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それは果たして面白がっていいのかと思いつつ、それまでずっと気になっていた言葉を拾う。
「太后って大昔の偉い人の奥さんとかその母親を指す言葉ですよね?」
「そうだよ。」
「よく知ってるね。」
もはや物語の中にすら出てこないような言葉。
昔、母親に薦められて読んだ本に出てきて意味を聞いた記憶が鮮明に残っていたためその意味を理解できた。
「別に誰かと結婚してるとかじゃなくて、花園の代表を昔から太后とかお姫様とか妃殿下って呼んでたの。」
「今代の代表は西太后ね。それから今のナンバー2を東太后って読んでるわ。」
「まぁ、東太后に関しては華名のカトレア様って呼ぶ場合がほとんどだけど。」
「西太后と東太后はそれぞれトランプで、花園代表に選ばれる条件のクイーンを所持しているわ。」
シモミとチヨミの杖先からそれぞれ木でできた女性と氷でできた女性の人形が作られる。
「先代様が引退した時に次代を選ぼうってなってさぁ大変。」
「当時トランプ所持者は2人で期限内にクイーンが現れなければ慣例としてメンバー全員での投票によって次代の代表を決めるはずだった。」
紙芝居で物話を話すように2人が人形を動かしながら話す。
「私たちには理解できないような次元の努力を重ねた結果、2人のトランプが成った。」
「2人が2人ともクイーンに選ばれたからもう大変。」
候補を決めるためのトランプが成った結果、何も解決しなかったと。
「そこで当時のメンバーで投票を行った結果、現在の西太后が代表になりましたとさ。」
「昔話はここまで。」
2人が杖先から出していた人形が空中に散って消える。
「12の神殿はまず6時の街に西太后のバラ殿。12時の街に東太后のカトレア殿。」
シモミが大きな氷の円を作り出す。
「1時からシンビジウム、フリージア、ワスレナグサ、カスミソウにスズラン。」
氷の円にチヨミの杖から伸びた蔦が言葉に合わせて葉っぱで目印をつけてくれる。
「7時にミリアが預かったユリ。その隣からヒマワリ、ダリア、ガーベラ。そして私たちのキク。」
円の外周12ヶ所、綺麗に埋まった。
「これが今年の神殿並びね。」
「すぐには覚えられないと思うけど、後でクチナシ様が資料くれるよ。」
「さっきミリアに鍵をわたしてくれた人ね。」
姉さんの言葉に先ほど受け取った鍵を改めて見る。
「やることは祭りの期間中にその鍵で神殿の門を開けること。」
「そして日が暮れたら閉めること。」
つまり鍵の管理人に指名されたということ。
「神殿の中は好きに飾っていいわ。」
「それを楽しみに見にくる人もたくさんいるもの。」
「それから必ず神殿の見える場所に花を飾ること。」
「毎日手入れを忘れずにね。」
自由な面と制約があるということらしい。
「どうすればいいかわからなかったら、他の神殿を見て回るといいわ。」
「今年新しく預かった3ヶ所以外は昨年と同じ人が配置されてるから、もう準備を始めてるもの。」
2人が作った円に茂る葉っぱが2時と7時と10時にあたる部分だけ枯れ落ちる。
「オススメはやっぱり6時の街のバラ殿ね。」
「絶対に真似できないけどすごいのよ。」
そういうと2人は杖を振り、作っていたものを消す。
「他に何か聞きたいことはある?」
「わからないことがあったら言ってちょうだい。」
そう言って2人が同時にこちらを見てくる。
「ありがとうございます。何もわからないうちに時間だけが過ぎていくことがなくなって安心しました。」
とりあえず感謝を伝える。
「私たちもミリアには感謝してるのよ。」
「そうよ。あなたは久しぶりの後輩だもの。」
2人が髪飾りを外し胸の前に大切そうに持つ。
「花姫はいつも人手不足。」
「私たちは2人で1つの神殿を管理してるわ。」
「でも、いつ別々の神殿にされるかドキドキしてた。」
「今年こそいよいよかなって思ってたら、あなたがきてくれた。」
「新しい子が来たって聞いてとても嬉しかったわ。」
「あなたならきっとここに無理やり連れてこられた時も逃げられたはずなのに、逃げないでくれてありがとう。」
2人に感謝されていることはよく伝わる。
正直なところ何が起きたか理解することがままならず、逃げるという選択肢を取れなかっただけだ。
「さて、2人ともまずは自分の神殿を見に行ってごらんなさいな。」
「そうね、わからないことがあればいつでもキク殿にいらっしゃいな。」
そう言われて姉さんの方を見る。
「行きましょうか。」
姉さんが立ち上がる。
「またね、ミリア。」
「またね、アズハ。」
2人に見送られながら部屋を出る。




