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1度、目が覚める。
何が起こったのかわからないが、一瞬影の中が揺れた。
見回せばユイトは起きていない。
(と言うことは私にだけわかる感覚…?)
その可能性が高いが真相はわからないので外に出た時に聞いてみよう。
目が覚めてしまった。
ブランケットの温かさを手放すのは惜しいが、再び寝るには意識がはっきりし過ぎている。
本でも読むかと思い影の中に手を入れたところで思いついたことがあり、本とそれから紙にペンを取り出した。
サッと書き最近教えてもらった折り方で紙を折っていく。
(レクレーションの内容も意外と役にたつ…。)
紙をいろいろな形に折るのはテルマが教えてくれた。
便箋も封筒もないけど、簡易的な手紙ならこれで十分だ。
隣で寝ているユイトを見る。
その視線に気づいたティーが宙を泳ぎながらこちらに寄ってくる。
「もし彼がまた辛そうだったらわたしてくれますか?」
小さく折られた紙とこちらを交互に見る。
そして何かを納得したようにそれを咥えた。
(飲み込んだように見えたけど大丈夫だよね…。)
大丈夫だと信じよう。
しばらく本を読みながら過ごす。
時々ユイトのティーがかまって欲しそうに寄ってきたりする。
「ミリア、ユイトもう少ししたら出られるから準備してくれ。」
そうタモンの声がきこえ、ユイトが起き上がる。
「ありがとう。」
クッションやブランケットを片付けているとユイトが言った。
「少しでも落ち着けたならよかったです。」
「出てきていいぞ。」
紐をつけている方の袖を掴み、紐を解いてしまう。
「出ます。」
ユイトがうなずいたのを確認してから外に出る。
出た先は外ですっかり日は沈んでしまっていた。
「相変わらず便利だね。感知系にも引っかからないのかな?」
「どうだろうな。少なくとも乗員名簿は反応してたからわかるやつにはわかるんじゃないか?」
出た先に居たのはタモンとオベロだった。
どうやら昨日、外出届を出した塔まで帰ってきたようだ。
「ユイト、送っていくよ。」
「ありがとうございます。」
オベロのティーはすでに大きな姿になっていつでも飛び立てる準備はできているようだった。
こちらに気づいてその体格からは予想もできない可愛らしい声で一声鳴き声を上げた。
久々に会ったので挨拶をしてくれたのだろう。
「それじゃあ、2人ともまたね。」
オベロとユイトが乗るとすぐにティーが立ち上がり、オベロがその一言を言うとあっという間に強い風を巻き起こしながら飛び立った。
「俺たちも帰ろう。」
タモンがそう言うと事前に呼んでいたのであろう専用車両に乗り込んだ。
「…先輩。」
「なんだ?」
動き出してしばらくした頃、思っていたことを聞くことにした。
「私たちが影の中に入っている間に何かありましたか?」
「どうしてそう思う?」
「一瞬、揺れを感じました。私しか感じてなかったみたいですけど。」
そう言うとタモンは小さく唸り声を上げた。
「ミリアはその時何があったかは正確にはわからないんだな。」
「わからないです。」
残念ながらこちらに意識が向いていないことは影の中ではよくわからない。
「質問を変える、何が起こったか予想はできるか?」
「大きく感情が揺れたか、ティーを使用したかされたか。」
可能性があるとしたらこの辺りだろうかと言うところを言ってみる。
「ほぼ正解だな。俺がやったのはティーを使って威嚇した。それで影の中にも何かしら影響があったならすまない。」
威嚇しなければいけない何かがあったのだろう。それは聞いていいのか悩む。
「謝ってもらうことではないです。それが分かっただけでもまたひとつティーを理解できたと思います。」
「そうか…。」
私が影の中にいる状態でタモンがティーを使うことを躊躇しないかと少し不安になりしっかり言葉で伝えた。
「中で2人、何か話したか?」
タモンはユイトと中で過ごした時間の事を聞いてきた。
「お互い簡単な自己紹介と、なんでかくまってほしいのかの話をしました。あとはティーが宙を泳ぐ姿がとても綺麗でした。」
「やっぱりあの兄弟は異様だよな。」
しっかりと心当たりがあるようだ。
そうでなければわざわざかくまったり送りを用意したりしないかと納得もした。
「あいつのティーについては何か聞いたか?」
「豊穣の力があるって言ってました。だから時々12号館で私を見たことがあるとも。」
「ミリア、ユイトが言わなかった事を俺が言うのはどうかと思うが一応伝えとく。」
タモンが一呼吸間を開ける。
「あのティーの力は生きるもの生きていたものの生気を食べて豊穣の力を与える。」
かなり難しい言葉で理解ができない。
それを察したのかタモンが続ける。
「ただ豊穣の力を蒔いているだけの力ならよかったが、その力はどこから来るんだろうな…。」
無から豊穣の力を生み出しているわけではなく、その材料が必要ということ。
「というのが多くの学生が噂している海底神殿の主に対する噂だ。根も葉も無いというわけじゃないが、わからないことをオカルトにとらえて悪い方向に考える。その結果ユイトは孤立した。」
ひとりぼっちを嘆いていたのは何も兄弟の問題だけでは無いようだ。
「本人は知ってるんですか?」
「どうだろうな。」
話す限りではそのような話は出てこなかったが、知られたくなくて隠した可能性もある。
「もしミリアが仲良くしたいなら止めない。でもそういう噂と周囲からの目があることだけは知っておいてほしい。」
「私は…。」
自分の思った事を言おうと思ったが次の言葉がすんなりとは出てこなかった。
「また、私を頼ってくれるならその時どうするか考えようと思います。」
「聞かなくてもいい話を聞かせてしまったな。」
ごめんとタモンは謝った。
家に着けば彼女が玄関を入ったところで迎えてくれる。
影の中から荷物を取り出せばすぐにそれを受け取り、ダイニングテーブルを指差す。
まだ料理はのせられていなかったが夕飯の準備をしてくれていたみたいだ。
「ごめん、あんまりお腹空いてないんだ。先にお風呂入ってもいい?」
そう聞くと彼女はうなずいた。
ゆっくりと風呂に入り、ほんのり蜂蜜の香りがするホットミルクをたっぷりのマグで飲み十分に身体を温めたところでほとんど意識のないまま就寝準備を手伝われてからぐっすりと眠った。
翌日は土曜日ということもあって朝遅い時間まで寝ていた。
(影の中では全然疲れた感じはなかったけど、これだけ寝ても寝足りない気がするのはやっぱり疲れてるのかな。)
寝ている間に1度姉さんが訪ねてきたようだが、彼女に追い返されたのか寝顔を見たのか短い手紙だけ彼女に預けて帰ったようだった。




