表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青い霧  作者: 田中元一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/51

第1話―③ 料亭で交わされた“位置変更” ――――位置変更という一言――――

数日後。筑後川沿いの料亭。

畳の上、向かい合ったのは、古舘村長の津田弘毅と、西村興業社長の西村少佐だった。

酒はまだ出ていない。最初から、空気が硬い。

西村は、単刀直入に切り出した。「ダムの位置を変える」

津田は、箸を取る手を止めた。

西村は続ける。「古舘村から四キロ上流――101部隊跡地が丸ごと沈む場所だ」

津田は息を呑む。言葉が、すぐには出なかった。

西村は、津田の反応など待たずに、指を1本ずつ折りながら条件を示していく。

条件という名の包囲網  

「一つ。工事着工は来年秋」

津田の胸が波打つ。“来年秋”――時間はある。だが、逃げ道もない。

「二つ。代わりに――翌5月の県議選で、貴様をトップ当選させる。選挙資金は、すべて俺が出す」

津田の喉が鳴った。村長として積み上げてきたものが、今、別の形に変わろうとしている。

「三つ。県議になった暁には、公共事業を“分かっている形”で回す。

県の要職、ボス県議――その買収も含めてな」

西村は淡々と言う。まるで、戦時中の作戦会議のように。

「四つ。工事が動くたび、西村土木から貴様へ“裏金”が流れる」

沈黙――津田は恐る恐る聞いた。

「……当面の運動費は、どれほど……?」

西村は答えず、カバンを開けた。分厚い札束を、音もなくテーブルに置く。

「当面の分だ」 さらに、もう一束。「足りなければ言え」

津田の目は釘付けになった。公務員の給与に換算すれば、10年分。いや――それ以上。

西村は、低い声で追い打ちをかける。

「県議トップ当選には、この三倍は要るだろう。年末までに、全額用意する。任せておけ」

津田の胸に、疑念が一瞬よぎる。なぜ、ここまでの金が……?

だが、その疑問は、すぐに消えた。

鬼火谷の道路拡張で掴んだ運命の糸が、

今ここで、実を結ぶのだ――

そう解釈した瞬間、津田の中で、最後の躊躇が薄れていく。



次回予告

津田は、ついに“覚悟”を固める。

ダム位置変更、県議トップ当選、そして――101部隊跡地の“永遠の水没”へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ