ジュナ、隆晴と夜間飛行…!
「ん……」
ゆるやかな風を受けて、前髪が流れる感覚に隆晴は意識を取り戻しました。
「あ、起きた?」
「……ジュナ?」
そろそろと瞼を開けた隆晴が目にしたのは、嬉しそうな表情をしてこちらを覗き込むジュナの顔。
「……どうして、こんなことになってるんだ」
「え~? 夢だからじゃない?」
呟く隆晴に、ジュナはなんということもなさそうに返事をして、前を向きました。
ジュナの後ろには、星々の光る夜空が広がっています。
時折翼の羽ばたく音を響かせて――――。ジュナは隆晴を抱えたまま、空を飛んでいるのでした。
「考えてみてよ。空を飛ぶなんて夢の中でしかありえないし、中学生の隆晴をわたしが運べるわけないじゃん?」
「まぁ、それはそうだけど……」
しぶしぶといった感じではありますが、ジュナの言うことに正しさを感じた隆晴は、気怠そうに瞳を閉ざしました。
「眠かったら、寝てていいよ?」
「うん……」
ジュナの声に、いつもより幼げな返事が返ってきます。
しかしうつらうつらとしながらも、隆晴は眠るまいと頑張っている様子でした。
薄く閉じた目をぱちぱちと瞬きながら、どこまでも広がる水平線の向こうを眺めます。
空高く、雲にも手が届きそうなほどの高度を飛んでいるジュナ達には、常日頃の日常では決して見れない、遥か、遥か遠くまで見ることができました。
「……きれいだ」
「そうだね」
星々のようにきらめきが広がる、地上の世界。
遮るもののない水平線は左右へ際限なく広がっていて、曖昧な境界線を境に、海のように広大な空が穏やかに包み込んでいます。
「ジュナ」
「なーに?」
「ちょっと……。眠るから……。悪いけど……」
「うん。しっかり家まで送り届けてあげる。心配しないで」
ジュナの暖かい言葉に安心したのか、隆晴はこくりと頷くと、もう瞼を上げることはありませんでした。
遮るもののない夜空を、すぅ、と流れるよう、一直線に横切っていきます。
満月は穏やかでした。
夜風も緩やかで、すぐにふたりの傍をやさしく通り過ぎていきます。
世界は今だけ、隆晴とジュナのふたりだけのものでした。




