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やり直しの神子は長生きしたい  作者: kozzy


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辺境伯と北の地

後継者。それは僕とオズヴァルトの間に横たわる実に繊細かつ深刻な問題だ。


愛と自由を尊ぶバルデルス神のおかげで、同性婚も許されているこのアードラスヘルム国だが…、後継者となったら話は別だ。


だからこそあのエマニエルに夢中だったアルトゥールでさえ、エマニエルに正妃の座だけは用意できなかったのだから。


僕とオズヴァルトはその問題をすでに話し合っていた。

正直なところ、僕は彼が第二夫人を娶るのは仕方がないと考えている。けど、肝心の本人にその気がないらしい。


「君という人を知ってしまった今、他の誰かを愛せるとは思えない」

「愛とかじゃなくても…」

「愛のない行為をしたいとも思えない」

「いやまぁ…うん。そうだね…」


こんな感じ。


う、嬉しいような…でも後先を考えると困っちゃうような…

おかげで答えはまだ出ていない。どうする気なんだか…


因みに〝癒しの神子”たる僕は、オズヴァルトが仮に何人妃を娶ろうが不動の正妃である。悪しからず。


「実は今回私の娘を同行したいと考えていたのですよ」

「それはそれは。ぜひお会いして見たかったものだ」


「そう言って頂けると娘も喜びましょう」


あ…これってアレだ…


「今回は道の状況がわからぬゆえ控えたのです。私たちは帰路、可能な限り路面を整えるつもりでいます」

「馬車が通れるようにしたいんですね?」

「ええ。今後を考えれば必要かと」


そりゃ願ったりかなったりだけど…


「そうなれば西と北の結びつきは今より強くなることでしょう。これは心強い」

「オスヴァルト様。その結びつきをより強固にとの考えはございませんか?」


「はて?より強固にとは一体…」


すっとぼけるオズヴァルト。

わ、話題を!話を変えなくては!


「と、ところでエマニエルはどうしてますか?」

「罪人らしく大人しくしておりますよ」


エマニエルがいるのは本来戦争捕虜を捕らえておく独房である。


そこには簡素なベッドと小さな机があり、本や花程度なら持ち込めるらしい。(もちろん検閲はあるけど)


室内には他に壁のないお手洗いがついており、僕が聞いていた室内の小さな庭とは、お手洗いを目隠しするための植木鉢を並べた室内花壇なんだとか。


「ああ。だから捕虜の独房に花壇があるんだ。てっきり居住性を高めるためかとばかり…」

「間違ってはおりませんよ。あれは過去の捕虜が人目のある状態で用を足すのは嫌だと騒ぎ立てたことで出来たものですから」


確かに。僕だっていやだ。


そのエマニエルのもとへ家族が面会に訪れたことはないという。

もっとも、過酷な道程を知っててわざわざ北部へ向かう人は多くない。


「知恵者とのことでしたのでどれ程のものかと思い試しに戦術を考えさせたところ…兵法も学んでおらぬのにスラスラと幾つかの陣形を提示して見せました。根拠とともに」


へー、すご…、散々バカにしてたけど、本物だったかエマニエル…


「ウルリッヒ様、共に参った監視が王妃の私兵だったというのは本当でございますか」

「ええ。八人居た内の下っぱ二人ですが」


「一体何があればあれほど神子様に恭順の意を示すようになるのか…。王妃の私兵は強硬派。彼らは妃殿下の忠実な駒だと思っていたのですが」


「んー…真摯に神の教えを説いたら心を入れ替えました。彼らもまた迷える子羊だったと言うことです」シレッ


一度廃人にしてから恩着せがましく癒しを与えて救いました。とはとても言えないな…


けれど彼らは言葉通り、まさに生まれ変わった。厳しい北の地での任務も文句ひとつ言わずこなしているという。


「レオポルド、それより皇国の情勢を聞かせてくれるか」


ここで絶妙な助けが入る。この話を突っ込まれて困るのはオズヴァルトも同じなのだ。


「皇国レスプブリカから情報を得るのはなかなかに難しい。幾人か送った諜報の中で戻ってきたのはほんの二名」

「なるほど…」


「彼らの脅威は私が北で食い止める。この西辺境に手など届かせない。心配無用です」

「実に頼もしい」


「だがそれでも備えは必要でしょう。私の部下を一人、精鋭を送ります。彼の指揮で自衛のための部隊を鍛えさせましょう」

「それはありがたい」


軍領である北の辺境から派遣される指揮官なら百人力だ。ここは丸投げで。

とはいえどこでその自衛軍を育てるか…


「オズヴァルトは海に繁栄への活路を見出しているみたいですよ」

「海か…。北の地で生まれ育った私には未知の世界ですね」


海に面しているのはフランケン領を中心とした南西地域とこの西辺境中央部から半島部だけである。


南西部と西辺境は上手く手を携えているが、その両方に共通するのは大きな戦力を持っていない、ということだ。

片側が国境でなく海に面していることで、若干の油断があるのは否めない。


フランケン領の男たちは屈強な益荒男が多い。

が彼らは海に生きる男たちだ。

そしてこの西辺境は多分国内で最も温和な気質を持つ。

これはひとえに神の地云々…という古くから受け継がれるものだろう。


西の神殿都市に入ってしまえば安穏として暮らせると思っていたのに…


意外とやることが多い。計算外だなぁ…









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