ジュナ待望の惚れ薬! (6) 【ルラァ―は見た! タカハルのあごクイっ!】
「あ、ありがとうタカハルくん……」
「べつに。当然だろ」
転びそうになった未来可は、そっとタカハルから離れました。
珍しくうつむく顔には、照れの朱色。
サラサラと流れる黒髪を揺らしながら、未来可はタカハルにはにかみました。
(ひゃーーーーーーーーー! ギュってしてもらっちゃった!!!)
(こら未来可ーーーーーー!!!)
そんな未来可がちらと目を配ると、怒り心頭のジュナの頬。
金髪は揺らめき、どこか逆立っているようにさえ見えてしまいます。
(タカハルに近づくなんてぇ!!)
(ん? べつにタカハルくんは誰のものでもないし)
(んなろー! 未来可ぁー!)
「あうっ!?」
「どうした? ジュナ」
タカハルは、ジュナの声に振り返りました。
今までメラメラと炎を燃やしていたジュナは、ギュッと瞼をつぶっています。
「目にゴミが……」
「大丈夫か?」
「んん……」
右目に手を添えながら、ジュナがふるふると首を振ります。
「見せてみ」
「んうー」
「あっ。こらっ」
タカハルが覗き込もうとすると、ジュナは首を引き、顔を地面に向けてしまいました。
「ジッとしてろよ。見えないだろ」
「痛いもん。やだっ」
「おいおい」
まるで泣いているかのようにぐずるジュナを見て、タカハルはため息ひとつ。
「見せてみろって」
「あっ」
そんなジュナの様子に業を煮やしたのか、タカハルはジュナの小さな顎に指を添え、そっと持ち上げました。
(キュンっ……!)
(あーーーーーーーーーー!!!! ジュナちゃん!!!!!)
その様子は、世にいう『あごクイ』そのもの。
(や……。やったー! タカハルの『あごクイ』ゲットぉ!)
ジュナはタカハルの瞳に覗き込まれながら、胸をトキトキときめかせます。
(ずるーい! ずるいぞジュナちゃん!!)
(ズルくなーい! ふあ……。タカハルの顔ちかいっ……!)
(こらこらこらこらー! 離れなさーい!)
夕陽の公園が暮れなずむにつれ、少女たちの水面下バトルは激しくなるばかり。
「ふむ……。あれは何をしているんだ」
「タカハルという少年で、一喜一憂しているのですねぇ」
そんな様子を離れた場所から見つめる少年がひとり。
ルラァ―はタカハルと同じ学生服に包んだ身を木陰に寄せながら、アンブレラの言葉に疑問符を浮かべるのでした。
~『ジュナの愉快な次回予告!?』 ~
アンブレラ:「ところでルラァ―殿は、ここで何をしておられるのですか?」
ルラァー:「見ればわかるだろう。吸血鬼の従者」
アンブレラ:「まったくわからないのですが……。はっ!? もしやジュナ様を狙って!?」
ルラァ―:「違うな。違うぞ吸血鬼の従者。僕はそんなことを考えていない」
アンブレラ:「そうですか。ところで」
ルラァ―:「なんだ? 吸血鬼の従者」
アンブレラ:「毎回、私のことを『吸血鬼の従者』と呼ばれるおつもりですか?」
ルラァー:「……。面倒だな。確かに」




