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青い霧  作者: 田中元一


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第2話―② なぜ「書けなかった」のか

亀井と安元医師が、菅野修二の異常な死後硬直を検死意見書に記さなかった理由。

それは、決して怠慢でも、見逃しでもなかった。

前提は、あまりにも強固だった。全員の死因が「青酸性毒物による中毒死」で統一されていたこと

死亡推定時刻も「ほぼ同一」とするのが公式見解だったこと。

この2点を崩すことは、若手研修医にとって、自らの将来を賭ける行為に等しかった。

もし誤診であれば――法医学の世界では、致命的だ。

実際の検死作業では、村中教授と先輩医師たちが中心で、死亡事由と推定時刻を記録していった。

研修医である亀井や安元たちの役割は、その後ろに付き従い、犠牲者一人ひとりの左胸に            氏名・年齢・座席番号を書いた札を貼る補助作業が中心だった。

意見を述べる立場ではない。異議を唱える権限もない。

そして今となっては――すでに荼毘に付された菅野の遺体を、改めて検証することはできない。

だが。優秀と評判の亀井と安元、2人が同じ異常を確認している。

それは、偶然ではない。

桜井は、はっきりと確信していた。この違和感こそが、特別便事件の核心に迫る極めて重要な      手掛かりなのだと。

―――――――――― 次回予告―――――――――――――

次に浮かび上がる疑問は、ただひとつ。

なぜ、菅野修二だけが早く死ななければならなかったのか。

彼は「被害者」なのか。それとも――

――――――――――――――――――――――――――


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