ジュナがテレビを見ている一方…!
「むむむ……」
大きな窯の中を木の棒でかき混ぜながら、詩惟花は眉根を寄せました。
紫色の濁った液体が、なみなみと容器を満たしています。こぽこぽと小さく泡立つのは、真下に火を起こしているから。広い地下空間のなか、魔女修行に励む詩惟花は、汗をかきかき重い液体をかき混ぜていました。
「やっほー。シィ」
「お姉ちゃん」
「調子はどう? もう出来そう?」
詩惟花の後ろへ、片手を上げた未来可が近づいてきました。
「あとちょっと……。たぶん」
「ほほー。うわっ。すごい匂い」
レンガを積み上げた壁に囲まれた中央。窯へ近づいた未来可は、思わず鼻を覆いました。
「これはなかなか強烈だね……」
「もう一時間も嗅いでるんだよ。頭クラクラしてきちゃったよ……」
「ご愁傷様。シィ……」
魔女になるためには、魔法が使えるだけではまだまだ足りません。
動植物を媒体に、特別な効果を生み出す薬を作り出すことも魔女の仕事。
詩惟花はなんとか成功させようと、真っ黒な正装姿で頑張っていたのでした。
「で、どうしたのお姉ちゃん」
「そうそう。もう夕飯だって。呼んできてってお母さんが」
「うぅ。ちょっと待ってよぉ。あと少しで出来るはずだから……」
もう出来上がってもいい時間でしたが、液体はなかなか変化を見せません。
詩惟花はかき混ぜる腕を止めないまま、こっそりため息をつきました。
「おかしいなぁ。本に書いてあった通りにやったのに」
「どっか、間違ったんじゃないの?」
「そんなことないもん。絶対教科書通りだよ。一昨日一回、昨日もう一回。さっきだって取りかかる前に二回は説明を読んだんだよ?」
「読むね~。さすが真面目っ子」
未来可がおどけて返しますが、疲れてきた詩惟花はノってこない様子。
「一回始めると止められないのが欠点だよね」
「うん……。あっ。ちょっと鼻が……」
「えっ? えっ? シィ、それはヤバい――」
「は……は……。はっくしょーん!」
「あっ」
「あっ」
かき混ぜは、一定が基本。
正しい速度、正しい周回。動き一つとっても、それは無言の魔法文なのです。
それを乱すとどうなるか。
いうまでもなく顔を見合わせた紆異智姉妹は、
「ちょっとぉぉぉ! シィったらぁ!!
「ごめーん! お姉ちゃーん!」
ぼむっ!
秘術失敗を怒るように、発光したのち爆ぜるように発生した煙幕の中へ、仲良く溶け込んでしまいました。
~『ジュナの愉快な次回予告!?』 ~
ジュナ:「あれ? 地震?」
アンブレラ:「震度1。当たりましたね、ジュナ様」
ジュナ:「ふっふっふ。これも吸血鬼のなせる業なのだよ。アンブレラくん」
アンブレラ:「ははー。ジュナ様ー」
ジュナ:「次回、吸血鬼は小学生! タイトルは何かね? アンサー! アンブレラくん」
アンブレラ:「『ジュナ待望の惚れ薬!』でございます。ジュナ様」
ジュナ:「ほ、惚れ薬~!? ドキドキっ!」




