ナズナ
ルイくん目線のお話でーす!
アポロン、頑張れ!
俺は今、何故かわからないけれどランスロットに連行されて廊下にいる、よく分からない廊下でひたすら歩いてる…。
…無理やり、と言われるくらいに付いてきた部屋には、とても綺麗な女性と、歳をとったお爺さんがいた。
「ランスロット君、その方は…」
「“アポロン”だ」
そう聞くと、寝転がっていたお爺さんが起き上がって、こちらを見た。三人から見られてると、本当に気まずい。…あと何かやったのかなって思う。
「とりあえずあっちへ行くぞ、アポロン」
「ルイでお願いします…」
名前をなかなか覚えてくれないランスロットだけど、なんで自分のことをアレスって呼ばれたくないんだろう?よく分からない。
「こんにちわ〜!裏番担当のアフロディーテですっ。」
とても綺麗な女性で、雰囲気的にほわほわしている。でも、多分この人はランスロットが好きなんだろうなぁ…さっきから隙あらばランスロットの方しか見てないし…。
「おぉ、アポロン、待っておった、」
年寄りのお爺さんはアポロンと呼び、ちょいちょいっと手招きをした。この男性の雰囲気は、何処と無く祖父に似ていた。すぐさま駆け寄り、隣に行く。
「ヘリオス殿、私目から説明いたした方がよろしいでしょうか。」
いやいい、とお爺さんが言うと手を握られた。このお爺さん、俺と同じ紋章がある…?、そう思った途端に頭中を映像がよぎった。
気づいた時、俺は全く知らない所だけれど、そこに居た。そこはすごく平凡で、色々な真っ白な建物が達交う所だった。
遠くから俺の小さな時の声が聞こえてびっくりしたけれど、とりあえずその場しのぎに隠れるところを探した。
遠くから見てもわかるくらい大きな葬祭で、とても大勢の人が並んでいた。…そう、俺達は昔から親がいなかった。理由…それは、“事故”だった。これは両親の葬祭だった。
大きな遭難事故が海で起きた。勿論、船諸共沈んでしまって帰還者は誰ひとりいなかった。亡骸があるのもほんのわずかな人しかいなかった。まだ俺らは2歳で何もわからなかった。死という重さも、…親という温もりも。
周りからは俺が見えてないみたいだな、ステルスってことか?…過去は変えられないってことか。
「ルイ、ルナ、大丈夫だよ、怖がらないで」
怖がり、泣き続けている俺達をなだめるのは突然姿を消した、大好きだった祖父だった。祖母はとっくの昔に他界していて、再婚はしないと言い張ったそうだ。父の父で、父は一人息子だった。
「おとぉ、おとぉさん、」
ルナと俺は言葉も口に出せない年頃であり、理解できない年頃であるため、遠くから見ていても、今ではこんな早くに亡くなっていたんだなと改めて実感してしまう。
「…大丈夫。大丈夫だよ」
必死になだめる祖父。その手には、俺と同じ紋章があった。この紋章…俺と父親しかないはず…?
そんなことを考えていると、映像がふと変わった。…俺達の祖父が突然俺達の前から消えた時の話だ。
「おじいちゃ、おじいちゃー?」
必死に祖父を探すルナ。今日ルナはピアノの発表会だった。この時から俺らは未来が変わったんだ。祖父がいなくなった瞬間、ご飯も食べられない、お風呂もろくに入れない生活になってしまった。
近所の遠い疎遠な親戚が、引き取るという話を出したが、その代わり家を売るぞと言った。祖父もいないため、俺らは操られるように思い出の家を売り払われた。
その後、その親戚は夜逃げをし、いつの間にか俺らは公園に捨てられていた。そんな所を通った神父さんに助けられたのだ。俺達は。
思い出していると、映像がぷつりと変わる。“あの世界”に、祖父が立っていたのだ。
「ニンフが何をしたっていうんだ。俺の妻は、死にたくて死んだ訳では無い!、セレーネ、答えろ。ヘーリアデスまで巻き込んだ理由を教えろ。」
恐らくニンフは祖母である。本当の名前は教えてはくれなかった。いつも話をしようとすると違う話に切り替えられていたし。…そして、セレーネはきっと祖父の妹だ。異常なブラザーコンプレックスで、祖父と結婚するのが夢だったらしい。
…ヘーリアデスは父だ。…巻き込んだとは、どういう事なんだろう。
「ニンフは弱かったの…。なぜあんな女と結婚したのかしら。兄さん、いえ、ヘリオス。ヘーリアデスまで死んで、どうするつもりなの?」
「好きで死んだわけじゃないだろ!お前いい加減に…。お前の仕業だろ?!」
お前の仕業。…という事は、叔母が俺の父を…という事だろうか。
「全てニンフのせいにしなさいよ。それとも、あなたの愛する孫を、ここに巻き込むの?ヘーリアデスが亡くなっちゃったし、来るしかないわよね。太陽神さん。」
「…、死の選択をさせるな」
その言葉が気になってしょうがなくなったが、そこで映像は切れた。ふと気づいた時、この世界に戻ってきていた。
優しく微笑む、お爺さん。この紋章が主張する。『また会いたかった。』と。俺は、祖父だと思うと突然涙が流れてきた。まさかこんな事情で祖父がいなくなっただなんて知らないだろ…。
ずっと憎んで育ってきた俺らを許して欲しい…。と言うか、謝りたいんだ。ごめんなさいって…。
そして、あの言葉の意味を知りたいんだ。『死の選択をさせるな』。
「男が泣くな、顔を上げろ。」
肩をぽんと叩いてくれたランスロット。ランスロットは空気を読んでくれたのか、アフロディーテと外へ出ていった。ドアが閉まる直前、優しく微笑まれたのは幻影ではないのか?
「じっちゃん。ごめん。俺…何も出来なくて」
「良いんだ。俺はお前にまた会うためにこの日まで生きてきたんだよ」
ほっほっほっと相変わらず笑う祖父に寂しさと安心感をもてた。
「あと、じっちゃん。…死の選択をさせるなって、どういうこと…?」
「こうさ。こんなことを言ったらどうする。…お前の祖父が不老不死で、お前の親が不老不死だったと言われたら。」
…ふ、不老不死…?で、でも父は死んだ、父は死んだじゃないか。
「今、父は死んだじゃないかと思ったんじゃないか?」
ビンゴ。
「えっ、…なんでわかったの?」
「お前のおじいちゃんだぞ!、お前の心の中くらいならわかるさ。」
声を荒らげて笑うのは父とは正反対だった。父はクスクスと笑い、大笑いで笑うとなるといつも高笑いだった。母と一緒に高笑いをしていたのが蘇る。
「いい事、…いや、悪いことを教えてやろう。不老不死は、不老不死なら殺せるんだ。…つまり、お前の父親は俺の妹に殺されたんだ。」
さっきの会話からはそう察せたけれど、…?水難事故なのに…。
「詳しく知ってしまうと、お前の未来が不安になる。…そして言わないといけないことがあったんだ。…お前はアポロン。太陽の神だ。」
だから、か。俺がアポロンだってことは。…才能がない…?、それは才能が無いんじゃなくて、神の加護である“力”が無いんじゃないのか…?!ルナは太陽神の子供だけれど、月の女神からの加護は無い…!
「そうだ。我が孫よ。月の女神の加護は俺の妹であるセレーネからの余り才能にも達しないんだ。それでも、ルーナは生き続けているんだ。ルナと共に…っごっふ」
「じっちゃん?!どうかしたのか、体調が悪いのか?」
急に青ざめる顔、そして苦しそうな吐息、話してもいられないくらいだった。
「…頼む。新しい“太陽神”よ。我の力を継ぐんだ。そして、この弓矢で俺を貫け…」
その言葉とともにじっちゃんは俺に、金色に輝く弓矢と弓を渡してきた。
「そんなことできるかっ!、じっちゃん、なんでそんなこというんだよ!ダメだろ、なぁ、なぁ!」
「…呪いなんだ。セレーネからの、呪いなんだよ…。だから早く、これで手の紋章を切って、心臓にも突き刺すんだ、…これが最後の願いだ、ルイ。そして、後に自分の手のひらを切れ。…そして出てきた花を食べろ。…後は、あとは任せた、ルイ…。」
ルイ。そう呼ばれた俺は、泣きそうだったけれど、ランスロットの言葉を思い出して、泣かなかった。己の愛する人が亡くなったとしても、祖父が泣かないように、俺も強い人間でありたい。…いや、不老不死でありたい。
祖父の体からは、ナズナの花びらが舞散った。『任せた』という最後の言葉、ナズナの花言葉、あなたに全てを任せます。
期待に応えなきゃいけない。俺は強い人間になりたい。じっちゃんみたいに。自分を誇りながら最後を終えたい。
…俺が死の選択をしなかったこと。
「アポロン、ヘスティアから伝言だ。森が夜になったらしい。女の身が危ないかもしれん。行くぞ。」
_きっと、未来に繋がる。俺はまだ負けられないみたいだ。
まだ負けられないですね!頑張ろう!




