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やり直しの神子は長生きしたい  作者: kozzy


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北の地へ

その日宮廷会議では王の新たな考えが示されていた。


全員が困惑するなか、以外にも先んじてそれに賛同したのは一見頭の固そうな長老二人だ。


つまりオズヴァルトのおじいさんと神官長の二人ね。


「神官長…本気?」

「ええ。神バルデルスの教えとは本来他者を排するものであってはなりません。それが歪んだのは全て神子という存在があったからでございます」


神官長…ほんと前世軸とは別人みたい…


神官長が言いたいのは、人知を越えた再生の奇跡が人心を惑わし、神の意思があらぬ方向へ捻じ曲げられた、ってことか…


こればかりはバルデルスにとってもさぞ想定外だったことだろう。


「皇国が発展しきれないのはこうして力を蓄えるたびに全てを自ら消耗してしまうからに他なりません。それをかの王が理解できれば良いのですが…」


因みにアードラスヘルムは北に丸投げしているおかげで全体の国力は落ちてない。

ほんと過去の王ってばちゃっかりしてる…


「わかった。僕が皇国への使者にな」

「ならん!」

「なりません!」

「およしください!」

「いけません!」


間髪いれずに猛反対…


フー…「じゃあせめて北の辺境に行く。癒しの必要な人も居るだろうし」


西だけ無事って…戦力が段違いとはいえ心苦しいんだよね。


「北の山岳路整備ってどれくらい進んだの?」

「まだ全体の半分も進んではおりません」


やっぱりか…。ってことは半分以上も徒歩を余儀なくされると。

ちょっといやだな…


「あっ!いいこと思い付いた!」

「なんだウーリ」


「捕虜を連れていこう!それで捕虜たちに整備させよう!」


この界隈の戦争とは殺るか殺られるかの世界。

イシュトバーン侯爵のように、利用価値のある人しか生きて捕えたりしない。(経費がかさむしね)


だからこそ、利用価値のある捕虜にはそこそこの待遇が約束されるものなのだが…

残念ながらここにいる捕虜たちは一般歩兵。つまり使い捨ての駒だ。


正直…、このまま捕えていても奴らは交渉材料にすらならないただの大飯ぐらい。

なら食いぶち分の仕事をしてもらってもバチはあたらない!戦争捕虜に重労働…なんて、割とどこの国でもやってることだ。


西と南西、捕えた兵の数は合わせて五十人は下らない。(ほら、昏倒させて無傷でバンバン捕まえたから…)

そして奴らは筋肉ゴリラ。


アードラスヘルムの民がコツコツ整備するより絶対早いし、どうせいつかはその道を使って皇国に返すんだから効率いい気がする。


「なるほど、良い手かもしれん」



北の辺境にはすぐさま神子が向かうという伝令が送られた。


そして…


「捕虜を従わせるのに君は力を使うのだろう?」

「い、いやあ…」

「火を見るより明らかだ」


信用ゼロ。


二度あることは三度ある。

僕の枯渇を心配したオズヴァルトは同行すると言い出した。


「ウーリ、何も私は君恋しさに無茶を通そうとしているのではない。これは和平に向けたはじめの一手だ。事が上手く運べば王の調印が必要になる。その時王足る私がここにいてはなにかと時間がかかりすぎる」


なるほど。道理で補佐官たちが反対しないわけだ…


「エド、荷物をまとめてくれ」

「畏まりました」


エドはオズヴァルトの従者、さすがに今回は付き従…


「じゃあ僕も行くね」ワクワク

「ウル様?」


「だって戦に行くわけじゃないんでしょ?」

「そりゃそうだけと…険しい山越えだよ?」


「平気!山岳山羊さん見れるかなぁ?北の辺境…どんなところだろう?」ウキウキ

「物見遊山じゃないんだから…」


どうもオズヴァルトといいウル様といい、過去籠の鳥コンビは広い世界への憧れがね…強くてね…



ともかく、こうしてかき集められるだけの食料をかき集め、『捕虜の大移動』を兼ねた北への行幸が決まったのだった。



「さー!サクサク働いて!」

「クソッ!俺たちを何だと思ってやがる!」


「労働力…だけど?」

「なんだと!」


「よせやめろ!また生命力を吸われるぞ!」

「チィッ!腐れ神子が!」


失礼な!自分達の帰路を自分達で整えてるんだから良心的でしょうが!

こんなの他国なら鉱山で採掘とかだからね!


彼らはアードラスヘルム兵に囲まれながら、それでも大人しく馬車道を切り開いている。


彼らがしているのは細い山岳路に馬車が通れる道幅を確保することと、大きな岩を取り除いて路面の凸凹をざっくり平らにすることのみ。

あとの微調整は追々ゆっくりってね。


そんなわけだから馬車の乗り心地はすこぶる悪い。徒歩よりマシってだけ。でも贅沢はいえまい…


よく獰猛な皇国の兵が逃げ出さないなって?


逃げ出したところで所詮ここは食料すら満足に手に入らない高地の山岳。人質にできそうな人すらろくに住んでいない。


つまり無事国に帰りたいのなら、このまま労働してたほうが、食と寝床が保証されるぶんマシなんだよね。

いやー、一日二食、結構まともな食事をだすんだから太っ腹だよねアードラスヘルムって。さすが豊かな国!


「エドー!ウルリッヒさまー、あそこ見て!鹿がいるよ!」

ホクホク「ほんとだね。鹿だね」

「追いかけてはだめですよ兄さん」

「はぁい」


可愛いなあ…、だからつい構っちゃうんだよね。






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