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「それで、土日はほとんど寝て過ごしてたの?」
「…うん。」
月曜日。
クラスミーティングが終わり1211室にミチカと移動して学校に来なかった間に何があったのかと聞かれたので話をする。
「ずっとティーの力を使ってたってことでしょ?それなら疲れて当然じゃない。」
「そういう意識なかったんだけどなぁ。」
「帰ってきて緊張の糸が切れたとかそういうことなんじゃない?」
「それもそっか。」
「1日約8時間、それを2日間。帰りはもう1人同行者が居たんでしょ。やっぱりミリアの能力ってかなり強いわよね。」
つい先週のこと、能力の使い方を自分なりに研究したコナミがペン先から出したものをどれだけ大きく広げられるかという話になった。
多目的室で限界まで塗り広げること数分。
部屋の広さの約1/5ほど広がったところで限界を迎え、コナミがペンを設置面から離した途端霧散した。
その時にミリアならどれくらい広げられるかと聞かれた。
入学時の実技試験でのことを話し、後学のために見せてほしいと言われたので影を広げて部屋を満たす。
数秒待ってから戻すと、その場にいた全員が影の中の奇妙な感覚にしばし呆けた。
その後にそもそも能力の根源が違うからなどと色々と言い訳をしたが、やっぱり異常性が違うと気持ち距離を置かれた気がした。
「それよりも急に寒くなったよね。」
とりあえず話の方向を別の方向に向けようと次の話題を口にした。
「ユウガが言ってたけど、この辺りは早ければ今月中頃に雪が降り始めるらしいわ。」
元住んでいたところでは年に数日降れば大騒ぎ、積もれば大慌てといった感じだった。
「室内は快適よね。」
急に寒くなったためか、Sクラスが使う1階の部屋の暖炉が稼働している。
1211室に入ってきた時にブラウニーズがその小さい身体を一生懸命に動かして暖炉の火を調整しているのを見た時にはミチカと一緒にハラハラしたが、何事もなかったかのように火かき棒とバケツを持って出ていった。
「雪が積もるのは苦手だなぁ…。」
昼食をみんなで食べ終えた後、そう言ったのはテルマだった。
「テルマの育った街もあんまり雪の降らないところだったの?」
「そうだよ。降っても積もることなんて滅多になかったし、寒いのは苦手…。」
「俺は結構好きだけどな。」
雪に対する捉え方も人それぞれといったところだろうか。
さて午後は何をしようかと考えていると、パチパチと暖炉の火が爆ぜる音がやけに大きく響いた。
暖炉に近寄ると先ほどまで薪の内側が赤く時より小さな火が立ち上る程度だったのに、いつの間にか轟々と火が上がってる。
「燃えやすいものでも薪の間に入ってたのかな?」
そう言いながら火の近くによりその様子を伺う。
「誰か暖炉に何か入れた?」
少し後方に居たミチカが他のみんなにそう問いかけている間にも火はどんどん大きくなっていく。
なぜだかその火から目が離せない。
不思議な感覚に一歩下がろうとした時だった。
「ミリア!!」
火が急に何倍にも膨れ上がり暖炉を飛び出した。
大きな手のような形を作ったかと思えば、強い光に視界が包まれる。
(熱くない…?)
確実に火に触れているのに熱さを感じない。
一瞬の浮遊感と引っ張られるような感覚がして、再び床に足が付く。
「お呼びいたしました。」
まだ目が強い光の影響から戻ってきていない間に聞こえてきたのは知らない女性の声。
「ワマ、ありがとう。」
さらにもう1人声が聞こえる。
だんだんと戻ってきた視界に映ったのは知らない部屋。
今の状況を簡単に表せば、知らない部屋にどうやってか連れてこられてたくさんの人が座る大きなテーブルと暖炉の前に立っている。
(みんな学生みたいだけど女子生徒ばかり…。)
机の反対側に1人、右側に6人左側に5人。
さらに場所はバラバラだが立っている人も2人か3人居る。
まだ余韻なのか大きく火の上がる暖炉を背にしているせいか個々の顔はよく見えないが、その服装的特徴から明らかに女子生徒ばかりということがわかる。
「あぁ、やっと会えた。」
1番奥に座っている女性が声を上げる。その声は歓喜に満ち溢れていた。
「初めまして、新しい瑞花。そして、ようこそ花園へ。」
その言葉に一瞬頭の中で理解が追いつかず、思わず後ろによろけた。
「ミリア!」
聞き覚えのある声とともに着席せず立っていたうちの1人が駆け寄り支えてくれた。
「…姉さん?」
近寄ってくれたおかげでしっかりと見えたその顔はアズハだった。
「アズハはその子のブーケットだったわね。そのまま横に居てあげなさい、その方が少しは安心できるでしょう。」
そう言われて姉さんは何も言い返さなかったが肩を掴む手が少し強く握られたのを感じた。
「さぁ、みなさん。冬祭りの準備をしましょう。」
どうやら冬祭りとやらの話し合いの場に強制参加させられている。
「今年の花姫たちでまだ配置が決まってないのは?」
「フリージアとガーベラ、それからユリです。」
「それなら…。」
わからないところで話がどんどんと進んでいく。
「ミリア。」
「はい…。」
急に名前を呼ばれて反射的に返事をする。
「ユリ殿をあげる、頑張って勤めなさい。」
「西太后!」
奥の女子生徒の言葉に異議の声を上げたのは右隣の女子生徒だった。
「人手不足よ。キク殿の2人を分けるわけにもいかないでしょ?」
優しいが異論を認めないとする言葉に返すものはいなかった。
「華名はそうね、リリーで。ユリよりも可愛らしい名前が似合うわ。アズハ、そのままその子に付いて色々教えてあげなさい。花姫候補の子も早いうちに何人か手伝いに向かわせましょう。」
着席せずに立っていたうちの1人が静かに近寄ってきて何かを差し出してきたので受け取る。
片手よりも大きく仰々しく古風な形をした鍵だ。
「カトレア様もそれでよろしいですか?」
「バラ姫様の思う通りに。」
今度は左隣に座っていた女子生徒が答えた。




