第3話 畑中清が動き始めた理由
防衛大学校を卒業し、航空自衛隊・松島基地でパイロットとして勤務していた頃。
畑中清は、休暇で上京するたびに、奥野夫妻と宇野夫妻を訪ねていた。
自分を、まるで実の息子のように可愛がってくれた奥野忠雄。
その奥野が――自ら命を絶ったと知らされたとき、清は言葉を失った。 当時、清はテストパイロットとしての訓練が最終段階にあり、どうしても東京へ戻ることが できなかった。
弔電。一本の電話。それだけで済ませてしまった自分を、清は今も責め続けている。
――あのとき、 なぜ、何としてでも戻らなかったのか。
防衛庁への出向が決まり、結婚と上京の挨拶を兼ねて奥野夫人、そして宇野夫妻を訪ねた。
その席で――宇野は、あの「奥野工業事件」の裏側を、静かに語り始めた。
――奥野工業を潰したのは、東和電機産業と帝都銀行。
――その背後には、当時の民自党幹事長・山曽根康路がいる。
言葉を失いながらも、清の胸には、ある思いが込み上げてきた。
もし、それが事実なら――奥野夫妻のためにも。あの人に人生を狂わされた人たちのためにも。
「自分には、何かできることがあるのではないか。」
清は、最も信頼する3人の親友を集めた。
これまでの経緯を、一から、包み隠さず伝えた。
話を聞き終えた三人は、短くうなずき、こう答えた。
「それぞれの立場で、 調べられるだけ、調べてみよう」
その瞬間――清の中で、何かが静かに動き始めた。
それは、復讐でも、野心でもない。真実を知ろうとする、若者たちの“正義”だった。
―――――――――――――――― 次回予告――――――――――――――
官庁。企業。防衛。それぞれの場所で集められた情報が、少しずつ重なり始める。
若者たちは、まだ知らない。その線の先に、どれほど深い闇が待っているのかを。
バラバラだった事実は、やがて――「点と点が、一本の線になる」
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