第8話 残された人々、つながる優しさ
――奥野が遺したものーー
奥野の妻・静江は、しばらく宇野夫妻の家に身を寄せていた。
だが、奥野が遺してくれた保険金と、静江名義でこつこつ積み立てていた預金をもとに、 近くの小さな建売住宅を購入し、ひとり静かに暮らし始めた。
それでも時おり、彼女のもとには“息子”のような存在が訪れる。
畑中清――防衛大学校を優秀な成績で卒業し、今は27歳。仙台の松島基地でパイロット としての訓練に励む、凛々しい若者となっていた。
また、17歳になった高校生の千鶴も、時間があれば静江を訪ねた。
話し相手になり、ささやかな家事を手伝う。
静江にとって、奥野が失った“家族の温度”を、わずかに取り戻す時間でもあった。
だが――
宇野の胸の中だけは、静かに冷えていく。
一連の経緯の中で、宇野には確信めいたものが芽生えていたのだ。
「4人」への疑念は、確信へ――暴くために必要なもの
宇野の中で形になっていった“確信”。
―東和電機産業の天野と帝都銀行が裏で結託し、墜落事故・国会での糾弾。 計画的に奥野工業の破綻を仕組んだ。ーそこには、山曽根康路の影もあったに違いない。
幼馴染であり恩人でもある奥野を騙し、自殺へと追い込んだ男・天野真。
その天野はまた、かつて自分と畑中を抹殺しようとし、結果として畑中清の父を死なせた 張本人でもある。
そして、軍需物資を隠匿していた101部隊の上官であった山曽根。
さらに戦後も闇を生き延び、今なお裏で糸を引く現・西村総業会長の西村勝男――。
彼らは、別々の人生を歩んでいるようで、実は一本の線で繋がっている。
宇野は考える。彼らの過去の悪行を世に暴くには、推測や告発だけでは彼らは倒せない。
“揺るぎない物証”、 言い逃れのできない“触れることのできる真実”が要る。
そのためには、まず101部隊の施設跡を特定し、そこに埋められた生物兵器の残骸を 掘り起こし、世に晒すこと。
それ以外に、彼らの過去を白日の下に引きずり出す方法はない。
宇野の視線は、現在から、過去へ、そして――闇の中心へと向けられた。
――――――――――― 次回予告―――――――――――――――――――
宇野は「101部隊の跡」を探し始める。
しかし、その行く手には――“消したい側”の影が立ちはだかる。
封じられた記録。 沈黙する関係者。
そして、誰かに監視されているという感覚。宇野は、決定的な手がかりを
掴むことができるのか。
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