第2話―ダムが造られた理由-4人目の名前
数人の老人に、同じ問いを繰り返した。返ってくる答えは、どれも似たり寄ったりだった。
だが――その中のひとりが、ためらうように視線を落とし、ぽつりと口を開いた。
「あのダムが、
どうして“あの場所”に造られたのかは、わしらにも分からん……だがな…この村の出身で、
今は県議会の“ボス”になっとる津田弘毅さんの口利きがあったらしい――そんな噂は、
よう聞いとったよ」
宇野の胸が、静かに鳴った。
ダム工事が始まった当時――村中の男たちは人夫として動員され、女たちは工事現場の 弁当を作った。それで、村は、かつてないほど潤った。
「西村土木は、あのダムで相当儲けてな……今じゃ県内でも三本指に入る西村建設になっとる。
津田さんとは、今でも、べったりらしいがな」
西村土木。津田弘毅――宇野にとって、それは小さくとも、確かな「収穫」だった。
秋の夕陽に照らされた古舘村を、ゆっくりと後にする。
紅葉は、息を呑むほど美しい。だが――その美しさとは正反対の感情が、宇野の胸の奥で 渦を巻いていた。
――社会の闇に巣食う、どす黒いヘドロのような魑魅魍魎。
――そして、その犠牲となってきた、数え切れぬほどの善良な人々。
彼らのためにも――この4人。山曽根、西村、天野、そして、津田。
その存在を、白日の下に引きずり出さねばならない。
怨念にも似た思いが、宇野の心の奥底で、音もなく固まり始めていた。
―――――――――― 次回予告――――――――――
ダムに沈められた真実。
だが――消されたはずの過去は、別の形で浮かび上がる。
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