ジュナを見つめる二人の影
「ぶは……っ」
「た、タカハルっ!」
男が消え、街灯だけがポツポツと落ちる夜道。
脅威が去った事実にようやく身体の緊張が解けた隆晴は、盛大に息を吐くとその場にドンと座り込みました。
「タカハルっ! 大丈夫タカハルっ!?」
「だ、だいじょうぶ……。う゛あ゛ぁ~! なんだったんだアイツ!」
学生服に包んだ両腕を広げ、守ってくれた隆晴の元へ駆け寄るジュナは、手をついて息を整える彼の顔を覗き込み、そして安堵しました。
「タカハルぅ~! 怖かったよぉ~!」
「ば、ばぁか。いつも怖がらせる側だろお前。なに泣いてんだヨ」
「だ、だってぇ~~!」
異能の力があるとはいえ、ジュナだってまだまだな女の子。
目尻に涙を溜めてしまうのも、無理はありません。
「ジュナ様!」
「ジュナちゃん!」
「あ、アンブレラ。紆異智さん……」
「ジュナちゃん、大丈夫?」
「わ、わたしは全然……」
「ん? いま、男の声がしなかったか?」
「え。え~? なんのことかなぁアハハ! そ、そんな声したっけ~?」
気絶から立ち直った紆異智さんも、忙しなく飛び回るアンブレラも、隆晴とジュナの元へ近づきました。
脅威が去ったいつもの路地には、凪いでいた風がざぁっと吹き抜けます。
だんまりを決めていた草木たちも、どこかから聞こえてくる鳥の歌声も、ジュナ達にはしばらくぶりの心地よい声に聞こえました。
「……終わったみたいね」
そんな路地裏を、ひとりの女性が遥か上空から見下ろしていました。
雲が流れる空。綿菓子のようなちぎれ雲が過ぎてしまえば、眼下に広がるのは灯りの煌めく家の数々。
屋根がひしめき、所々に木々が生え、幾筋もある通りの中の一つに目を凝らしていたジュリアは、月夜に燦々と輝くウェーブ状の金髪を風に流しながら、ようやくポツリとひとこと落としました。
「ご、ごめんねジュリア~」
豪奢な黒いワンピースに、肩へ羽織った赤いジャケット。
その裾がたなびく傍で、箒に乗った女性が申し訳なさそうに声をかけました。
「まさか吸血鬼に喧嘩を売るなんて思わなくて……! あの娘にはよ~~~~く言っておくから!」
「ほんとよ。異種族間での争いはご法度。戦争になっても仕方ないのよ? 相手が私の娘だったからよかったものの」
ジュリアは言いながら、しかしどこか気心知れている様子。
月夜の空は、いつもより風が優しく吹いていました。
~『ジュナの愉快な次回予告!?』 ~
ジュナ:「おわ……おわおわおわ……」
タカハル:「なーんか妖しいんだよなぁ……」
ジュナ:「えっ!? なにがっ!? まだ声のこと気にしてんの!? あはは~タカハルはビビりなんだからまったくもぉ~」
タカハル「いや、そうじゃなくて……。なんであのコウモリ、ずっと近くを飛んでんのかなぁ……」
ジュナ:「じ、次回! 吸血鬼は小学生! ジュナは知らない月夜のお話! えっ? わたし知らないのぉ~!?」
紆異智:「次回も、お楽しみに!」




