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ブルーパピヨンが宙を舞っている。その姿に僕は思わずしばし見とれてしまう。本物のブルーパピヨンの輝きは、想像していた以上に見事だった。
双子のショーもすごくよかった。ただ物を浮かすだけと音尾からは聞いていたけど、客の一人に野球のグラブを渡して浮かせたボールでキャッチボールを始めたり、花の活けられた花瓶を客席のほうに飛ばして、そこから客の胸元に花を一輪ずつ挿していく演出など、一つひとつに工夫が凝らされていて見ていてとても楽しめた。
さて、だけどいつまでも感心してばかりではいられない。ブルーパピヨンが宙を舞った。ここからが勝負どころだ。
僕はいま、スーツを着てパーティー会場の数あるテーブル席のうちの一つに座っている。招待客になりすましているのだ。なりすましているといっても、特定の誰かのふりをしているというわけじゃない。音尾によると、このパーティーに参加するにはまず会場入り口前に設置された受付での署名と、事前に各招待客に送られている招待状の提示が必要になる。そしてその手続きを終えた客にはリボン(「胸章」というらしい)が手渡される。それを胸につけているのが招待客の証、というわけだ。
つまりそれをつけてさえいれば、招待客になりすますことができる。音尾はそのリボンを事前に一つ調達してきた。具体的な方法は聞いてない。彼の〝力〟を駆使したことは確かなんだろうけど。
そうして、泥棒としての罪をまた一つ重ねた音尾によってもたらされたこのリボンをつけることで、受付をスルーして入場することに成功した僕は真っ先にこのテーブル席に座った。招待客の数の多さゆえか、客ごとに座る席は指定されていない。立ち上がった隙に誰かに席を奪われてはまずいので、双子のショーが始まるまでここから一歩も動かずにその時を待った。
「おお」
「まあ、綺麗」
付近から声が上がる。宙を舞う宝石がこちらに近づいてきている。音尾から聞いていた通りだ。今回のショーの中で、双子が宝石を飛ばすルートはあらかじめ決まっている。アドリブで飛ばした結果どこかにぶつけてしまったりして、万が一宝石を傷つけてしまわないよう配慮してのことだろう。そして事前に「予告」された通り、宝石は僕の座るテーブル席へとやってきた。
「おっと」
「あらまあ」
双子によって操られた宝石は突然高度を落とし、僕が座る椅子の横を通りテーブルの下に潜り込む。これも演出の一つ。一度テーブルの下で動きを停止させた宝石を、反対側から急発進させることで客にちょっとした驚きを与える、という。宝石がテーブルの下に潜り込んだことに対する他の客の反応に合わせ、僕も「わあ」と適当に声を出す。そして周りの声に紛れるように、テーブルの下に向かって小声で命じる。
「いまだ、動け」
少しの間ののち、青い石はテーブルの反対側から勢いよく外に飛び出す。客たちの驚きと安堵の声、そして拍手の音。宙を舞う青い石に目をやり、僕も拍手をする。成功、だ。たぶん。すぐに席を離れてはもしかしたら怪しまれる。「ブルーパピヨン」が飛行を終え、ケースの中に収まるのを見届けてから、
ポケットに確かな重みを感じつつ、僕はそっと席を立った。




