第4話 白骨が語る過去
――口封じという仮説
杉山栄一。その名は、宇野の記憶の奥底から、鮮明な輪郭をもって甦っていた。
彼は、当時12歳だった早苗を兵舎で襲った男。
天野に忠実で、命令どおりに宇野の身動きを封じ、雑務という名の拘束を押し付けてきた 部下でもあった。
さらに、秋山整備士にエンジン燃料タンクの細工をさせ、その結果、畑中少尉を死に追いやり、 宇野自身は片肺と右足を失った。
それらすべての出来事が、いま、一本の線でつながり始めていた。
宇野の頭の中で、ひとつの仮説が形を取る。
――杉山は、 天野・山曽根・西村らが 軍需物資を隠匿していた事実を知ってしまった。
――終戦を前に、「分け前」を要求した。
――そのため、 口封じとして殺された。
――遺体は、古舘村の山中に埋められた。
さらに、かつて耳にした噂が胸をよぎる。
「囚人の女が、 崖から転落して死んだので、 古舘村の村長・津田に頼み、 どこかに埋めさせた」
もしかすると――早苗の母を孕ませ、鬼火谷から突き落として殺したのも、杉山だったのではないか。
12歳だった早苗は、日本語を覚えてから、ぽつり、ぽつりと母のことを語るようになっていた。
「母は、ある夕暮れ…… 杉山によく似た兵隊に連れて行かれたきり、 二度と戻らなかった」
白骨は、偶然ではない。
それは、封じられた罪が、三十八年の時を越えて地上に姿を現した証だった。
―――――――――次回予告――――――――――――
白骨は、ひとつだけでは終わらない。
宇野は次第に、「消された者たちの共通点」に気づき始める。
――――――――――――――――――――――――――




