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青い霧  作者: 田中元一


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第1話―③ 墜落と生還/そして「君は誰の子か」

父は、淡々と書き綴っていた。自分は、当時九州・古舘村にあった 101部隊 に所属していた。

上官は、山曽根康路。西村勝男。その部下の天野真。やがて彼らは、化学兵器と軍需物資を横領し、

それを知った者たちを「処理」する段階に入った。

私を口封じのために命じられたのは、「化学兵器のテスト飛行」。

それは、帰還を前提としない自殺行だった。

帰路――機体は細工されており空中で制御を失い、海へ墜落した。

戦友は死亡。自分だけが、生き残った。右肺と右足に、生涯消えない障害を負いながら。

千鶴は、文字を追うたびに胸が締めつけられた。

終戦後、父は幼馴染・奥野忠雄の会社に身を寄せた。

そして、さらに10年後――衣菜は、婚約者に捨てられ、絶望のあまり、川へ身を投げた。

それを救ったのが、奥野忠雄だった。

そのとき、衣菜はすでに身ごもっていた。――その子が、君だ。

千鶴の手が、震えた。

衣菜は、自分を助けた若い兵士の顔を忘れていなかった。

朝鮮人である衣菜。そして、その子が背負うことになる運命。

父は、そこで決意したという。

――衣菜と結婚する。この子を、自分の娘として育てる。

そして、名を捨てた。斎藤和夫 から宇野清二 へ。

千鶴の頬を、静かに涙が伝った。

自分の誕生の裏側に、こんなにも深い罪と選択の物語があったとは――。

だが、手紙は、まだ終わっていなかった。

――――――――次回予告――――――――――

父の文字は、次第に 鋼のような決意 を帯びていく。

「私は、彼らを許すことができなかった」

父が歩んだ、復讐へ至る心の道筋が、明かされる。

――――――――――――――――――――――――


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