イキシアのように。
ランスロットメインのお話です!
何故アレスと呼ばれたくないのか…
はっきりしちゃいます!!(怒られてます)
言葉にならないルイをアフロディーテに預け、俺は父上の部屋に入る。
「…すみません、ゼウス様、“特異点”を、天照大御神に、奪われました。」
俺は深く頭を下げる。…天照大御神、あの女を許すわけがない。アポロンの心が弱ってしまっては、現象を直せないじゃないか。…悔しいが、取り戻すということをしなければ。
「大丈夫さ、お前が悪いわけじゃないからな。ほら、こっちに来い。」
父上が手招きをし、俺は父上の近くに行く。すると、くしゃくしゃと頭を撫でられた。今までのことを忘れるかのように。優しい手で。
「お前は強がりすぎなんだ、たまには甘えろ。…小さい頃から。」
クスッと笑われていても、軍人である限り甘えられないんだ。…父上も昔のことがあるだろう。なのにこんなに余裕に笑っていられるくらい強いんだ。
「父上。俺は、…父上と兄上を目指しています。誰より強く、なりたいんです。女一人守れない俺は、“アレス”と呼ばれる筋合いは_…」
幼名であるランスロット。俺はまだ小さいし、厳しく言うと、弱い。…次男。所詮俺は二番目なんだ。…俺はこの家に生まれたのは、二番目だった。
***
「兄さん!くらえっ」
晴天とも言える空の下で、俺はヘパイストス兄さんと剣でやりあっていた。ヘパイストス兄さんは、俺より四つ上。小さい俺に対しても、手加減は全くしない、強い兄さんだった。
「ランスロット、まだまだだな。」
軽いとはいえない剣を、軽々しく振り、空気さえも切れてしまっているかのように魅せつける兄さんは、憧れの存在でもあった。
「ランスロットじゃない!!俺はアレスだ!そろそろランスロットって言うな!」
俺はランスロットと呼ばれるのがとても嫌いだった。…“アレス”と認められていないようで。
「“弱い”お前には、まだアレスと言われる筋合いはない!…たぁぁぁ!!」
「っう!!」
まだ、不老不死では無かった俺らは剣はただの木の棒だったけれど。…俺は勝てたことがなかった。
「おめでとうヘパイストス、お前は国外の警備隊大佐だ。これはとても誇りが高いことだ。…改めてこの剣を_」
王冠と、王家に伝わる洋服、そして武器。…王家に伝わる武器で身を切ると、不老不死になることが出来る。…俺は兄にいってほしくなかった。
「嘘だ!!兄さん!!なんで、なんで行っちゃうんだよ!…たった一人の兄さんなのに!…俺の、俺の…」
まだ俺は11歳で何もかも知らなかったけど。…今考えると、これ程と言われる光栄なことは無かったんだ。でも、俺のたった一人の兄貴…憧れの存在に行って欲しくなかった。
「ランスロット…。俺は…。…“アレス”が立派になって、俺に勝てるようになるくらい強くなったら、戻ってくるさ。だから、それまで強くいてくれ。」
小さい俺の頭にポン、と手を置く。大きくて、優しさが溢れる兄の手が。
「…ま、待ってろよ、いつか、越えてやるから。」
俺は泣きそうになったけれど、手を斬り、そして同時に不老不死となる兄を見ているだけで、立派だと思えてきた。
兄さんの手から溢れた花は、クリスマスローズだった。…毒のある蔦はなく、真っ白な花が一面に舞った。
花言葉は、兄さんらしくない“私の不安を和らげて”だったけれど、…
「くよくよすんな!!俺の、俺の一人だけの兄さんなんだからな!!」
そう言うと、「そうだな」とだけ言って、キンモクセイの花が舞踊った。
まるで、旅立ちを祝福するかのように、くるくると。
兄さんが旅立って四年が経ち、俺も齢15になったので不老不死の行事が行わた。
「お前を…この国の軍人として新任する。おめでとう。“アレス”…」
着なれない黒軍服に包まれた俺は、父上が昔戦で使っていたクリスタルソードを手に取った。…それでも。
「父上、アレスと呼ばないでください。」
式はまだ途中だったけれど。…俺はなんとしてでもそれは譲れなかった。
「父上、…兄さんがいません。兄さんは、まだ俺を本物のアレスとして認めたわけではないんです。…だから。」
決して許されることではない。軍人、いや、軍神として戦う身であるのに。情けないと知っていても、小さな頃の約束は破れなかった。
「わかった。…ランスロット。もっと強くなれ。そして、この国の為に。」
俺は、一つ下のディオニソスと、二つ下のアテナが見ていることだけで嬉しかった。…2人、いや、家族を守れるように。国を守れるように。…いつかは世界を。
「さぁ、誇り高き軍人となれ。」
その言葉を受け、俺は躊躇わず腕を斬る。イキシアの花束が散る。
この先、何があっても守る。
守り続ける。
ディオニソスが不老不死になり、アテナがいち早く不老不死になっていたこともあり、少し落ち着いた時に庭のエーデルワイスが咲いた。
これは母が残した最後の筐だった。
「兄、…咲いてきたな。」
「あぁ、妹。」
たわいもない会話、今は二人でしかできない。ディオニソスは魔法図書館の館長をしているし。ヘパイストス兄さんは帰ってこない。父上は忙しいし。
すると、物音が後ろから聞こえてきて、不思議な感じになった。
「…ねぇ、楽しいコトしない…?きっと面白いよ〜。」
紫色のツインテールの女、黒い翼の、足枷がついていて、妙に変だと思った。
「誰だお前、おい、花の中に入るな」
いきなり来た女は、すたこらと花の中に身を潜めた。その場に座り、ブツブツと言い始めた。
「生き返らせちゃおっか」
「何言ってるんだ!そこからでろ…!」
アテナが止めていても、何も反応はなかった。狂った表情で、俺らは何もすることは出来なかった。
「蘇生…!して」
まさか、とは思うが。…この姿は文献に見覚えがあった。
『ペルセポネ』
ありとあらゆる命を生き返らせる。
死神。普段は牢屋に監禁されていて外には出ることが出来ない。
と、見た覚えがある…、それでも。
「やめろっ!!」
その声は届かなかった。
くく、と笑って、何処かへと消えてしまったのだ。
俺達が見ると、そこには横たわった、黒髪のとても髪の長い女性がいた。
「…あらぁ、ここは…」
数年ぶりに聞いた声に、俺もアテナも驚きの方が強いが、涙が出そうになった。
俺らを生んだ、母親だったからだ。
「…は、は、うえ…」
アテナは言葉に出来なく、その場にうずくまっていた。…死人を生き返らせようなど、あってはならないことだ。
…これも俺が弱かったからだ。…他人を傷つける勇気もないからだ。
…それから母を見る度、強くならなくては、と思い練習を飯も忘れるくらいしていた。
「アレス…」
「アレスと呼ばないでください。」
「そ、そぉ…?」
寂しそうな顔をしないでくれ。…辛くてしょうがないんだ。その顔を見るのは。
「ランスロット…」
声も聞こえなくなるくらい、考え込んでしまうくらい、俺は情けないんだ。向ける顔もない。
「ランスロット…」
「失礼します」
「ランスロット!」
ぱしん、大きな音が廊下に響き渡った。真剣な顔の母上を見て、俺はどうしたらいいのか分からなくなった。
「練習、練習、練習、そんなことで本当に強くなれると思ってるの。」
目をカッぴらいて、首えりを掴まれたことなんて初めてだった。
「母親の気持ちを…みくびらないで…。たまには甘えてもいいのよ。ランスロット…。」
…今まで俺は違っていたのか。強くなることだけ、兄さんを超えることだけを願ってた俺が。こんなふうに家族を悲しませたいわけじゃないだろう…。
顔を上げてくれ。…俺は、俺はまだ、言葉がうまくない。思ってもいないことが口に出てしまうこともあるんだ。…頼む、
「泣かないでくれ…」
俺より小さな母親を引き寄せ、抱きついた。嫌いな訳では無いし、甘えたくなくて甘えてない訳では無い。
「強くなるから、だから、その時に………を許してくれ」
「わかった」
そう言うと、母上は走って自室に戻った。
俺が考えている未来はそんな簡単にはうまくは行かないけれど。
…小さい一歩からでも、前に進んでいきたい。
小さい頃から頑固なのは変わらないな、と言われただけで許しを貰い、ルイと合流しようとしている。
あいつは俺よりも強い何かを持っているから…。残念ながら、アポロンって呼んでしまうんだな。
「ら、ランスロット…」
「そこにいたのか、アポロン…」
何故かアフロディーテとベランダにいたアポロンは、国にバリアが貼られていることに今更気づいたらしく、とても興味津々で見ていた。
「おい、アポロン。それは俺の兄さんが作ってるんだ。」
「ふーん、イイじゃん。そんな強い兄さんがいて。」
「俺の、唯一の兄だ。」
イキシアの花が香る。
『誇り高い』
今はそれを胸に。国を守るために。強く。強く。
“アレス”という名前にふさわしくなるために。
さぁ!!強くなっていく!!




