第4話 融資「20億」という宣告
10日後の第2回面談。前回の顔ぶれに加え、森山常務が同席していた。
開口一番、森山は言い切った。
「当行で融資可能な額は20億です。担保物件はすべて根抵当権設定が条件になります」
あまりにも低い。奥野も宇野も、思わず顔を見合わせた。
落胆を隠せない2人に、佐伯融資部長が淡々と続ける。
「PW社は、御社と東和電機産業さんの2社を候補に挙げているわけですよね。
もし見積額で東和さんに負ければ、この融資は一気に不良債権化するリスクがありますから……」
奥野は必死に訴えた。
特許を取ったチタン合金鋳造技術は、東和より自分たちが上だ。PW社もそこを評価したからこそ声をかけてきた。
受注できれば返済計画は成り立つ。――せめて40億を、と頭を下げた。
一瞬の沈黙のあと、森山が口を開いた。
「社長の熱意と、これまでの取引を最大限考慮して、プラス5億。合計25億が限度です……。
これは“社長の夢を実現していただくため”の提案なのですが、東和電機産業さんと合同で受注されてはいかがでしょうか」
奥野も宇野も、その発想を持っていなかった。
森山は、さらに追い打ちのように言う。
「東和の池内専務と、当行の中山頭取は同じT大の同級生でしてね。ご紹介は可能です」
予想外すぎる展開に、この場で結論は出せない。
2人は一度持ち帰ると告げ、本店を後にした。
巨大企業・東和電機産業――「単独受注は不可能だ」
奥野は、防衛庁航空部の知人から、東和が自衛隊向けに戦車のキャタピラーや潜水艦タービンを納入している話は聞いていた。
だが、ジェットエンジン部品の実績は不明だった。
翌日、奥野は商社マンに電話し、東和の航空部門の情報を集める。
すると、次々と“規模”が見えてきた。
10年ほど前、国内線を飛ぶAND(暁航空)の整備会社を傘下に収めた頃から、大型航空機の時代を読んで研究開発を続けてきた。
戦後まもなく現社長の天野が立ち上げ、不況期に倒産寸前の企業を次々と買収。朝鮮特需を背景に急成長。
いまやグループ従業員8千人、年商1兆7千億円。
傘下の商社は米国やカナダの鉱物資源開発にも手を伸ばしている――。
奥野は幹部を集め、進むべき道を話し合った。
結論は一つだった。
「必要な資金調達ができない以上、単独受注は不可能だ。東和との共同受注に望みを託すしかない」
埼玉工場長の林が、慎重に付け加えた。
「その場合、東和が我が社にどんな条件を出してくるか、見極めが何より大事です。
東和は我が社のチタン合金鋳造技術に目を付けているはず。技術を最大の交渉カードにして、有利な条件を引き出すべきでしょう」
全員が林の意見にうなずいた。
奥野は帝都銀行の森山常務に連絡し、池内専務との面談を依頼する。
2日後。奥野は林と宇野を伴い、浜松町の東和本社を訪れた。
―――――――――――――― 次回―――――――――――
提示された“好条件”。
だが最後に現れた名前が、宇野の背筋を凍らせる。




