↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やり直しの神子は長生きしたい  作者: kozzy


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/137

未来不明図

「お久しぶりですなウルリッヒ様」

「オットー…」


ここでまさかのオットーとは…

生きていたのか…って生きてるかそりゃ。オットーは自主離脱しただけだし。


「元気だった?ほら、落橋のおかげで合流できなかったからさぁ…どうしてた?」

「私も驚きましたよ。急ぎ後を追えばまさかあのようなことになっているとは」


「それで一旦帰城したの?」

「そのままというわけにはいきませんからな」


事も無げに平然と告げるオットー。やっぱりこの男が一番曲者…


「今回は両陛下より架橋の進捗と南西領の様子を確認するよう命を受けまして。ついでに足を延ばして様子を伺いに来たのですよ」


ゴクリ…


《《様子を伺いに》》…って、まさかオズヴァルトを迎えに?

い、いや、いくら王妃が執拗でも王と宮廷がたてた制圧計画の邪魔はしないはずだ。

オットーが橋の工事を見に来たのが良い証拠。王は進軍時期を測っている。大丈夫だ僕。落ち着け…落ち着け…


まずはここにきた真意の確認からだ。


王城からの使いをいつまでも小屋で待たせることも出来ず、僕たちは渋々オットーを『君主邸』へ案内することになった。

だってなんとなくこの血に穢れた男を神殿に入れるのは気分的に憚られる…




「ところで今回は何の用?まさか王子オズヴァルトを単身騎馬で連れ帰るわけじゃないよね?」


「いえ。王は馬車の通行が可能になるまではゆるりと過ごすよう仰っておいでです」

「ふーん…。で?オットーもゆっくりしてくってこと?」


「いえ。私は大切な使命が済み次第、早々にここを出発します」


季節は直に暑期へと入る。今はそのはざかい期だ。ここがどんな場所か分かっているオットーは、一分一秒でも早くここを発ちたいのだろう。


「その使命とは?」


「必要なものを手に入れに」

「必要な物?」

「火薬武器のレシピにございます」


!!!


瞬時に警戒の色を見せるオズヴァルト。けどオットーの方は至って平静だ。


「どうしてそれをここで聞くのかな…」

「ウルリッヒ様にはお分かりのはずだ」

「何のことやら」


「崩落した橋の手前で立ちすくむ私に一人の木こりが声をかけてきましてね。「城の兵隊さんを預かっている。連れて行ってくれ」と」


ピク


神のみぞ知る彼らの生死は紙一重で生に傾いたようだ。


「気の毒に…エーリヒとフリッツは盗賊にでもやられたのか傷だらけでしてな」


白々しい…生きてたなら彼らから事情は聞いてるはずだ。


「…山が蠢いたあの晩ソルトロードの様子を見に行くと言って出ていったまま戻ってこなかったのだが…そのようなことになっていたか。憐れな…だが命があったようで何よりだ」


オズヴァルト…こちらも負けじと白々しい。


「そうとも言えませぬな。木こりの止血が良かったのか彼らは生きておりましたが心は無事でなかったのですよ」

「…と言うと?」


「「天罰が下った」「神は怒りの鉄槌を下された」二人とも口々にそう呻くばかりで…もはや正気とは言えぬ」


あの時の目、二人ともかなりイっちゃってたもんな…

そんな二人をオットーは木こりの手も借りてなんとか一番近くの街まで運んだようだ。


「神子ウルリッヒ様、ここにあなたが居れば、何度そう思った事か。もっともその力を我らに使う事はないでしょうが」


よく分かってるじゃん。


街医者により彼らは遅まきながらようやく適切な手当てを受け、その後オットーが手配した貸し馬車で王城へ戻ったのだとか。


「今となってはそれが何者による傷であるかは追及するだけ互いにとって無益なこと。違いますかな」


神子と王子に切りかかった二人。誓約書に背こうとしていた僕たち。どちらも後ろ暗い。つまりその件は無かった事にして痛み分け…って言いたいのかな。


「だが私が気になったのはその衣類に付着していた黒い煤でございます」


黒い煤……まさか…


「私の勘が何かを告げた。これは重要なものだ…とね。そこでそれを宮廷の鍛冶師に見せたところ、鍛冶師はそれをカカの国から手に入れた「火の槍」に使われる火薬の燃えカスだと言った。敵の目の前で火花を散らし威嚇に用いる武器の火薬だと」


それは爆弾が発明される以前の武器だ。すでにカカの国では丸めた火薬を筒に入れて飛ばすところまで進化している。

それがもうじき伝来するっていうのが僕の知ってる前世軸だったのに…この流れは何⁉


「ウルリッヒ様。建て前はここまで、はっきり言おう。その火薬武器のレシピを寄こせ!さすればここで見たこと全て報告しないでおいてやる」


「は?」


豹変するオットー。彼は私兵の中でもかなり老獪。どれだけ煽っても今まで素を出した事はないってのに一体どうした⁉


「いいか。この小賢しく小癪な神子め。お前のせいでグスタフとオイゲンは死んだ」

「刑に処されたの?」

「…いいや」


ならお前のせいじゃん。


「そんなことはどうでもいい。だが手勢を次々失くしオスヴァルト殿下までみすみす逃した私に王妃はひどく失望されている」


「…話が見えないな…。簡潔に言いなよ」

「私は王妃殿下からの信頼を取り戻さねばならぬ。そのためには名誉の挽回が不可欠なのだ」


こいつは王妃の盲目的な狂信者だ。王妃に失望される、それはどんな罰より痛手なんだろう。


「それで?」

「私を見るに見かねたエマニエル殿が良い方法を授けてくださってな…」


エ…エマニエルー!!!またお前か!


苦悩するオットーにエマニエルは善意でこんな入れ知恵をしたという。


落橋には間違いなく神子が絡んでいる。そして崩壊した橋の袂で倒れていた二人の仲間。その衣類に付着した火薬。因果は明白。


エマニエル…っ!あ、あいつ…火薬の煤から僕が何らかの火薬武器を作った、そこまで見抜いたってのか!


橋を落とすほどの火薬武器を手に入れれば王は相当お喜びになるはず。そしてその情報をもたらしたのが王妃の私兵であれば王は王妃をお褒めになるはず。つまり王妃の中でオットーの評価は爆上がりするだろう…それがエマニエルがオットーに授けた知恵。だからオットーは王命に自ら志願してここへ出向いたのだ。


つまりここへ来たのは王妃も知らない隠密行動!




「レシピを寄こせウルリッヒ!さもなくば雨期を待たずこの地に血の雨がふるぞ!」


お、おま…

「やれるものならやってみろ!」…と言いたいところだが…


僕はこの地を二度と穢させやしない!そのための最善はなんだ!


「…少し考えさせて」

「時間はない。私は急ぎ戻らねばならぬ」

「一日でいい」


「よかろう。明後日早朝に発つ」


「オットー殿。下の空き民家に食事と寝台を用意しよう。あまり出歩かないでもらいたい」

「殿下、言われなくとも出歩きはせぬ。ここは〝西の神殿”でありますからな。今が乾期といえ用心にこした事は無い」


言ってることは不愉快だけど大人しくしていてくれるなら好都合。

さあ!今から緊急会議だ!






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。