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「複数のクラブに選ばれて、更にトランプまで興味を持ったとは入学早々大変だったと思う。」
「・・・・。」
なんと返せばいいか。
まだというより考えることを後回しにしていることが多すぎて大変さは感じてないが、今はそれが返答に適切とは思えなかった。
「というより大変なのはこれからよね。同級生だったり上級生にだって絡まれる可能性があるわ。」
「登下校時に絡まれる心配がないだけで一つ不安が取り除かれるな。」
「ブーケットの集まりはこれまで通り?」
「その方が都合がいいだろう。」
勝手に話が進んでいくので、口を挟まず紅茶を飲みながら待つことにした。
「あとはクラブをどうするかね。」
「それは本人の意思が最優先だろう。うち以外に招待状は?」
「花園・世界樹・ハンター。」
「それからトランプか。」
「参加は本人の意思だとしても、特別な呼び出しがあるまでは一度うちで預かった方がいいんじゃない?」
「それは俺たちには決めることができない。」
少し間を置きでもと続ける。
「俺もそれがいいと思う。」
姉さんとタモンが同時にカップを手に取る。
そしてタモンは一口口をつけたあと、カップを置き立ち上がった。
テーブルを迂回し座っている横まで来たかと思うと床に膝をつき目線の高さを合わせてくれた。
「もし、何かやりたいことがはっきりと決まっているなら断ってくれてもいい。そうでなければ見つかるまで、俺に守らせてはくれないだろうか?」
そう言い差し出された手はなぜだかとても神聖に感じられた。
姉さんの方を見る。
「ミリアが信じれると思うなら、その手を取ればいいわ。」
そういう話ならと決意を固める。
「よろしくお願いします。」
差し出された手に手を重ねると優しく握り返してくれた。
「こちらこそ、よろしく頼む。」
そう言うと、もう一度立ち上がって元座っていた位置に座り直した。
「もろもろの手続きはこちらでやっておこう。他のクラブも俺が通知を出せば一先ず落ち着くだろう。」
「とりあえず雪が降り始めるまではね。」
「その先のことはその時になってから考えればいい。」
話が落ち着いたところでポンポンと肩を叩かれる。
見てみると彼女がダイニングテーブルの方を指差していた。
「どうしたの?」
「あぁ、軽食を用意してくれたのね。そういえばお昼とはん食べてなかったかからね。」
姉さんがそう言ったことで暖炉の上の壁にかかる時計を確認した。
もう気がつけば2時半。
お昼ご飯というにはすっかり時間を過ぎていた。
「俺はいいから2人とも食べてこい。」
タモンはそう言うとバッグから紙束を出し、何か確認をし出した。
彼女はそんなタモンの為にお茶のおかわりを注いでいた。
言われた通り姉さんと食事を取るためダイニングテーブルの方に向かう。
テーブルの上にはサンドイッチと小さな器に乗ったサラダ、それにいくつかのカットされたフルーツと少し大きめのマグに入ったスープがあった。
「そういえば、先輩。今日も新入生が来てたのよね?どうだった?」
「あれはダメだな。」
適当な本を下敷き代わりにして書類に書き込みながらタモンが答える。
「ティーが全く言うことを聞いてなかった。幸い攻撃性の高いやつじゃなかったから大丈夫だったが、2ヶ月近くもあって何してたんだか…。」
言葉というよりほとんどため息のような口調だった。
「でもほとんどの生徒がそうなんでしょう?ミリアはちゃんと制御できててえらいわね。」
姉さんに褒められてホッとしたのかスープの味にホッとしたのか自分でもだいぶ緩んてるなと思うような表情で頷いた。
「ティーを正しく理解してやることはクラブ加入の最低条件だからな。他のやつもさっさと退室したから俺も早く出てこっちに来れた。」
「CかDってところ?」
「そうだろうな。レボートもほとんど見た目の事しか書いてなかったみたいだし。」
レポートとは筆記試験の二つ目にあったティーについて自由に書いていいと言われたあれのことだろう。
「それで言えばミリアのレポートはよくできていた。実技試験が一瞬で終わってしまったから、能力確認のために読ませてもらったがその場に居た全員が感心して欲しがった。」
「時間はいくらでもあったので、暇つぶしの遊びみたいな物です。」
褒められているのはわかっているが、こう短期間に何度も褒められるとつい反発してしまいたくなる。
「それができない人の方がほとんどだからね。」
「それで、一つ気になることがある。」
「なんでしょうか?」
タモンは書いていた書類を下敷きにしていた本ごとテーブルの上に置いた。
「あのレポートに書いていることが全てじゃないだろう?」
「何か根拠はありますか?」
「あくまで俺が感じたことではあるが、通過するべき過程が抜けているように感じた。」
鶏は卵から鶏の状態で生まれるわけではなく、ひよこの状態を必ず挟む。
影が動くから物に擬態させる。
擬態した物はどこまでのことをできるのか。
物でない場合にはどうなるのか。
発想の連続は稀にしりとりのように美しく並ぶ。
あえて書かなかったことがその美しさに歪な綻びを作ってしまっていた。
「それから実技試験の内容は満点だったが、見られていることがわかっていて見えないようにクリアしたとも感じられた。少なくとも俺からは何も見えなかった。」
来るまでに1人ではできなかった疑問の一つが解決した。
延ばした影の中で起こっていることは外部から一切見えないということが今の言葉で判明した。
「確かに昨日いくつか書かなかった事はあります。」
「理由は?」
「私自身が能力の今の所の限界を見つけられていないからです。」
「限界?」
そう疑問を言ったのは姉さんだった。
「書いてなかったことの一つがこれです。」
座ったまま両手に大きさの違う皿を持つ、先に大きい方を落とし影の中に入っていくのを確認してから小さい方も影に落とす。
そして影に手を入れて大きい方の皿だけを取り出す。
「収納?」
「だけなら簡単だったのですが…。」
取り出した皿をダイニングテーブルに置き立ち上がる。
ゆっくりと一呼吸してから一歩踏み出し影の中に入る。
そして数歩、歩いたところで出るとちょうど暖炉の前だった。
「これを完結的に説明できますか?」
2人とも返答に困った顔をする。




