第2話―① 郷土史研究家・横尾の調査
下毛ダム計画の不可解さを、独自に追っていた人物がいた。
郷土史研究家の横尾である。
調査のきっかけは、中学時代の同級生であり、現在JNL国際線チーフパーサーを務める
雨宮春樹からの、一本の電話での依頼だった。
「下毛ダムについて、 何か分かることがあれば調べてほしい」
横尾はまず、古舘村役場を訪ねた。
だが、担当者の井上は、あっさりとこう答えた。「ダム関連の資料は、すべて県に移管されています」
村の古老たちにも話を聞いたが、返ってくる答えはどれも似通っていた。
──県から突然、そう言われた。工事費が安くなる。税金の無駄遣いを防げる。
先祖伝来の田畑を守れる。補償金も出る。
結果として、村人たちは「損をしていない」。
だが、横尾の胸には、小さな違和感が残っていた。話が、あまりにも 都合よく整いすぎている。
反対運動は起きなかったのか。説明会で、異論は出なかったのか。
なぜ、予定地変更は即座に受け入れられたのか。
「資料を見れば、何か分かるはずだ」そう考えた横尾は、次の行動に出る。
真相を求め、横尾は熊本県庁へ向かった。下毛ダム計画を所管していたはずの、県の資料室。
そこに、すべての答えが残されている――はずだった。
――――――――――――― 次回予告――――――――――
県庁の資料室で、横尾が目にしたものとは──
「下毛ダム」の項目だけが、なぜか“存在しない”。
消されたのは、単なる書類か。それとも――
消さなければならない「過去」だったのか。
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