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青い霧  作者: 田中元一


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第5話 特別便の真相

便箋の文字は、さらに静かに、しかし逃げ場のない事実へと踏み込んでいった。

機内の天井に張り巡らされた空気循環ダクトの内部に青酸ガスを発生させる装置を仕掛けた。

作業は、最後尾ドア〈R5〉付近から天井裏へ上がり、時限装置とともに設置した。

青酸性ガスは、自分で生成したものだ。時限装置もまた、自作である。

その記述は、驚くほど淡々としていた。まるで作業報告書のように、感情は一切挟まれていない。

だが――それゆえに、千鶴の胸を締めつけた。

「……お父さんが……?」

声にならない声が、喉の奥で震えた。唇を噛みしめなければ、嗚咽が溢れてしまいそうだった。

父の手紙は、続いていた。

3人だけを、確実に殺害する方法を、長い時間をかけて考え抜いた。

ファーストクラスだけにガスを流し込むことはできないか。別の経路はないか。

あらゆる可能性を検討した。

だが、どうしても実現不可能だった。

結果として――罪のない多くの人々を、巻き添えにしてしまった。どれほど詫びても、足りない。

それでも――あの3人を生かしておけば、さらに多くの犠牲が生まれる。そう判断した。

それが、自分が下した最終的な結論だった。

千鶴は、便箋を握りしめたまま、動けなかった。

父は、正義を語らなかった。自分を正当化もしなかった。

ただ、選び、実行し、その責任を一身に背負うと書いている。

そこには――赦しを乞う言葉すら、なかった。

―――――――――――次回予告―――――――――

父は、ひとりではなかった。

この計画を知り、受け入れ、それぞれの覚悟をもって関わった

人々の存在が、明かされる。

復讐は、一人の狂気ではなかった。

――――――――――――――――――――――――――


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