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やり直しの神子は長生きしたい  作者: kozzy


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同じ想いを抱くもの

アルファポリス様で完結済み作品を、少しずつ手直ししながら再投稿しています。


『チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する』アルファポリスより書籍化。


人払いの済んだオズヴァルトの寝室。

僕はここに来る道中、彼に対して絶対にウソはつかないと密かに決めていた。


彼は王妹宮の中で護られてきたが、王妹宮の外で認められることは決してなかった。王妃と、王妃の顔色を窺う小心な人々によって…


ウルリッヒ様と彼は似ているようで微妙に違う。


神子も同じく神殿内で護られるが、神殿の外には最大限の敬意がある。

けど…どれ程敬意を集めようが神子は死ぬ。十年前後で死ぬったら死ぬ。

逆にオズヴァルトは、自由さえ引き換えにすれば生きられる。ジジイにだってなれる。


それはどちらが幸せなんだろう…


だけど一つだけはっきりしていることがある。

ウルリッヒ様にはいつだって僕が居た。


オズヴァルトにも王妹殿下ブリッタ様という盾はいるけど…

ウルリッヒ様にとっての僕と、オズヴァルトにとってのブリッタ様が同じだろうか?…僕はそう思わない。


叔母と甥であるブリッタ様とオズヴァルト。

彼らは親戚だけど友だちじゃない。気の置けない相手ではないだろう。


それにブリッタ様はどれほど王妃と犬猿の仲だろうと、結局は王族、王家を守る側だ。

王妹殿下の前で「くたばれ王家!」とか言えるだろうか?…いいや。無理だって。


だから彼にはむき出しの心をぶちまけられる《《外部の》》味方が、信じられる友人が必要だ。だからこそ僕は…彼と真摯に向き合いたい。


とは言え彼は信じてくれるだろうか…こんな荒唐無稽な話を…




「ってことで、こうして王子と王妃の悪意で死に至ったウル様と僕…えー、僕は死んでなくて、えー…いや、ウル様も結局死ななくて…んー、生まれかわ…、さかのぼ…、えーと、とにかく中身が入れ替わったまま三年前に戻ってきたの」


「……」


「あの…聞いてる?」


「ああ」


「だから知ってたんだよね。王妃のせいでオズヴァルトが墓所で殺されるって」


神妙な顔。けれど彼の感情はわからない。


「ただ僕の知ってる歴史は王子の恋人エマニエルによる入れ知恵だったんだけど…」

「…一介の世話係だったという君が何故それを知っている」

「ゴシップ集めが趣味でして。宮廷画家にワイロ渡して聞いた」


ワイロは例の〝ウルリッヒ様のお姿拝観権”ね。


「呆れた奴だ…」

「世の中こんなもんだって、とにかく今回のきっかけは墓守だよ」

「やはりか…」





オズヴァルトを担いだ私兵と僕は、足場の悪い森の中ではなく、王城中を繋いでいる整えられた遊歩道を使っていた。

時間はかかるがオズヴァルトは長身だし失神者は重い。仕方ない。

だがその途中でオロオロとこちらを窺う墓守を見つけたのだ。


「墓守…やってくれたな。例え庶子でもオズヴァルトは王の子。よくもこんな下劣な企てに加担したもんだよ」

「ヒ、ヒィィ…ち、違うのです…」

「何が違う!」


「殿下のご友人であるエマニエル様が…」


エマニエル!!!

ど、どういうことだ…


「エマニエルがなんだって?」

「あの方が数日前の昼、墓守小屋にいらして仰ったのです」


〝深夜の墓所に現れる頭のおかしい神子の動きを探ってほしい。何か仕掛けるはずだから”


「彼はそう言って金貨を一枚下さいました…」


エマニエルーーー!あいつ…頭のおかしいは余分でしょうが!じゃなくて、…そうか…エマニエルはオズヴァルトじゃなく僕のイタズラを警戒したのか…しまった…


「そ、そうしましたらその…」

「僕じゃなく夜な夜なオズヴァルトが現れたってわけだね」

コクリ「…」


「それでお金になると思ったの」

「わしは…」

「売ったんだ。王の子を。王妃に。それがどんな結果を生むかわかってて」


ゴクリ「…」


「いいか!オズヴァルトが死ななかった時点でお前も断頭台のお仲間だ。死にたく無きゃ今すぐ逃げろ!」


墓守?血相変えて取るものも取らず走ってったよ。使用人専用門に向かってね。




「ごめん。これはエマニエルを脅かしすぎた僕のミスだ」


やりすぎは良くない。肝に銘じとこう。


「どうせいずれこうなったさ。ブリッタ様のお戻りは何ヵ月も先だ」


違いない。一度覚えた外の世界は何度でも彼を誘っただろう…


「神器のスティレット…。もう少し分かりやすい忠告は出来なかったのか」

「あの時点でそれを言ったら信じた?信じないでしょ。それに僕がエマニエルを制御してるのに同じ歴史になるとは限らないじゃん、スティレットはあくまで保険だよ」


それと神官長への仕込み…的な?

次に何か無茶を言ってきたら姿を消した神具を指さして「第二の天罰は下されました」って言ってやるつもりでだったんだよね。


「あの時も思ったが…聡いのだな」


ふっ、小賢しさには定評のあるのがこの僕だ。


「って、あれ…もしかして信じてくれた?僕が…」

「神子の世話係で三年後から来た十五歳のエミルだということをか?ああ信じるさ」


オズヴァルトは苦笑した。〝再生の力”などという不可思議な奇跡が存在するなら、入れ替わりも巻き戻しもあるのだろう、って。


「それにお前は神子と言うにはあまりにも…」


「あまりにも何かな?」


クス…「それでウルリッヒ、望みは何だ」

「言ったでしょ。僕の望みは二つ。ここを出ることと長生きすること」


「…難題だな…」


「そう?僕を殺そうとした奴らの企てはもう潰した。あとはここを出るだけ」

「どうする気だ」


「西の神殿に行く」

「西の神殿だと?」


「もう仕込みは済んでる。あとは上手く西の神殿へと思考を誘導するだけ」


「西の神殿…西の辺境…」


「…一緒に行こうオズヴァルト!僕には信用できる相棒が必要だ。そしてオズヴァルトにもきっと僕が必要」


「何故そう思う」



僕は訴えた。生きてるって実感できないなら死んでるも同じ。それはまさに今のオズヴァルトだと。


ウルリッヒ様を見ていて僕は気付いた。

何故ウルリッヒ様は死を恐れ過去の神子は死を恐れなかったのか。それは彼女たちが崇高な志をもっていたから、だけではない。


彼女たちは穢れ無き乙女として、ナンナー家から一歩も出ることもなく他者や外界との繋がりを断って育てられる。

今のオズヴァルトと同じように。


自己の存在、それはいつだって交わりや関りといった中にいなければハッキリしないものだ。


「だから彼女たちは自我が希薄だった。死ぬっていうのがどういうことか…それすら彼女たちにはわからなかったかもしれない…」

「そう…かもしれない。私は常々考えていたのだよ…。私の生に意味はあるのかと…」


それなら…

死にたくないと願い、復讐しながら逝った前世のウルリッヒ様は生の尊びを知っていたんだろう…


「もう一度言う。オズヴァルト、一緒に行こう。僕があなたを生の歓びを教えてあげる」


籠の鳥(オズヴァルト)はここを出るべきだ。たとえ自然界の弱肉強食と対峙することになっても。




だからって野に放たれて瞬間撃たれちゃ意味ないよね?









毎日更新を目指しています。

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