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姉さんに手をひかれ再び談話室に向かう。
窓の外の景色は陽が沈みきっていない薄明かりの雰囲気が広がりかろうじて夜ではない空気を作っている。
談話室に近づくにつれ食欲を刺激するいい匂いが強く、複数人の話し声とが段々と大きくなってくる。
「おっ、アズハ。やっときた。」
「とりあえず、新入生はアズハの隣な。」
大きな卓はすでに1人ずつ食事の準備が半分ほどできていた。
「ほとんどみんな居るみたいだから、食事前に自己紹介しちゃいましょうか。」
「エイタが今日は夜廻でいないけど、あとは全員居るな。」
よく見れば用意された食卓の中に1箇所だけランチョンマットだけの席がある。
「じゃあ、部屋番号順な。俺、201号室のラン。俺のティーはおしゃべり大好き余計なことまで喋りすぎて女神様に羽色を変えられた色変わりのカラスだ。羽の色を変えることで大きな声を出したり、逆に誰かにだけ声を聞かせたりできるぜ。」
髪の毛を短く刈り込みツンツンな髪型の少年がわれ先にと喋り出した。
そのテンション高さにティーのカラスも頭上をグルグルと回りながら鳴いている。
今の羽色は黒だ。
「次は俺。202号室のサクト。ティーはトカゲ。火を吹いたり派手なことはできないけど壁を登ったり、振動で何がどこにあるかとかがわかる。あと俺といる時にちょっとだけラッキーなことが起こったりする。」
タレ目でモソモソと話す。
話している間にも袖口や襟のあたりがモゾモゾと動いたりしているが、鼻先しか見せずなかなかティー全身を見れない。
「203号室のシン。俺のティーは弓。説明がちょっと難しいしここで見せるわけにもいかないから変な矢を撃つってだけ覚えてくれればいいよ。」
先ほど座る前に椅子の後ろ側に何かを置いていたのできっとそれがティーの弓なのだろう。
「俺イチト。204号室でティーはハサミ。約束事がいくつかあるけど、地面でも壁でもなんでも切れるハサミだよ。」
皮製の長細い三角形の袋を机の上に置く。
ハサミはハサミでも布を切るような大きさのハサミなのだろうことがわかる。
「205号室、ライト。名前は明るいんだけど、俺のティーはモグラで正直暗いところの方が落ち着く。」
だから月に何度かは灯りを蝋燭なんかの小さいものだけにしてみんなで過ごす日があると小声で姉さんが教えてくれた。
「最後は俺、スバル。部屋は206号室でティーは筆。俺のティーで描いた物を一定時間実体化できる。と言っても壁に穴開けたり何もないところにオブジェ作ったりとかが今のところ限界だけどな。」
実際に手のひらに収まるほどの大きさの筆で机の上から始まり空中に四角を描くと、緑色のプレートが出現し、筆を持っていない方の指で弾くと消えた。
「じゃあ、ミリア。自己紹介よろしく。」
姉さんに促される。
「ミリアです。私のティーは…。」
みんなの自己紹介を聞きながら自分の自己紹介はどうしようかと何度か考えた。なにせみんなと違ってこののティーには常に実態があるわけではないからだった。
(落ち着け、イメージ…。)
腕を少し上げて袖口から影を出す。
出てきた影はゆらゆらと小さく波打っていたが、やがて腕と手の形になり卓の上にあったまだ何も乗ってない食器をつかみ持ち上げる。
「影を思った形にして動かすことができます。私から延びる影が触れれば形やどんな物なのかもわかります。」
説明としては言葉だけよりも十分説得力のある説明になったはずだ。
そして今の状況は一言で言うなら静寂。
詳しく分析すれば、混乱と動揺と戸惑い。
色々なものが混ざり合った空気が流れている。
「これは・・・。」
「動物でも物でもなくて、でも人の扱える能力以上の力を持ってる…。」
「しかももうそれなりに理解して使いこなしてる…。」
「ちなみに今日あった実技試験はどうやって突破した?」
ラン、サクト、シンが順番に独り言のように呟いたあと、スバルが聞いてきた。
「迷路の中で宝探しだったので、迷路全体を影で包んで探し当てて集めました。」
「使い勝手がよくて、すでに応用できる程度に使いこなしてる…。」
「ってことはあるかもしれないぞ。」
共通認識として何か思い当たることがあるようだが、あいにくこちらには一切予備知識がない。
一体なんの話なのかはわからないが、一つわかることはこのティーが普通とは違うということだった。
「あるかどうかわからないところで辺に憶測を立てるのはやめましょ!」
重い空気を切り裂くように姉さんが声を張って言った。
「あんたたちのせいで私の可愛い妹分がビビりまくってるじゃないの!!」
姉さんのその言葉にハッとしたように顔を見合わせた。
「明日以降どうなろうと今は可愛い可愛い1人の新しい後輩なんだから、余計なことは言わずに食事にしましょう。」
姉さんの言葉を合図に厨房の中から小人たちが料理を運んできた。
大きめに切られた野菜がゴロゴロと浮かぶシチューに味付けされローストされた鶏肉。
脇にはサラダが添えられ、テーブルの中央には丸いパンが食欲をそそる匂いとともに温かさを運んできてくれる。
それから各々が今日の学校での出来事などを話ながら食事は進んでいく。
打ち解けながらもチラチラと時より向けられる視線は、大半は興味だが端々に疑問や恐怖が感じとれる。
それを遮るように姉さんが事細かに世話を焼いてくれる。
食事が終わると、大きなマグに入った湯気の上がるココアが配られた。




