第2話―④ 村役場火災と「何とか野」と名乗る老人
下毛ダム湖で起きた、魚の大量死。枯葉剤原料が埋められているという噂。
そして、それに対する県の不可解な沈黙。
横尾は、再び古舘村役場を訪れていた。
応対した担当者・井上は、しばらく逡巡したあと、昭和32年に起きた村役場火災について語り始めた。
夏祭りの夜。にぎわいの最中、村役場は突然炎に包まれ、全焼した。
焼け跡から発見されたのは、村長の妾と、渡り人足とみられる男の遺体。
事件は、「失火」 として処理された。そして同時に――下毛ダム関連資料は、すべて焼失した。
あまりにも都合のよい一致だった。
さらに井上は、思い出したように、こんな話を付け加えた。
「つい最近……ダムのことを調べに来た人がいましてね」
金山で働いていたという老人。名前は、「何とか野」と名乗ったらしい。
右足が不自由で、年の頃は、80歳近く。
その老人は、役場で執拗に問いただしたという。
──なぜ、金山の廃坑を ダムの底に沈めたのか──あそこに、旧陸軍の研究施設が
あったのではないか。
単なる好奇心とは思えない、具体的すぎる問いだった。
話を聞き終えた横尾は、胸の奥で、はっきりとした感触を得ていた。
JNL特別便事件。鬼火谷。下毛ダム。これらは、どこかで必ず、つながっている。
しかも――過去を掘り起こそうとしているのは、自分だけではない。
――――――――――― 次回予告――――――――――
過去を追う者。それを消そうとする者。
水底に沈められた真実は、果たして守り切られているのか。
“先に辿り着いた男”の正体が、物語を大きく動かす。
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