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吸血鬼は小学生!  作者: zig
第四章 消えたあの子を取り戻せ!
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未来可、おかえりなさい!

 アンブレラが、再びマントへと姿を変えました。

 空間を駆け抜けた衣桜のおかげで、再びジュナはアンブレラのマントをまとうことができました。変身は解いており、既に未来可の姿ではありません。イタクが憑依し、紫色の虹彩を対の瞳に宿らせるジュナは、V-ライガーの座席に座り、衣桜の後ろについたところでした。

 (ジュナ様。準備はいかがですか?)

 (うん。もう大丈夫)

 空間へ浮かび続ける肉体を正面に見やりながら、ジュナがアンブレラの声に応えました。

 衣桜はスロットルを絞り、V-ライガーは今にも走りだせる程の力を蓄えながら静止し続けます。未だ白く染まったままの空間は、まったく変わる様子がありません。

 (衣桜。OKだよ)

 ぽんぽんと、ジュナが衣桜の背に合図を送りました。

 触れられた衣桜は、返事をする代わりにガォンとバイクを咆哮させました。

 (では、いきましょう。ジュナ。これが最後の仕上げです)

 (うん! イタクさん!)

 イタクの声に頷いたジュナは、フィリカから受け取ったブレスレットをはめている腕を、そっと伸ばしました。

 腕の向こうには、鏡から出た肉体。

 (ブレスレット! 行って!)

 ジュナが強く念じると、ブレスレットはパッと光り輝きました。

 そして、一瞬の閃光。走り抜けた先には、力のない右手首。ブレスレットは無事に移りました。

 (ジュナ。最後です。未来可のことを想いながら、唱えてください)

 (うん)

 ジュナは瞳をつぶり、胸の前で両手を合わせ、祈るように精神を集中させます。

 (未来可。ミラカ。みらか――――)

 セーラー服に身を包んだ少女。詩惟花と似た、どこか掴めない少女の姿。

 確かに触れ合った時間を呼び起こしながら、ジュナは願いを込めます。

 (会いたい。未来可。もう一度、お話がしたいの)

 得体の知れない、コートに身を包んだ変身後の未来可。

 詩惟花のことを一番に考える、姉としての未来可。

 魔女としての未来可。

 ひとりの存在としての、未来可。

 (いないままなんて、いやだよ。だから、お願い)

 たとえ、本来存在しないのだとしても。

 いない今の方が、正しいのだとしても。

 (声を。視線を。足音を――――)

 ジュナの祈りに合わせて、ブレスレットが輝きを増します。

 それは、衣桜に直視を許さないほど強くなりました。

 輝きは星のように、白く、優しく、そして次第に大きくなり――――。

 (集え。未来の可能性――――!)

 衣桜が、ジュナさえも包み込むほどに。

 生まれいずる時は、今。

 (ハッピーバースデイ! 未来可!)

 

 「――――ぅん?」

 心音に呼応するよう身体を震わせた後、未来可はそっと、瞼を広げました。

 気がついた彼女は、黒髪を揺らしながら、眠たげに瞳を瞬かせます。

 「あ、起きた? 未来可」

 「……。ジュ、ナ?」

 「うん。そうだよ! わかる? わたしのこと」

 泣きそうになりながら、それでも我慢して笑顔を見せるジュナを、未来可は不思議そうに見つめます。

 「わかる、よ。とうぜん、とうぜん。だってわたし、ずっと、そばで見てたから……」

 風が吹き抜けました。草木を揺らし、大樹の傍らを通り抜けて、地平線へと走っていきます。

 未来可を覗き込むように見つめるジュナの向こう側には、明るい月がほんのりと笑っていました。夜空には星がいくつも散らばり、小さな雲に隠れながらもキラキラと明かりを灯しています。

 「そうかぁ。わたしは、また、話せるんだぁ……」

 「そう。そうだよ。ごめんね。未来可。今まで、忘れちゃってて、ごめんね……」

 「ばかだなぁ。ジュナが泣くこと、ないじゃんね……」

 髪を項垂らせながら呟くジュナの頬を、未来可は持ち上げた指でそっと拭いました。

 涙は、ジュナの頬から未来可の指に移り、そして風によって運ばれていきます。

 「もともといない存在なんだって。可能性が象っただけなんだって」

 「それでも、未来可は未来可だもん」

 涙を拭ってくれた手を、ジュナはそっと両手で、しかし力強く抱き締めました。

 温かさが、ありました。確かに血の通う、そこに存在していることの、なによりの証明。

 「おかえり。未来可ぁ……」

 「ただいま。ジュナ」

 未来可はそう言って、ふと瞼を閉じ、幸せそうに微笑みました。

 そんな様子を、周囲に立つ各々は、静かに、静かに、優しく、見守り続けていました。

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