第7話 機内という密室
ある日の夕食後。仕事から戻った千鶴が、何気ない調子で話し始めた。
「訓練でね、 機内トラブルを想定したシミュレーションがあったの」
千鶴は気づかない。その一言が、父の中で何を揺り動かしたのかを。
彼女は、仕事用の分厚いマニュアルを開き、機体構造や安全装置について
淡々と説明し始めた。
それは、国際線クルーとして働く娘にとって、ごく当たり前の知識。
だが――宇野にとっては、雷に打たれたような瞬間だった。
閉ざされた空間、統制された空気の流れ、外部から遮断された密室に逃げ場はない。
介入もできない。
「……そういう仕組みなのか」 宇野は、静かに息を吐いた。
点と点が、はっきりと線になった瞬間だった。
その線の先にいるのは――山曽根。西村。天野。
戦争で人を殺し、戦後は人を踏み台にし、何事もなかった顔で権力の座に居座り続ける者達。
宇野は、胸の奥で呟いた。
――これで、届く。
――ようやく、あいつらに。
復讐は、空想でも衝動でもない。現実の構造を利用した、具体的な計画へと変わった。
―――――――――――― 次回予告――――――――――
計画は、次の段階へ進む。
特別便に乗り込むため、宇野が仕掛ける「内部からの接近」。
鍵を握るのは、信頼、肩書き、そして――“正当な理由”。
静かに扉が開き始める。
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