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青い霧  作者: 田中元一


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第2話―➀ 桜井の推理―「死後9時間」の違和感

その夜。

隅田川を見下ろすマンションの一室で、桜井は煙草をくゆらせながら、亀井から聞いた言葉を       何度も反芻していた。

思考の中で、事実だけを箇条書きにする。

なごみ老人ホームと櫻老人ホームの女性全員が 下半身に毛布を巻いていた

そのうちの5人は、数珠を手に握っていた。

そして―― 菅野修二だけが、他の犠牲者より 死後硬直の進行が約9時間早い

吐き出した煙が、ゆらゆらと空中に漂い、やがて消えていく。

桜井は、その煙の向こうを見つめながら、点と点を結ぶ「接点」を探していた。

同じ機内。同じ環境。同じ時間帯。にもかかわらず、死後硬直にこれほどの差が生じるだろうか。

死亡推定時刻には、確かに個体差がある。体格、年齢、持病、体温――誤差は生じる。

だが、9時間―2倍近い開きは、さすがに説明がつかない。

桜井は、ゆっくりと計算する。バンクーバーから羽田までの飛行時間は、10時間10分。

もし、菅野の遺体が「死後15時間相当」だとすれば――。

結論は、ひとつしかない。彼は、離陸後ではなく、離陸前、あるいは出発直後には

すでに死んでいた。

そう考えるほうが、よほど自然だった。

―――――――――――― 次回予告――――――――――――――――――――

なぜ、医師たちはこの決定的な違和感を検死意見書に書かなかったのか。

そこには、若き研修医たちが背負っていた切実すぎる事情があった――。

―――――――――――――――――――――――――――――――――


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