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「大変ご心配おかけしました。」
一通りの掃除が終わってもう夕方かという時間。
目の前に飛んできた手紙を捕まえたところ差出人はコウヤだった。
「そういえば私、みんなで昼ごはん食べて談笑してるところで暖炉の火に攫われたんでした…。」
手紙の内容は無事なら早めに知らせてほしいという内容だった。
(心配してるだろうなぁ、ミチカとかとくに…。)
姉さんも横からその手紙を読んだのか、早く行ってあげなさいといわれた。
2人で門の外に出て再び鍵を閉める。
とりあえずコウヤ宛に今から寮に行って何があったか説明する旨を書いて手紙を飛ばした。
専用車両に乗ってみんなの寮に1番近い停留所まで約1時間。
この距離だと手紙の方が早く着くだろう。
「ミリアって話題に事欠かないよね。」
3022棟に着いて最初に謝罪。
そして今日会ったことを話した後にそう言ったのはユウガだった。
手紙を受け取ってから呼びに行ってくれたのか、寮の違うコナミも来ていた。
「本当に火に巻かれた時にはどうなったかと…。」
「そういうティーもあるんだね。」
3022棟のブラウニーズがみんなにココアを出してくれた。
「それで、その冬祭りの準備があるからミリアはしばらく忙しいと。」
「そうなると思う。」
詳しくは明日の午後聞きに行こうという事になったが、しばらくは準備に追われる事になりそうだ。
「午前中はできるだけ授業に出るよ。実技の授業は明日ユノカ先生に相談する予定。」
「何か協力できることがあったらいつでも言ってね。」
「ありがとう。」
翌日午前中のうちにユノカ先生に相談に行けばあっさりと了承が取れた。
「クラブの活動だものね。それにミリアさんは実技他の子たちよりずば抜けてできるんだから授業欠席するくらい気にしなくていいのよ。」
教師としてそれはどうなのだろうとは思ったが、一先ず授業の懸念点は解消されてよかった。
歴史の授業が終わり急ぎ気味に12号館を出る。
お昼ご飯を車内で食べながら姉さんと待ち合わせの場所まで移動する。
待ち合わせは6時の街の停留所。
到着すればもうすでに姉さんは来ていた。
「遅くなりました。」
「私も今来たところよ。」
この停留所を利用したことはなかったが、自宅からでも歩けないことはない場所。
そして何よりこの辺りは何もない。
「あそこ見える?」
自宅がある湖の方とは反対を姉さんが指差す。
「あれがバラ殿ですか?」
そちらの方向にあるのは建物というより建物群とでもいうべきだろうか。
「今日の目的はバラ殿を見学させてもらうっていう体で、クチナシ様から書類やらなんやら必要なことを教えてもらうことよ。」
それじゃあ行きましょうか。と言い姉さんが歩き出したので着いていく。
「ミリアの華名はリリーだったわね。リリーって呼ばれるのに慣れなきゃね。」
「その華名ってなんですか?」
そういえばと思いこの移動中に聞く事にした。
「華名っていうのは花園メンバーで神殿を預かる人だけがつけられるあだ名みたいなものよ。だいたいはその神殿の花の名前がそのままつくか、その花に関連することばになるわ。」
なるほど、それでユリ殿だけどリリーということかと納得する。
「昨日いろいろ教えてくれたチヨミとシモミも華名よ。本人たちが気に入ってるから普段から周りもそう読んでるわ。あとスミレのマダムもそうね。」
本名より定着する名前ということかと少し恐ろしいものに感じた。
「あの2人の本名知ってるのなんて学生だと同じクラスであの2人が入学するより前に来てた数人だけじゃないかしらね。」
「それはなんというか…。」
「いいんじゃないの。だいぶ前に2人に聞いたことがあるけど、2人とも生まれ変わったものだと思って受け入れてるって笑って言ってたわよ。」
そう言われてしまえば赤の他人があれやこれや言うのは違う気がして触れない事にした。
そうこう話しているうちに真っ白な壁の前まで来てそこから壁沿いに歩く。
壁はずいぶんと高く中を伺うことは簡単にはできそうもない。
「あれが門ね。」
姉さんがそう言ったので先の方を見ると、昨日訪れたユリ殿とはまた違うタイプの門があった。
その門は開いてはいなかったが中をうかがい見ることはできた。
まだ何もしていないのに2人で門の前に立つとすぐに中から声をかけられた。
「いらっしゃい。ようこそ私のバラ殿へ。」
そこにいたのは昨日西太后と呼ばれていた女性だった。
「ごきげんよう、バラ姫様。」
「ごきげんよう。」
姉さんの挨拶に続いた。
「さぁ、入っていらっしゃいな。」
その言葉に呼応するかのようにほんの少しだけ門が動いた。
「…ミリア。」
姉さんがその門に触れようとしたが、すぐにやめ小さい声で先に行くようにうながしてきた。
門を押せば小さな金属音がしてすんなりと開く。
「そう、正解よ。怪我しなくてよかったわね、アズハ。」
そう言いながら西太后は建物に向かって色とりどりの薔薇の花が咲いた道を歩いて行く。
(私が開ける必要があったけど、姉さんが開ける可能性もあった。そんな些細な違いで怪我…?)
疑問は残るが、2人で入ってきた門は勝手に閉まったため西太后の後ろをついていくしかない。
悪い人ではないんやで…(作者、心の叫び)




