同盟完成!
アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。
『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。
あの王妃ならオズヴァルトが王城を出た途端に付け狙うだろう。西へ行こうが北へ行こうが。待ってましたとばかりに。
たった十三歳のウルリッヒ様から根こそぎ生命力を奪おうと考えた冷血王族。それが王妃エメリンと王太子アルトゥールだ。
彼らが大切にするのはいつだって傲慢な自尊心。
それを阻害する邪魔者はまるで虫を払うかの如く排除するのがこの二人だ。
質の悪いことにそれは〝目に入らない”ではなく、いつだって〝存在しない”が推奨される。まったく…
その優秀な参謀となったエマニエルと黙認し続けた絶対君主の王リカード。
四人まとめて腐った王家を僕は絶対許さない!
「長生きと自由」そんな風に語った僕の願望だが…それらは現王家の瓦解の上に在らなければならない。
王妹ブリッタ様に育てられたオズヴァルトには…今はまだ言えないけど。
「ねえオズヴァルト。前王の末弟、今までの辺境伯ならまだしも…爵位を継いだだけの新たな辺境伯に王にもの申せる力はないよ。その人は多分オズヴァルトを護れない」
「ブリッタ様も同じことを言われた…」
「じゃあ今まで通りここに居る?ここで死んだように生きる?」
「…」
「一緒に行こう!自由に生きよう!僕ならオズヴァルトになにかあっても…命だけは助けられる。だから…即死だけは避けてくれる?」
事前防衛じゃないのが辛いところだ…
「馬鹿な!それは君の生命力を使うと言うことだろう!」
「西の神殿に入ればいちかばちかの切羽詰まった患者以外は送られない。ならたまにあなたを癒したってお釣りがくるよ」
毎日深手を負えば別の話だが…いくらなんでもそりゃないだろう。
「しかし…君は君の身を護らねばならないではないか!」
「ああ、例の話ね」
西の神殿に僕を送るのは、奴らにとっては僕への死刑宣告。
この作戦とは、前世軸においては再生力を《《他者》》に対して使い切らせ、生命力枯渇を起こそうとした外道な企てを、今世軸では〝自己再生にも生命力を消費する…という”僕の体質を利用して、《《自身》》に対して使い切らせようと方向性を変えたもの。
その手段として病が蔓延すると言われている〝西の神殿”を奴らに使わせるのだ。
ここで少し説明しておこう。何故西の神殿が王家から病の巣窟と思われているかを。
これは実際あった西辺境の歴史が関係している。
西の辺境…そこにある朽ちた神殿、それはこのアードラスヘルムの創成期において、発展と栄華を極めた古の神殿都市全体を指す。
これはゴシップではなく、神官長しか入れない資料室に無断で侵入し、三日三晩寝ないで調べたことなのだが…(え?鍵?神殿内の鍵は全部南京錠だからね。楽勝だよ?)
今も昔も西の辺境には冬が無く、山岳部以外は一年中温暖な気候が続くという。
季節は暑季、雨季、乾季に分けられ、また地域も三つに分けられ、北側にあるのが緑多き農業地帯の平原部、南側にあるのが史跡物の多い半島部、そしてその北と南の間にあるのが乾燥した地域の中央部だ。
古代においては多くの人々が遊山に集まりそれは雑多で賑やかな場所だった西の辺境。
そんな西辺境で最も栄えていたのが南側。そう、神殿都市とはこの半島部のことを言う。
その半島部にある一番大きな建物こそがこの国で最も古い神殿であり、歴史的には王城より古い。
この神殿都市とはアードラスヘルムのまさに始まりなのだ。
ここまでがこの東側で一般的に知られている表面的な西の辺境。さてその実情だが…
熱い気候とは時に深刻な問題も生むもの。その一つが熱帯病である。そして二つ目が雨季に大量発生する…蚊だ。
それが運悪くこの半島部で同時に発生した古代のある時それは起きた。
たった数ミリの小さな虫、その虫によって熱帯病は神殿都市部全体を襲い…その結果、適切な治療も受けられず土地を離れることも出来なかった多くの貧困層が瞬く間に野垂れ死んだという…
負の連鎖はさらに続く。
埋葬もされず積み上がった貧民の亡骸は更なる病の苗床となり、今度は熱帯病以外の感染病が次から次へと蔓延し始めたのだとか。
事態を重く見た当時の君主、彼は早々にこの半島部を見捨て北の平原部へ移ったという。
それでも病の恐怖が消えなかった君主たちは、西の果てから遠く離れた、当時まだ未開拓だった国の東果てへと移り住み、その地で新たな都市をつくり始めた。
わかるかな?それが王家の祖先だったってことね。
こうして西辺境の半島、神殿都市からは、死ぬ人出ていく人、どんどん人が消えていった。
今もあの西辺境では、半島部を清浄効果のあるトチノキで囲み、不浄の地として忌み嫌っているのだとか。
そしてそんな神殿跡地にわざわざ足を踏みいれるのは…住む家もお金も持たない末期の人々だけだ。禁忌の地、そこに税はかからない…
捨てられた都市、忘れられた都市。使い捨てられる神子と忘れ去られた王子にピッタリじゃないか。
「朽ちた西の神殿都市に入って生きて帰った人は居ないという話じゃないか」
「そうだね。あそこには今にも死を待つ人しか居ないらしいね。けど僕は古の熱病が今も流行ってるわけじゃないと思ってる」
貴族様には想像もつかないだろうが、貧困層の死因で一番多いのは飢餓だ。食うに困った人が向かうのだから戻らないのは道理だろう。
「だが風土は変わらない。だから今も忌避されているのだろう。そんなところに何故君は…自ら死に行くようなものじゃないか!生命力が枯渇したらどうする!」
「…」ニヤリ
「まさか…」
「計画通り…」
「聡いどころじゃない…」
ふっ、悪賢さには定評のあるのがこの僕だ。
オズヴァルトは僕の、「自己治癒にも生命力を消費する」というもっともらしい話をホラだと気付いたらしい。
「とにかくあそこに僕を送るとなったら一分一秒でも早く僕をくたばらせるために彼らはまともな従者なんかつけやしない」
「そうだろうな…」
「世話係も護衛の代わりも、全部死んでも惜しくない人物しか使わない」
「ああ」
僕の予想だと、身の回りの世話を押し付けられるのは《《王家にとっての邪魔者》》だ。
そして西まで僕を護る兵…それは今夜あの森に居た五人の誰かな気がする。
「彼らはもしかしたらスパイかもしれない、けど所詮使い捨てられるコマ。僕に言わせれば大した脅威じゃない」
「ウルリッヒ…」
「この手をとってオズヴァルト!西で生き残る計画ならもう出来てる!僕を助けて!」
この王城を出れば、そこは自由だけど弱肉強食の世界。いくら僕が神子と言っても所詮十三歳の子供である以上、危険は様々に形を変えて襲い来るに違いない。
独りぼっちじゃきっと立ち向かえない!
この王城を出ると言うことは…王家とナンナー家の庇護を得られないと言うことだ。
むしろ王家に関してはけしかけてくるまであるんだから!
「僕を助けてオズヴァルト!そうしたら僕があなたを護ってあげる!」
「護り護られるのか。私たちは…」
「自信がないの?」
「いいや!」
きっぱりとした声。そうだ。オズヴァルトは無限の暇をずっと鍛錬で潰していたのだから。
僅かな逡巡。そして彼は何かを決意するかのように僕の手を取った。
毎日更新を目指しています。
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