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やり直しの神子は長生きしたい  作者: kozzy


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過去の収穫物

前世軸において、僕のゴシップ主戦場とは、本宮地下と…もっとも多く出入りしたのが実は鍛冶場だった。


本宮地下とは下級使用人の部屋、洗濯室、厨房や使用人の食堂などがあり、ここにはありとあらゆる王城内の噂話が集まってくる。つまりゴシップの宝庫ってね。


そして鍛冶場…。鍛冶場には騎士団の面々や近衛の面々などが武具の手入れにやってくる。

そして誰に聞かせるでもなく愚痴や武勇伝などを一服しながら落としていく。

僕のお目当てはまさしくそれね。


何故ならそれらは、僕の心をときめかせ間接的にウル様までをも楽しませる、冒険譚や活劇のようなものだったからだ。

最優秀語り部は鍛冶師長ね。


僕はここでオスヴァルトが剣の達人なのも知ることが出来たし、例の火薬云々もここで知ったし、前世軸で過ごした五年と半年の間には他にももっといろんな秘密を知っていたりする。

鍛冶師長も口が軽いって?油断してたんだよ。ほら、神子は俗世に関与しないから。


当時王は、王城の鍛冶場で作成した武器の管理を、鍛冶師長から軍務大臣であるフォルスト候に変更している。


鍛冶場にはフォルスト候の部下が多く出入りするようになり、彼らのほとんどは鍛冶師長の愚痴と嫌みに同調し、盛大に主君の不平不満をこぼしていった。


きっとフォルスト侯は彼らに対しても横柄だったのだろう。なにしろあの王妃の父親だし。


ともかく、王がいきなり武器の管理を、優秀な職人とはいえ平民位の鍛冶師長から、高位貴族の大臣であるフォルスト侯に一任したのは、いうまでも無い、裏があってのものだ。

この頃って王子妃だった娘が王妃になった頃だし。


彼は言っていた。

フォルスト侯の身なり、宝飾品が派手になったのはそれからだって。

王都の屋敷で夜会を乱発するようになったのもそれからだと。


含みのある発言…

とは言え平民位の鍛冶師長がそれ以上何を言うでもない。


そこで当時の僕は鍛冶師長の愚痴を聞きながら引き続き考えていた。武器の管理と、フォルスト侯に関した羽振りの良さの因果関係を。


そこにはきっと鍛冶師長が疑うよう、フォルスト侯が儲かるカラクリが何か隠されているはずだ。


思考の道筋が立ってさえいれば探し物を見つけるのは意外と容易い。

僕はそれほど苦労をせず、ある事実を突き止めていた。


王城の武器庫は鍛冶場に併設されている。

僕はある日気付いたのだ。製作された武器数と保管された武器数、帳票の数字が時々巧妙に操作されていることに。


疑いの眼で見なければ気付かないほど僅かな違和感…

それに何故僕がそれに気づいたか。

実は…僕もちょくちょくやっていたからだ。

といっても、ごまかしていたのは神殿に保管される調薬素材や食品庫の在庫だけど。


王城の物資管理は厳密なようで実はけっこういい加減だ。


とくに、物心ついた頃には見習いとして騎士団にあがり、剣の鍛練だけを日夜繰り返す下っ端兵の彼らは、腕が立つ代わりに数字に弱く必然的に様々な部分で大雑把である。

そして物言い、物腰、ともに粗暴だ。


だからこそ、それらを取り纏める官吏は、武器の出入に関し帳票の数さえ合っていれば、いちいち剣が数本足りなかろうが深く追及しなかった。

そうなると帳簿を渡された官吏は、さらに上の事務方へそれを提出するにあたって、自分の責任を問われないよう必死に帳尻を合わせるってわけ。


そのガバガバな体制を上手く利用したんだろう。


実際僕もそうやって一年前、こっそり爆弾の材料を持ち出したんだし…


おかしさに気付く事務官はきっと居ただろう。一人も居なきゃむしろ宮廷大丈夫かって話だ。


けど軍務大臣がフォルスト侯である以上、最終的にどんな不正も所詮握り潰される。


それが長年続くうちに誰も何も言わなくなる。言っても無駄だから。

そして管理はより杜撰になる。負の連鎖だ。


僕は仮説を立てた。フォルスト候は王城の武器を横流しをしているんじゃないか、って。

そうじゃなきゃ大きな戦争のない時期に武器が頻繁に減っていくのはおかしいって。


短剣以外の武器は市井でもギルドで厳密に管理される、誰でもが勝手に売買は出来ないものだ。(危険だからね)


そのうえ北に大きな火種、南に小さな火種を抱える王城の武器は国中から資源を集めて作る上等なもの。喉から手が出るほど欲しがる相手はいくらだっているだろう。


前世軸で、僕はフォルスト侯爵家の御者に、ちょっとした美味しいお酒を差し入れながら世間話を装い話しかけた。


そして少しばかりの情報を仕入れている。

彼がフォルテス領から頻繁にいくつもの周辺小国へ出向いているってことを。


朴訥な御者はそれを、王と王妃へ献上する珍しい他国の宝を買い入れるため、と思っていたようだが多分違う。それが恐らく取引先だ。


けど何故大貴族のフォルスト候がそんなみみっちい真似するのかって?


決まってる。フォルスト候は他国に恩を売り伝手を作りたいのだろう…

そしてそこに将来生まれる利益とはお金だけでは計れないものだ。




さて…、これらは前世軸のけっこう終盤、伝染病の流行り出す直前あたりで仕入れた情報、つまり今も生きている生情報のはずだ。


手の内を全て明かす必要はない。

誤魔化す工作なんてやり手の悪人ならすでに持っているはずだ。

下手に情報を明かせば潰されて終わり。


なら匂わせるだけでいい。

神子は知ってるって。


「腐敗の根拠はアンティア国…バルブーダ国…これら小国辺りにあると神はお告げになりました」


「…何の話だ」


「さあ…、神のお告げは意味深長ですので」


憎悪の眼差し。

これではっきりしたはずだ。先ず始末すべきはこっちだって。


「ウルリッヒ、もういい!」


危険を察したオスヴァルトが勢いよく立ち上がる。


「これでは収拾がつかぬ。本日はこれにて解散としようではないか。リュティガー様、それでよろしいか」

「あ、ああ。私も同意しよう」


「神子は私がなだめよう。フォルスト候、あなたも頭を冷やすがいい。続きは明日だ!」





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