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やり直しの神子は長生きしたい  作者: kozzy


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兄弟?の時間

調剤棟付属の救護室では最近弟子入りした修道士が怪我人の手当てに勤しんでいる。

怪我人…といってもこれは、過剰に増えた建築業務の産物(打ち身切り傷、腰痛など)、決して乱闘とかによるものではない。


「エドヴィン様、この薬は」

「それは下へ運んでください」

「わかりました」


救護室と一口に言っても、この神殿併設救護室で診るのは、神殿部で大工仕事をしていた人に限られる。彼らは言わずと知れた、初期入植者たちだ。

なのでアゴラには一般庶民向けの教会が別であり、そこにも救護室が併設されている。


これらは全て、僕に出来る限り力を使わせないため、ここに来たオズヴァルトが真っ先に取り組んだことだ。


活路が開いた今、もう手当たり次第に治してやってもいいとさえ思っているが、それを話すと彼は、「その都度私以外の誰かと手を繋ぐのだろう?不愉快だな」とのたまうのだ。


相棒から夫へと立場を変えたオズヴァルトにはカワイイ独占欲が芽生えたようだ。



「エド、手伝おうか?」

「ウルリッヒ様…いらしたのですか?辺境伯閣下とのお話に同席されずよろしいのでしょうか」


「軍事の話が主になってきたから逃げてきたの」

「ふふ、それは」


「ウル様は?」

「ハンナと昼食の支度を」

「もうすっかり自然な親子だねぇ…」


ここでは建物ごとに厨房がある。なので食事もそれぞれで用意する。


オジーの補佐官(宰相や大侍従、顧問と…ついでに神官長もね)は基本『執務棟』で。

彼らは忙しく、ここでの食事は時に会議の続きになる。


貴人の寮でもある『貴公子の館』には官吏たちが集まり、ここでの食事もまた、時に熱を帯びた討論になる。


そして『君主の館』。

ここで寝泊まりしているのは僕とオズヴァルト、その従者(ウル様とエドね)。そして使用人の最高峰、執事のベンとメイド長のハンナだ。

メイド長のハンナは食事の準備を部下のメイドでなくウル様と行う。これはここへ来てからずっと続いている習慣だ。


僕の声音に何かを感じ取ったのだろうか…


「…ウルリッヒ様はお寂しくありませんか」


これは本物のエミルをおもんばかった言葉なのだろう。本当に優しい子だ。…あの旦那様の子とは思えない。


「僕は心が繋がっていれば満足だから」


寂しい…なんて感情はウル様の世話係として王城神殿へ上がる時とっくに折り合いはつけている。

それに最近では…


どうもお母さんが神子相手にしちゃ気安い。

意識しているときはそうでもないけど気を抜くと語尾がぞんざいになっている。

通りすがりに「ついで」と称して用を頼まれることもある。


うーん、これは…


間違いなく母さんは何かに気付いてる。

だけど僕と母さんは暗黙の了解でこの間柄を楽しむことにしたのだ。


父さん?あの人はよくわからないな。いつもちょっとずれてるんだよね。


「それよりユストゥスがいなくなって刺激がないんじゃない?」

「やめてください!やっと平和が戻ってきたのに…」


ユストゥスくんはここに居られる最後の三日間を、僕の協力もあってほとんどウル様と過ごしていた。


神子の世話係という名のいち平民でありながらどこか浮き世離れしたウル様。

無邪気な子供のようでいて貴族子女と変わらない所作のウル様。


そのうえ神子の名残というか、どこか清浄な空気感をまとうウル様に、ずっと目を細めていたユストゥスくん。


エドは気が気じゃなかっただろうが、僕の「彼は嫡男だから」の言葉に全てを察してグッと堪えた。

そういうところがエドのエドたるところなんだよね…ほんと思慮深い。


そう言えばエドとユストゥスくんは僕の婚礼式の日、つまり誕生日にそれぞれウル様に誕生日のプレゼントを渡している。


ユストゥスくんはここで見つけたきれいな天然石をブローチにして。

エドは神殿の壁に飾られたレリーフを参考に、自作した、この世でたった一つしかないウサギのレリーフを。


どちらも価値あるものだ。ウル様はとても大切に飾っている。


前世軸のやさぐれたウル様は神殿の壁という壁を宝石で飾ったけど、やり直しの今世。ウル様は自室の壁をお気に入りの宝物で飾っている。


お母さんから貰ったスカーフ。

お父さんに貰った帽子。

初めてのパン屋で使った木の看板。

ドライフラワーにしたのはここで積んだラベンダー、貝殻のハンギングアミュレットは楽しそうにエドと作っていたっけ。

そして新たに加わったのがこのレリーフにブローチ。

ウル様は幸せそうだ。


ホクホク「もうじきエドも十六だね。どうするの?」

「どうするの…とは?」

「求婚。しないの?ウル様乙女だから誕生日に花差し出して求婚…とか喜びそうだけど…」ニヤニヤ


「…考えて…はいます」


あれ?い、意外な反応。あれだろうか?エドまで『元は兄弟なのに』とか言い出すんだろうか…ここまできてバカ言ってんじゃないよ!


「何悩んでるの?悩むようなことあった?」

「…場所とか台詞とか…手渡す花を何にすべきか…など…」


スン「あっ…そう」


三日三晩不眠不休で考えるがいい!








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