オルタビア:物流センター:A1
目を覚ましたとき、しばらく自分がどこにいるのか分からなかった。
だがすぐに思い出した。ここは都市、オルタビアの中。そして探索中の管理センターの仮眠室。
「現在時刻、午前7時12分です。昨夜中、外部環境に変化はありませんでした」
「……そうか」
短く答え、体を起こす。束の間の休息は終わり、再び現実へ戻ることを余儀なくされる。
ナビゲーションはすぐに開始され、俺をせかすように矢印を表示させていた。俺たちは再び下層へと向かっていった。
だが――しばらく進んだところで、違和感が生じる。
「……ん?」
視界に表示されたルートが、明らかにおかしい。下へ向かっていたはずの経路が、途中で横へ逸れている。そして――建物の外壁方向を指し示していた。
「Alpha、このルートおかしくないか……」
「最短経路です。出口へ接続されています」
「出口……?」
最下層にはまだ到達していない。それなのに、外へ出るルートが表示されている。それに、情報棟にはフロア1024以下の階層には出入口がないとAlphaは言ってたはずだ。そんな疑惑を抱えながら下層へと降りてゆく。目的の階層へ着き、通路を進んば。通路は次第に広がり、やがて一本の直線へと変わる。
人工的に整えられた、無駄のない構造。そしてその先に――巨大な壁が現れた。継ぎ目もない無機質な鋼鉄のように見える壁だった。法鉄のように見えながら更迭以上の強度を誇っていることが簡単に想像できた。まるで行く手を遮るように、そこに存在していた。
「ここ行き止まりじゃないか?そう言えば、下層には出入り口がないんじゃ…」
「大丈夫です。ここは入り口は無く、出口専用の場所です」
壁に差し掛かった時、近くの壁面からパネルが出てきた。そして、勝手に認証が始まった。が、先ほどの認証ですべての権限を確認できたからだろうか?そのまま
『認証完了』
と表示された。そして、壁がスライドパズルのように開けられる、そして視界の先に、複数の大型搬入口を備えた建造物が現れた。ここも、データセンターのように、劣化を感じさせられなかった。
物流倉庫…かつて、この都市のほとんどの物資の管理と保管、そして供給をすべて行っていた中継点。今はもう、その役割を終えたただの残骸と化していた。内部に足を踏み入れる。空気が、重い。長い年月放置され、そのまま置き去りにされていたせいだろうか。床も棚も厚いほこりで覆われていた。
一歩踏み出すだけで、床に積もった細かな粒子がわずかに舞い上がった。
「……視界に影響が出るほどではないが…補正は入れておいてくれ」
「視覚的な情報量を調整します」
視界がわずかに補正される。俺は呼吸を浅くしながら、慎重に歩を進めた。そして俺はA1と書かれている倉庫列へたどり着いた。
規則的に配置されたはずの棚たちの中には、劣化に耐え切れず形を崩してしまった者たちもあったがたいていは今も、当時の様子を維持していた。
隣の倉庫列には巨大なコンテナが開いたまま放置され、中身はほとんど空になっている。
「……既にいくつかは持ち出された後か」
「そうみたいですね。埃の積もり具合から機能停止直前、またはその直後に物資が回収された可能性があります」
それでも、この膨大な倉庫は完全に空ではない。見落とされた物資。価値が低いと判断されたもの。あるいは、急ぎすぎて回収されなかったもの。
そういった残り物が、わずかに残っている。俺は棚を一つ一つ確認していく。俺も、使えそうなものだけを選び、後はそこへ置いたままにする。
色々な物を漁りながら倉庫の奥へ向かっている最中――視界の端に、違和感が引っかかった。棚の奥。影の中に、ひとつだけ異質なものが横たわっている。
それは埃に埋もれながらも、微かに光を反射していた。背を伸ばし、それを拾い上げる。手のひらに収まる程度の大きさの機器だった。だがそれは、見たことのない構造をしていた。




