10
部屋の中も外の光があったとはいえ少し薄暗く感じたが、廊下はより一層薄暗く感じた。
廊下には点在する蝋燭の光があるだけで、より暗い。
「花園のメンバーには火とか炎を扱うティーを持った人が多いの。」
辺りを見回していると姉さんが教えてくれた。
「もちろん私やミリアやあの双子みたいに違う子もいるけど、少なくても西太后と東太后、それにその補佐は火に関連したティーよ。」
暖炉の火を通してここに呼ばれたのもティーを使ったのだろうが、今のところどういうティーなのか想像もできない。
「そういう人たちは身近に蝋燭や松明、暖炉があると落ち着くんですって。だからここはいつもこの薄暗さよ。」
そう言いながら先を歩く姉さんの後ろをついて歩く。
建物の外に出ればそこは大きな温室のような場所だった。
ほんのりと暖かい空間に青々とした植物の匂い。輝くように咲き誇る色とりどりの花。
「この温室は一般の人にも解放されてる花園自慢の温室よ。そしてその中にクラブハウスが建ってるわ。」
建物の中に建物を建てるとわ。と感心しながら、真っ直ぐ温室を出る。
「ミリアはくるの初めてよね。ここは10時の街よ。」
外に出ると茶会のクラブハウスがある街とはまた違う街中だった。
「なんだか賑やかですね。」
「この街は芸事の店が多いからそう感じるのかもね。」
よく見れば楽器やキラキラと輝く布を店頭に飾った店、それに刃物をずらっと並べた店がある。
「何か得意なことを1つ見つけてそれをすごく伸ばしたい人たちが多く集まる街よ。」
「なるほど。」
「ちなみにグラムマーの学舎もこの近くよ。」
学園に入学してそれなりの時間が経って、自分のやりたいことを見つけつつある学生のチャレンジの場という面もこの街にはあるのかもしれない。
いつも通り専用車を呼び、気の進まなそうな姉さんと乗り込んでから操作盤を操作する。
いつもは番号ばかりの操作盤に薔薇のマークが追加されていた。
そこを押すとズラッと花の名前が12並ぶ。
これで行きたい神殿に迎えるのだろうと、ユリを選択した。
「姉さんも巻き込んでごめんなさい。」
動き出した車内の中で改めて姉さんに謝る。
「いいのよ。」
「でも、姉さん…。」
「あなたが花園の招待状を受け取ったときこうなることはわかってたから。」
あの日、姉さんは2番目に花園の招待状を開けさせた。
その時から今日が来るのを覚悟していたとでも言うような口調だ。
「私は過去に先輩に守ってもらって逃げることができた。今それなりの覚悟と地位ができたから、今度は私が守る番。それだけよ。」
そう言いながら笑う姉さんは、安心感もあるがどこか大きな傷を隠しているようにも見えた。
いつもの風景を少し通り過ぎた頃、高度を落としていく事に気がつき外を見る。
「学園施設がある街は賑やかだけど、この辺りは特にそう言ったものもないから静かね。」
姉さんがそう言う。
その通りでこの辺りは街というよりは住宅地という感じだ。
時より何かしらの小さなお店があるが圧倒的に住居が多い。
そうこうしているうちに車両は一つの大きな門を構えた施設の前で停まった。
降りて1度正面に立つ。
左右の柱についている門灯に灯りはなく、門扉にはわざとらしく巻かれた鎖にこれまたわざとらしいほど目立つ錠前がかけられている。
(見ただけで明らかに閉まってますってわかるようにしてくれてるのかな。)
見た目で受けた印象だ。
鍵を取り出し錠に差し込めばすんなりと開く。
鎖を左右の門柱にあったフックにかけ、門扉を押せば思った以上に簡単な力加減で開く。
まっすぐに延びる石造の道。
その道以外は白い玉石が敷き詰められている。
道の先には建物がひとつ。
数段の階段を上がった上にあるのは台に乗せられたような柱と屋根だけの簡素だが神聖さの伝わる建物。
「まぁ、祭り以外の時に来たら何もないわよね。」
姉さんが門を閉めながらそう言う。
「祭り期間中はこの道の左側に机を並べて1人1人手わたしでお土産をわたす。」
「そのお土産って具体的にはなんですか?」
そういえば話の中で具体的に何かというのは聞いていなかった。
「あ、そういえば言ってなかったわね。集めて回るのは紐よ。」
「紐?」
「そう。12ヶ所巡って全部で12本9色の紐をもらうの。」
そう言われてもまだピンとこないところがあった。
「いい縁を結べますように、導きがありますように、良縁が切れませんように。まぁ、いろいろと縁起が良いのよ。」
「なるほど。」
それからとりあえず敷地内を見て回ろうということになり歩く。
と言っても建物以外に何かあるわけでもなく、建物の背面側も少しスペースはあるが何もない。
木の階段を上がり建物の中に入って見れば壁は背面にしかなく、それ以外の3方向は梁から専用の布を下げるようだ。
机などの道具は建物の内中央にまとめて置かれていたので、そこからどういうふうに使われていたかおおよそ推測できた。
「まずは掃除ね。それからここをどう飾るかきめないとね。」
まずは掃除をする事になり室内のものをとりあえず影を広げて中に入れた。
「ますます便利に使えるようになってきたわね。」
姉さんが頭を撫でながら褒めてくれる。
その時、別の誰かの視線を感じ門の方を見る。
「どうかした?」
「誰か来客ですかね?」
姉さんも少し遅れて門を見る。
「あら、さっき閉めたはずだったけど。」
門がほんの少し開いている。
姉さんと2人で門の方まで行き外を見るが誰もいない。
「風か何かで開いたのかしらね。」
今はそういう事にしておこうと再び門を閉めて建物内の掃き掃除に戻る。




