路ルート:43km (高速A-12経由)』

「高速道路ルートが最短です。ただし、途中山岳地帯を通ります。山岳地帯のトンネル群の通行可否は未検証です」

「次の都市の情報ってあるか?」

「サステルは小規模な都市です。崩壊前の人口は110万人。しかし、付近の山岳地帯で風力発電を行っていたため現在でも文明は低水準ながらあります」

「有人都市か…」

 その言葉を心の中でもう一度繰り返す。これまでのような廃都市とはわけが違う。人がいるというだけで、そこにはその年独自のルールが生まれる。情報も物資も、今まで通りにはいかない可能性がある。

「……厄介だな」

 思わずそう漏らすと、Alphaが即座に補足する。

「ただし、現在のサステルは完全な都市機能を維持しているわけではありません。あくまで崩壊後に再編された小規模自治圏に近い状態だと思われます。外部関係者を閉ざすようなことはしていないと推測できます」

「それもあくまで推測だがな…」

 不確定な、情報に縋りたくはないが、それでも誰もいない廃都市と言われるよりは遥かにましだった。

 視線を再びホログラムへ戻す。三つのルート。地上街道、山岳、そして高速道路。そのうち最も短い線は、高速道路ルートだった。高速ルートだけは目の前の山岳地帯を直線でつないでいた。だが同時に、そこには複数の赤い警告表示が重なっている。

『状態不安定空間:多数』

「やっぱりそう簡単にはいかないか……」

 小さく息を吐く。倉庫の奥では、まだ探索可能な棚が並んでいる。だがいまでは、ここに長居する理由も薄れていた。必要な物資がある。補給もできる。だがいつまでもここで長居するわけにはいかない。足を止めればそこから進捗が進むことは無い。

「Alpha」

 呼びかけると、即座に応答が返る。

「はい」

「高速道路ルートで行く。最短でサステルまで抜ける」

 一拍の間もなく、Alphaは答えた。

「了解しました。ルート設定を更新します。高速道路A-12を経由しサステルまでのナビゲーションを開始します。山岳トンネル区間では付近の状態に注意してください」

「分かった」

 複数あったホログラムの線が、一本だけ強調される。そして、それ以外は次第に消えていった。俺が選んだ高速道路ルート以外は薄れていく。

 倉庫の奥に並ぶ棚を一度だけ見渡す。まだ使える物資が山のように眠っているのは分かっている。それでもここに居続ける理由にはならなかった。

「……行くぞ」

 そう言って、足を倉庫の出口へと向けた。倉庫の出口へ向かう途中、背後からAlphaの声が静かに続いた。

「ナビゲーションを開始します…」

 その声は、いつも通りの無機質な声で、揺れがない。だが今は、それがむしろ頼もしく感じられた。外へ出ると、崩れかけた都市の風景が視界いっぱいに映る。

「この都市もいつか…」

 俺は不意にそう呟きながらも、そのまま案内に沿って歩いて行った。やがて、地面が不自然に落ち込んでいる場所へと出た。まるで都市そのものを切り裂いたかのように、一直線に走る巨大な溝。その底に――半地下構造の高速道路が姿を現していた。

 コンクリートで固められた壁面はところどころ崩れ、鉄筋が剥き出しになっている。だが、その構造自体はまだ保たれていた。都市が死んでも、道路は本来の機能をわずかながら維持していた。ゆっくりと高速のランプを下りる。

 足元のアスファルトはひび割れ、雑草が隙間から顔を出している。かつて昼夜問わず、途絶えることなく車が走っていたであろうその道は、今では完全に静まり返り、ただ長く、どこまでも続いていた。

 数台の車が、その場で時間ごと置き去りにされたかのように並んでいる。車はもう錆び、今ではそこにあったものを示すだけの存在となっていた。

 防音壁に目を向ける。本来なら高速の騒音を遮るためのそれは、今では無数の穴が開き、その機能を失っている。開いた隙間からは外の風と光をそのまま通していた。風が吹き抜けるたびに、防音壁が音を反射しいつもの高速のような声が聞こえる。

 そして――標識。ひび割れた支柱に支えられながらも、文字だけは、奇妙なほどはっきりと残っていた。

「A-12:サステル方面」

 俺の行くべき場所の、名前がそこには刻まれていた。これから向かうその方向を見上げる。遠くには、巨大な山岳地帯が見えた。そして視線を落とし、歩き出した。

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