第五章 最強受付嬢、魔族を拾う①
アルヴェリア王国の王都。
城壁の外れに広がる街道を、一人の女性が歩いていた。
身体の線を隠すゆったりとした外套。その頭には、外套と一体になったフードが深くかぶせられている。
フードの奥に隠された長い暗い朱色の髪は、外套の内側にまとめられて、そこから覗く瞳は、トパーズを思わせる黄金色が月明かりで怪しく輝きていた。
女性は周囲を警戒しながら、街道に残された痕跡を追っていた。
踏み固められた土。
道の脇に生い茂る草を押し倒した跡。
そして、荷馬車の車輪が深く刻んだ轍。
どれも見逃さないよう、慎重に確かめながら歩を進める。
「……この先じゃな」
女性は小さくつぶやいた。
数週間前、彼女は故郷を追われた人々とともに旅をしていた。
老人、怪我を負った男たち、そして大勢の女性や子供たち。
彼らは住む場所を失い、明日の食事さえままならない境遇にあった。
それでも、彼らは彼女を仲間として受け入れてくれた。
食事を分け、寝床を譲り、時には他愛もない話で笑わせてくれた。
彼女の正体を知らなかったからこそ、彼らは余計な遠慮をせず、自然に接してくれたのかもしれない。
だからこそ。
彼らが連れ去られたと知ったとき、彼女は自分がその場にいなかったことを悔やんだ。
何もできなかった自分への怒りもあった。
しかし、それ以上に――彼らを見捨てることなどできなかった。
「待っておれ。必ず、助けるからの」
フードの端を押さえ、女性は歩く速度を上げた。
相手は奴隷商人。
しかも、王都の近くで人をさらうような連中だ。まともな商売をしているはずがない。
だが、彼女には一つの考えがあった。
自分から捕まれば、連中の拠点まで連れていかれるかもしれない。
そこで居場所を突き止め、隙を見て捕らわれた人々を救い出す。
危険な賭けであることは承知していた。
自分の力を考えれば、並の人間に後れを取ることはない。
しかし問題は、敵の人数も拠点の規模もわからないことだった。
一人で動く以上、慎重に情報を集める必要がある。
女性は轍を追い、王都へと急いだ。
その足取りに迷いはない。
◇
王都・冒険者ギルド。
「ルナちゃん、そっちの荷物は大丈夫?」
「うん! こっちは平気だよ、ママ!」
「女騎士ちゃんは? 無理して重いもの持ってない?」
「大丈夫です。これくらい、騎士団で扱っていた装備に比べれば軽いものですから」
「そういう問題じゃないのよぉ。女の子なんだから、無理は禁物!」
「マリアさん。私は騎士です」
「あら、騎士だって女の子でしょう?」
「……もう、いいです」
女騎士は小さくため息をついた。
ギルドの受付嬢となったマリアには、日々さまざまな依頼が持ち込まれる。
魔物の討伐、薬草の採取、護衛、荷物の運搬。
中には冒険者を雇うほどではないものの、人手が足りず困っている商店からの依頼もあった。
今回引き受けたのは、商店街の品物を数か所に届けるという簡単な配達依頼だった。
荷物は日用品や保存食が中心で、危険もほとんどない。
たまにはこういう仕事もいいだろうと、マリアはルナと女騎士を連れて街へ出ていた。
「それにしても、ママと一緒にお仕事するのって楽しいね!」
ルナは尻尾を揺らしながら、嬉しそうに笑った。
ルナガルムという魔獣の少女にとって、王都の街並みはまだまだ珍しいものばかりだ。
軒先に並ぶ色とりどりの果物。焼きたてのパンの香り。店先で客を呼び込む商人たちの声。
歩いているだけでも、見て回りたいものが次々と見つかる。
「ふふっ。そうでしょう? お仕事も楽しくやらなくちゃねぇ」
「うん! あ、あそこのお店、いい匂い!」
「こらこら。寄り道は配達が終わってからよ」
「はーい!」
元気よく返事をするルナ。
その様子を見て、女騎士も自然と頬を緩めた。
騎士団にいた頃は、任務といえば警備や訓練、時には命の危険を伴う戦闘ばかりだった。
こうして誰かと他愛のない会話をしながら街を歩く時間は、思っていた以上に心地よい。
もっとも。
「マリアさん、そちらの荷物は届け先が反対方向です」
「あら、そうだった?」
「先ほど確認したばかりですよね!?」
「大丈夫よぉ。街の景色を楽しみながら歩けば、どこだってすぐよ!」
「地図を無視して歩く理由にはなりません!」
マリアの方向音痴に振り回されることだけは、どうにも慣れそうになかった。
そんなやり取りをしながらも、三人は順調に配達を済ませていった。
残る荷物は、王都の外れに近い商店へ届ける保存食だけだ。
「次で最後ですね」
「ええ。これが終わったら、お昼にしましょうか」
「やったぁ! ルナ、お肉が食べたい!」
「あら、いいわねぇ。でも野菜も食べないとダメよー?」
「……マリアさん、依頼の報酬が入る前から使い道を決めないでください」
「細かいことは気にしないの!」
マリアは胸を張った。
その姿に、女騎士はまたもため息をつく。
けれど、その表情はどこか柔らかかった。
やがて三人は、王都の中心部から少し離れた通りへとやって来た。
建物の造りは古くなり、道幅も狭くなっている。
人通りは減り、商店の数も少なくなっていた。
女騎士は周囲に目を配りながら、ふと足を止めた。
「……マリアさん」
「なあに?」
「この先の通りですが、配達が終わったら、できるだけ大通りへ戻ってくださいね」
「どうして?」
女騎士は、進行方向の脇にある細い路地へ視線を向けた。
「この通りを一本裏へ入ると、貧民街につながっています」
彼女の声が、少しだけ低くなる。
「もちろん、貧民街に住んでいる人たちが悪いというわけではありません。ただ、治安の悪い場所もありますし、最近は子供や旅人が行方不明になる事件も起きているそうです」
「まあ……」
マリアは路地を眺めた。
「ですから、絶対に勝手に入らないでください。何かあれば、必ず私に相談してくださいね」
「わかったわぁ」
「本当にわかっていますか?」
「もちろんよ。あたし、約束は守る女ですもの!」
「……でしたら、よろしいのですが」
女騎士は念を押すようにマリアを見つめた。
隣では、ルナが不思議そうに首を傾げている。
「貧民街って、そんなに危ないの?」
「場所によります。ですが、今は行方不明事件の調査もありますから、無用な危険には近づかない方がいいでしょう」
「そっかぁ……」
ルナは路地の奥を見つめ、それからマリアへ視線を戻した。
「じゃあ、今日は寄り道しないで帰ろうね、ママ!」
「ええ、そうしましょうねぇ」
マリアはにっこりと笑った。
そのとき。
少し離れた街道の先で、フードを深くかぶった女性が路地に入っていくのが見えたのだった。
「……来たわね」
彼女を追う様に数人の男たちが歩いて着いて来ていた。
荒っぽい身なり。腰には剣。目つきは悪く、周囲をうかがうように視線を巡らせている。
女性は、彼らの様子を注意深く観察した。
貧民街を目立つ様に歩き回っていた際に、何度か見かけた顔だ。
おそらく、連れ去られた人々に関わっている連中だろう。
女性はフードの端を押さえ、か弱い旅人を装うために肩を落とした。
男たちが近づいてくる。人数は5人。
「おい、お嬢ちゃん。こんなところで何してる?」
「道に迷ってしまって……」
女性は声を震わせ、怯えたように一歩下がった。
男たちは顔を見合わせる。
「へえ。そいつは災難だな」
「俺たちが案内してやろうか?」
「い、いえ、大丈夫です……」
女性は男達から怯えて距離を取る様に下がった。
男の一人が彼女の腕をつかむ。
その瞬間、フードの奥で黄金色の瞳が冷たく細まった。
――まずは、これでよい。
ここで抵抗して騒ぎを大きくする必要はない。相手の拠点まで運ばせれば、目的に一歩近づける。
しかし、男たちの一人が、彼女の腕をつかんだまま下卑た笑みを浮かべた。
「へへっ、いい女じゃねえか。こいつは高く売れそうだ」
女性は内心で眉をひそめた。
どうやら、思っていた以上に品性のない連中らしい。
だが、今は我慢だ。
拠点にたどり着くまでは、計画を崩すわけにはいかない。
そう考えていたときだった。
「ちょっと、何してるのそこのアンタたち!」
場違いなほど明るい声が、街道に響いた。
男たちが振り向く。
そこには、長い黒髪をなびかせた大柄な人物が立っていた。
黒いドレスから伸びる鍛え上げられた太い四肢。整えられた化粧。耳元には揺れるイヤリング。
その隣には、獣耳と尻尾を持つ少女と、金髪を一つにまとめた女騎士がいる。
女性は一瞬、言葉を失った。
男たちも同様だった。
「な、なんだ、てめえは……」
「あら、質問に質問で返すの? お行儀が悪いわねぇ」
マリアは頬に手を添えて、小さく首を傾げた。
「その子、嫌がってるじゃない。手を離しなさいな」
「うるせえ! これは俺たちの獲物だ!」
「獲物?」
マリアの笑みが、ほんの少しだけ深くなる。
「まあ。人間を獲物呼ばわりするなんて、ずいぶんと趣味が悪いのね」
「殺されてえのか!」
男が剣を抜いた。
マリアは、あらあら、と呆れたように息を吐く。
「せっかくのいいお天気なのに。物騒なことはやめておきなさいな」
「黙れ!」
男が剣を振り上げた。
その瞬間、マリアの隣にいたルナの尻尾が、ぴたりと止まった。
先ほどまで楽しそうに揺れていた尻尾が、まるで別の生き物のように静まり返る。
ルナは、男がマリアへ剣を向けたことを確認した。
そして。
「……ねえ」
普段の明るい声とは違う、低い声が漏れた。
「今、ママに何をしようとしたの?」
「は、はあ?」
「ママに剣を向けたよね?」
ルナの瞳から、すっと笑みが消えた。
その目は、完全に据わっていた。
女騎士はその変化に気づき、静かに息を吐いた。
「……ああ。これは、止めても無駄ですね」
「おい、獣人のガキ! 邪魔するんじゃねえ!」
男がルナへ剣を振り下ろす。
しかし、ルナは動じなかった。
剣が振り下ろされるより早く、彼女の身体が低く沈む。
次の瞬間、男の腹部に鋭い一撃が叩き込まれた。
「ぐぼぉっ!?」
男は声にならない悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちた。
「ママに……」
ルナは倒れた男を見下ろした。
「手を出すな」
「ルナちゃん?」
マリアが目を瞬かせる。
ルナは、くるりと振り返った。
「ママ、大丈夫?」
「え、ええ。あたしは平気だけど……」
「そっか!」
ルナはにっこりと笑った。
しかしその目は笑っていなかった。
「じゃあ、残りも片づけるね」
「ちょ、ちょっと待ちなさい、ルナちゃん! その目、怖いわよぉ!?」
「大丈夫だよ、ママ!」
ルナは満面の笑みで答えた。
「ママみたいに、ちょっとお話しするだけだから!」
「その笑顔で言われても、全然安心できないんだけど!?」
男たちは、仲間が一瞬で倒されたことに動揺した。
「くそっ、何なんだ、このガキ!」
「お前ら、全員でかかれ!」
残りの男たちが、一斉に武器を構えた。
女騎士は一歩前へ出た。
「ここは私が」
彼女は静かに腰を落とし、男たちの動きを見極める。
「マリアさんは、その方をお願いします」
「あら、任せてちょうだい」
マリアは、腕をつかまれていた女性をそっと自分の後ろへかばった。
「さあ、お嬢さん。こっちへいらっしゃい。危ないから、少し離れていてね」
「……あ、はい」
女性は素直にうなずいた。
正直なところ、彼女はマリアたちを助ける必要などないと考えていた。
男たち程度なら、自分一人でも十分に制圧できる。
だが、今は状況が違う。
この三人が何者なのか、少しばかり見極める必要がありそうだった。
「おい、女! 勝手に動くんじゃねえ!」
男の一人が、マリアの後ろにいる女性へ剣を向ける。
マリアは、にっこりと微笑んだ。
「あら。まだわからないのかしら?」
「な、何がだ!」
「レディに剣を向けるのは、お行儀が悪いってことよ」
「うるせえ!」
男が斬りかかった。
刃がマリアの肩に当たる。
甲高い金属音が響いた。
ガキンッ!
「……は?」
男の動きが止まった。
剣は、マリアの肩に当たったまま弾かれていた。
肩には、浅い傷すらついていない。
マリアは、肩についた刃の跡を確認するように首を傾げた。
「……あら?」
もう一度、男が剣を押し込む。
だが、マリアの身体はびくともしない。
「な、何だよ、こいつ……!」
「ちょっとぉ。いきなり斬りかかるなんて、危ないじゃないの」
「ひっ……!」
マリアが一歩近づく。
男は反射的に後ずさった。
マリアは肩を軽く払った。
それから、ドレスの裾を確認する。
そこで、眉がぴくりと動いた。
「……ちょっと待って」
「な、何だよ……」
「服に穴が空いたじゃない!」
マリアの声が、街道に響いた。
「せっかく朝からおしゃれしてきたのに! アンタたち、いったい何をしてくれてるのよぉ!」
「し、知らねえよ!」
「しかも、また剣まで向けて! レディに対する礼儀ってものがないの!?」
「お、お前、本当に何なんだよ!?」
「レディでしょ!?」
「いや、だから……!」
「レディでしょ!?」
笑顔のまま繰り返され、男はなぜかそれ以上言い返せなくなった。
その間にも、ルナと女騎士は残りの男たちを相手にしていた。
ルナは獣人特有の身体能力を生かし、男たちの懐へ一気に踏み込む。
剣を振るう腕をかわし、足を払って体勢を崩す。
「はいっ!」
「ぐあっ!」
一人が地面に転がった。
別の男が背後から襲いかかる。
しかし、ルナの獣耳はピクリと動き、気配を察し、振り向きざまに蹴り飛ばした。
「ママに剣を向けたこと、反省して下さい!」
「ぎゃあああっ!」
一方の女騎士も、無駄のない動きで残りの男たちを制圧していた。
騎士として鍛え上げられた技術は、荒くれ者たちの剣術とは比べものにならない。
剣の軌道を見切り、手首を打って武器を落とさせる。
続けざまに足を払えば、男は抵抗する間もなく地面へ倒れ込んだ。
「抵抗をやめてください! これ以上続けるなら、容赦しません!」
「くそっ、化け物ばかりかよ!」
残った男たちは、ようやく自分たちが相手にしている連中の異常さを理解した。
逃げようとする者もいたが、ルナが回り込み、女騎士が退路を塞ぐ。
あっという間に、全員の逃げ道がなくなった。
「くそっ! こうなったら……!」
最後の一人が、マリアへ向かって剣を振り上げた。
その瞬間。
ルナの目が、再び据わった。
「……まだやるんだ?」
ルナは地面を蹴った。
男が剣を振り下ろすよりも早く、彼女の拳がその腹部へめり込む。
「ぐえっ!?」
男は宙を舞い、街道の脇へ転がった。
さらに女騎士が、逃げようとしていた最後の男を足払いで転ばせる。
「これで全員ですね」
女騎士は、倒れた男たちを確認した。
ルナは満足そうにうなずいた。
「うん!」
そして、マリアのもとへ駆け寄る。
「ママ、怪我してない?」
「ええ、平気よ。あたし、これでも頑丈なんだから」
「よかったぁ……」
ルナは、ほっと胸をなで下ろした。
しかし、マリアがドレスの裾を見ていることに気づくと、再び表情が曇った。
「……ママ?」
「……やだ」
「え?」
「さっきの穴が解れてるのよぉぉぉ!」
マリアは裾をつまみ、悲痛な声を上げた。
「もう、最悪!帰ったらお手入れしなくちゃ。まったく、野蛮な男って本当に困るわねぇ!」
「……ママ」
ルナは、静かに倒れた男たちを振り返った。
その目は、まだ少し据わっていた。
「もう一回、お話ししておこうか?」
「ルナちゃん、やめなさい! もう終わったから!このくらいならママ直せるから!」
「はーい……」
ルナは少し不満そうに頬を膨らませた。
女騎士は額に手を当てた。
「……まったく。配達の帰りに、どうしてこんなことになるんですか」
「あら、あの人たちがこの女の子に絡んでたのよ?」
「それはそうですが……」
「それに、あたしは何もしていないわ!」
「……もう、いいです」
女騎士は深く息を吐いた。
その横で、助けられた女性は呆然としていた。
男たちが倒れたことにも驚いたが、それ以上に、目の前の三人が何者なのか理解できずにいた。
獣耳と尻尾を持つ少女は、あれほどの人数を相手にしていたとは思えないほど無邪気に笑っている。
金髪の女騎士は洗練された身のこなしで周囲を警戒しながら、男たちを拘束していく。
目の前の三人は、それぞれ異なる強さを持っていた。
特に、あの大柄な人物。
剣を受けても無傷だった。
しかも、本人は服が汚れたことばかり気にしている
女性は一瞬、言葉に詰まった。
女性は困惑した。なにひとつ理解できなかった。
マリアは微笑み、女性の腕をそっと取った。
「さ、こんなところにいたら危ないわ。ギルドまで一緒に行きましょう?」
「ちょ、ちょっと待ってください。私は……!」
「大丈夫、大丈夫。怖かったわよねぇ。もう悪い人はいないから」
「怖くは……」
「無理しなくていいのよ。強がらなくても」
女性は思わず口を閉じた。
違う、怖くなどない。
自分は、あの男たちを一人で倒すことだってできた。
しかし、マリアはそんな事情など知る由もなく、優しく微笑んでいる。
しかも、腕をつかまれている。
女性はそっと腕を引いた。
動かない。
もう少し力を込める。
それでも、びくともしなかった。
「……え?」
女性は目を見開いた。
マリアは、何事もないように彼女の腕を引いて歩き出す。
「ほら、行きましょ」
「ちょ、ちょっと待ってください! 力、強っ!?」
「あら、そう? ごめんなさいねぇ。痛かった?」
「痛くはありませんけど……!解けぬ!?」
女性は慌てて足を動かした。
自分は決して弱くない。
それなのに。
この大柄な人物の手から、まるで逃げられる気がしなかった。
女性は、自分の計画が崩れたことを実感した。
しかも、相手はそれに気づいてすらいない。
女性は深く息を吐いた。
この人物に事情を説明するべきか。
それとも、隙を見て逃げ出すべきか。
迷った末に、彼女はまず一つだけ尋ねることにした。
「主は……本当に、何者なんですか?」
マリアは少しだけ考えた。
そして、いつものように胸を張り、優雅に微笑んだ。
「通りすがりの受付嬢よ♡」
「……う、受付嬢?」
「そう。よろしくね、お嬢さん」
マリアは彼女の手を取った。
女性は反射的に身構えたが、マリアはただ、その手を優しく包み込んだだけだった
女性の黄金色の瞳が、わずかに揺れた。
見ず知らずの相手ではあるが、敵ではないことは理解できた。そして戦力としては充分だとも考えた。
「じゃあ、ギルドまで一緒に行きましょうねぇ」
「じゃから、手を離さんか!自分で歩ける!」
こうして、彼女の計画は本人の意思とはまったく別の方向へと進み始めた。




